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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
01



「しほうろっぽうはっぽーう、しゅーりけん!」
「しほうろっぽうはっぽーう、しゅーりけん!」
「それにしても楽しみだねー」
「うん!僕この為におなか空かせてきたんだぁー」
「いつも空いてるだろー」
「あはは、いえてるー」
「ひ、ひどいよー」
「それにしてもお団子かぁー」
「どんなお団子があるんだろうねぇ」
「なぁなぁ、先輩達の分も買おうよ!」
「そうだね!」
「うんっ。ね、庄ちゃ…、って…アレ?」
「?、どうかしたの?」
「…ねぇ、」
「んー?」
「庄ちゃん、何処に行ったの?」
「え…?」
「……庄ちゃん?」


振り返るとそこには、いつも自分達をまとめる存在である少年の姿は無かった。


***


「……」

忍術学園の裏にある山――裏山の中腹地点で、彼は昼寝をしていた。
風に揺られて木々がざわめく。
先ほどまで静かだったはずの空間が、急に慌ただしくなって行く。

「…騒々しいな」

これじゃ昼寝も出来やしない。
彼はゆっくりと身体を起こして、軽く伸びをする。と、反射で欠伸をしてしまう。まだ寝たりないというのに、どうしてこうも落ち着きがないのだろうか。
すると、頭上にうすらと何かが通る。反応した彼は特に表情を変えず、上に手を伸ばす。その手に惹かれるようにして飛び下りてきたのは黄色い小鳥。

「ミードリタナービク ナーミーモーリーノ」
「ヒバード」

黄色い小鳥――ヒバードは不思議な歌を口ずさみながら、彼の手にとどまった。

「ヒバリ、ヒバリ」
「何やら騒々しいけど、どうかしたのかい?」

ヒバードに名を呼ばれた彼――≪学園一最強の男≫として畏れられている雲雀恭弥は尋ねる。ヒバードは恭弥の指を甘噛みしつつ答えた。

「イチネンハグミ、カエッテキタ、カエッテキタ」
「草食動物たちが…?」

ヒバードの言葉に嘘は無いという確信を持っている恭弥は驚きと疑問を抱く。彼らは今日は、町はずれに出来た団子屋に行く予定だったはず。出たのはちょうど昼前。今は昼を少し経ったくらい。帰って来るには些か早い。
また何かに巻き込まれたのだろう。

「やれやれ、面倒だね」

直感が何かを伝えているのだろうか、分からないが少しだけ嫌な予感が恭弥の脳内によぎった。

「…嫌な事態にならないといいけど」

そう呟いて、恭弥は木から飛び降りる。
ゆっくりと学園へと足を進める。
間もなくして、恭弥の勘が的中していたとは思っても居なかった。


***


「今すぐ先生方は緊急職員会議を開く!全職員、学園長の庵に集合だ!」
「くノ一の山本シナ先生もお願いします!」

先生方が慌ただしい。
そう気付くのに時間は掛からなかった。傍にいた雷蔵や八左ヱ門、兵助や勘右衛門も何事かと外に顔を覗かせる。先生方は急いで学園長の元へ行き、微かではあるが誰かが泣いている声も聞こえる。
一人じゃなくて複数。
何か関係しているのではないかと思い、三郎をはじめ雷蔵たちも泣いている気配の方へ駆けて行った。

「何かあったのかな」
「先生達の様子からしてまぁ間違いないだろうな」
「ということは別の?」
「襲撃でもあったのか?」
「いや、それはないだろ。それよりも、もっと酷いような…、」

そう言っている間に三郎たちは泣いている気配に着く。そこは正門で、一年は組の良い子たちが泣いていた。その周りには六年生の姿が。

「どうかしたのか!?」

自分達の可愛い後輩達が泣いているのに驚き、八左衛門は声を上げた。八左ヱ門の声にこっちを向いたは組と六年生たち。しかし向いている方は何故か、三郎と勘右衛門。

「何かあったのですか?」
「久々知…」

一番近くにいた六年の留三郎に尋ねた兵助。留三郎は未だに泣きじゃくる自分の後輩の頭を撫でながら、言いにくそうに口を真一文字にした。

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