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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -
03



恭弥が屋敷を後にして、勘右衛門たちが任務に出た後、屋敷の中で事の様子を見ていた教師陣や三郎、彦四郎はため息をこぼした。

「いやはや、恭弥の言動は冷や冷やさせる事が多すぎる…」
「本当に勘右衛門に当てようとしたかと思いました…」
「恭弥先輩らしいと言えばらしいですが…」

三郎はうちわの代わりに手で扇ぎ、体の熱を冷ます。三郎の様子に山田先生は笑い、「まぁ、恭弥らしい激励ではあったがな」と言った。
その言葉に彦四郎は不思議に思ったのか、三郎に尋ねた。

「…恭弥先輩のあれは、激励だったのですか?」
「あー…客観的に見ればそう捉える事は出来ないけど、あれは恭弥先輩なりの激励というか、なんというか…」
「いつもしていましたっけ…?」
「いや、今回だけかな」
「…今回だけ?」

三郎の言葉に意味が分からなくなりまた尋ねる彦四郎。その問いに答えたのは三郎ではなく、土井先生。

「庄左ヱ門と伊助が少し緊張していたのが分かっただろう?」
「え、あ、はい…」
「言い方が悪いかもしれないが、勘右衛門を通して二人の緊張をほぐしたのだろうな」

小さな村が一城と戦うという事もあり、庄左エ門と伊助は緊張していたのは恭弥や三郎、教師陣からは目に見えて分かった。重要任務を任されるということは、失敗すれば大きな損害が自分達に被るため、庄左エ門と伊助もそれを幼いながらも気付いていた。
その緊張を和らげるため、そして二人が失敗しても木下先生と勘右衛門がいる事を教えるために、恭弥は今までしたことのない行為をしたのだった。
普段の恭弥なら絶対にしない事だが、まだ忍たまで、特に野外任務をしたことのない庄左エ門と伊助だからこそ、したことなのだ。

「なるほど…」

土井先生の言葉に納得した彦四郎。そのまま山田先生が続けた。

「恭弥はああではあるが、忍術学園の事を誰よりも大事にしているからな」

学園長が治める学園ではあるものの、恭弥はまるで自分のものだというように、「僕の箱庭」というのだ。恭弥にとって、並盛中学校と同じくらい忍術学園を愛しているようで、それは生徒も含まれているということ。
まあ、群れていたら噛み殺されてしまう事は別であるけれども。

「忍術学園を敵に回すと言うことは、≪学園一強い男≫を敵に回すという事だからな」


***


屋敷を後にした恭弥は園田村の中心付近を歩いていた。

「……」

眉間に皺をかなり寄せて。
周りには大勢で群れを成すの草食動物たち。

「…あれ?雲雀先輩。どうかしましたか?」

恭弥の近くで作業をしていたからか、気になって声をかけたのは五年ろ組の竹谷八左ヱ門。八左ヱ門に声をかけられたからか、ピタリ、と恭弥は足を止めた。
八左ヱ門は気前の良い笑顔を浮かべて恭弥に近寄った。

「何かあったんですか?」
「……すぎ」
「…へ?」

ぼそり、と小さく言っているが八左ヱ門には聞こえず、聞き返した。しかし、ふと恭弥の様子が可笑しい事に気付き固まった。
恭弥の瞳に殺意がこもっていたから。

「ひ、雲雀先輩…?」
「…群れすぎ」
「…ッ!?」
「咬み殺されたいの?」

そして気付いた。
恭弥の両手に持っているのは彼の得意武器の仕込みトンファー。
見た瞬間、八左ヱ門は自分の危機を察した。

「いや、ちょ…ひ、雲雀先輩…?」
「君が話しかけてきたんだ。まずは君から咬み殺してあげるよ」

ユラリ、と八左ヱ門に近付いて来た恭弥。八左ヱ門は冷や汗をどっと掻いて思わず周りを見て助けを求める。
しかし、誰も八左ヱ門を助ける者は居なかった。
恭弥のトンファーの餌食になりたくなかったからだ。

「さぁ、覚悟はいいかい?竹谷八左ヱ門」
「いや、何の覚悟でしょうか…?死ぬ覚悟…ですか?それなら俺まだ死ねないんですけどー…」
「何言ってるんだい?」

恭弥は瞳孔が開いた目で八左ヱ門に笑みを向け、トンファーを上げていつでも振り下ろす準備は出来ていた。

「覚悟っていうのはね…、咬み殺される覚悟だよ」
「(それってつまりは死ねって言ってるじゃねぇかー!!)」
「それじゃあ、まずは一人め、」
「ちょ、ま―――」


「あ、恭弥先輩なんだなぁ」

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