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04



ピタリ、と恭弥の身体が止まる。その手に持っていたトンファーはギリギリ八左ヱ門の目の前で止まった。恭弥はゆっくりと八左ヱ門から離れて、自分の名前を呼んだ者の方へ顔を向ける。
そこに立っていたのは…

「やぁ、元気だったかい四郎兵衛」

二年は組の時友四郎兵衛。
彼は恭弥の唯一のお気に入り小動物である。
四郎兵衛が忍術学園に入学し間もない頃、小平太が彼を担いで嬉しそうに委員会の後輩が増えたことを六年生に報告した事がきっかけで、それ以来恭弥は四郎兵衛は将来化けると思い、可愛がっているのだった。
恭弥はトンファーを一瞬で収め、こちらへ来た四郎兵衛の頭を撫でる。四郎兵衛は撫でられ心地よいのか、へらりと笑い答えた。

「はい。夏休みは色んな事しましたよ」
「そう。夏課題もちゃんと提出していたし、君は偉いね」
「えへへ、恭弥先輩に褒めて貰って僕嬉しいです」

照れ隠すように頭を掻く四郎兵衛に、恭弥は小さく笑う。
そんな仄仄とした二人の様子に…

『(神だ…!!救いの神が此処に居た…!!)』

と、八左ヱ門以下忍たま達が思っていて、それ以来四郎兵衛を大切にしようと思い始めたのだった。
少し話しをして癒しを貰った恭弥は、くるり、と四郎兵衛に背を向けて歩き始めた。が、再び足を止めて今度は自分と四郎兵衛を見ていた八左ヱ門達を見る。

「ねぇ、君達。何ジロジロ見てるんだい」
『ッ!?』
「群れているなら、」

ジャキ、とトンファーを出し言った。

「咬み殺すよ」


***


「お、恭弥!」
「?」

逆茂木を設置している付近へ向かおうとした恭弥に呼び掛けた者が。気配に気付き、恭弥は小さく笑う。

「ワォ、留三郎じゃないか」
「おい、その驚きはどういう意味だ」

恭弥に歩み寄ったのは同級生の六年は組の食満留三郎だった。
留三郎とは夏休み明け以来、地味に会っていなかったため、今日久しぶりに顔を見たようなものだった。留三郎含め、用具委員会が遅れているということは三郎から報告があり知っていたが、まさか遅れている理由に恭弥は驚いていたのだった。
恭弥は留三郎から見えないように小さく笑って言った。

「君、アレを運んだんだってね」
「まぁな。二度と運びたくないけどな」
「…学園に戻る時も君が運ぶのに面白い事を言うね」
「………」

何も言え無かった留三郎。恭弥は彼に小さく笑い、また歩き始める。留三郎も逆茂木の方へ行こうとしていたらしく一緒に向かった。
逆茂木では一年は組と小平太の姿があった。

「お、逆茂木は順調のようだな」
「遅いぞ留三郎、あんな荷車一台!!」
「何積んでると思ってんだ!!二度とやんねーからな!!!」
「だからまた運ぶって言ってるじゃないか」

逆茂木を運ぶ小平太に怒鳴る留三郎に恭弥は静かに突っ込んだ。小平太は怒鳴られた筈なのに何処吹く風。無視して「どんどーん」と言いながら逆茂木の大木を軽々と持って斜面を降りて行った。
一方、一年は組達は何やら逆茂木に仕掛けを作るようなのか話をしていた。一足先に下に降りた虎若はその様子を眺めていたが、ふと何かが焼ける匂いがした。
それに気付いたのはもちろん恭弥達もだった。

「この匂い…」
「!虎わ、」

留三郎が虎若に声を掛けようとしたと同時に鳴ったのは銃声。
しかし、その銃声は虎若に向けた放たれたものではなかった。別の方向から聞こえた、恭弥達はそちらへ顔を向けた。銃弾が放った方向には銃を扱う有名な部隊、佐武衆と狙撃手の照星がいた。

「タソガレドキの先方隊が功を焦ったようです」
「心配をかけさせおって」
「間に合って良かった」

照星が助けたようで、虎若は無事だった。それに安心する虎若の父と照星。登場がてら活躍を見せた佐武衆を感激し、お迎えをする忍たま達。留三郎たちも喜びたかった。
しかし、狙ったのは自分達の可愛い後輩。

「恭弥」
「言われなくても」

忍の顔になった留三郎に名を呼ばれ、恭弥は言うまでもなくトンファーを出してその場を駆け出した。
一陣の風が吹き、恭弥の標的は虎若を狙ったタソガレドキ軍兵士。

「一人で此処に来たのは褒めてあげるよ。けど、」
「ヒッ?!」
「殺る相手を間違えたね」

人知れぬ場所で、血飛沫が舞った。

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