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02



文次郎の言葉に教師陣はようやく来たな、等と口にした。その中で、山田先生は文次郎に一年は組の子達を起こしに行ってくれと頼んでいた。文次郎は素直に従い、そして教師陣もそれぞれ行動を始めた。
そんな中、恭弥は三郎を呼んだ。

「三郎」
「何でしょうか」
「僕は行かないから」
「……はい」

何の事かは察したのだろう三郎は、肩を落として立ち上がる。同情はしない恭弥の視界に土井先生が入った。外へ出て行った土井先生は、おそらく、文次郎に起こされた庄左ヱ門と伊助を呼びに行くのだろう。
ふと恭弥は咄嗟に考えたのか、三郎を呼び止める。

「三郎」
「今度は何ですか…」
「勘右衛門を呼んで来なよ」
「!…分かりました」

恭弥の言いたい事が分かり、三郎は何も聞かず屋敷を後にした。瞬時に理解してくれる三郎に、恭弥は自分に呆れた声で返事をした事を無かったことにしたのだった。
暫くして、庄左ヱ門と伊助、一年い組の今福彦四郎、そして勘右衛門がやってきた。

「恭弥先輩、お久しぶりです!」
「やぁ、勘右衛門。甘味処巡りは楽しかったかい?」
「いやぁ、それがもう美味しいものばかりで…。この夏休み、思い切って九州まで行ってきちゃいました」
「…ほどほどにしなよ」

至極満悦な笑みを浮かべて、幸せな空気を漂わせる勘右衛門に恭弥は呆れたようにため息を零した。だいたいのメンバーが揃い、勘右衛門を中に入れさせる。
もちろん、恭弥は群れたくないので入口付近に立って様子を見ていた。

「庄左ヱ門、伊助。お前達にしてもらいたい任務がある」
「はい」
「何でしょうか」

真剣な表情の二人に、教師陣も真剣になり任務の内容を話した。彼らの中央には地図があり、所々に朱色か墨で塗られたり線を引かれている部分があった。
山田先生は二人と勘右衛門に蛍火の術の内容を教えた。

「ドクタケ忍者隊首領の稗田八方斎に術を仕掛けてくれ。補佐に五年い組の尾浜勘右衛門と木下鉄丸先生がついている」
「は、はい!」
「分かりました!!」

少しだけ緊張している庄左ヱ門と伊助。
無理もない、といえばそうなるだろう。たとえあの馬鹿で阿呆なドクタケ忍者隊であったとしても、プロに部類するはず。
緊張するのは仕方がない。
その感情が読み取れたのか、山田先生達は緊張を和らげようと優しく話しかける。

「そう緊張するな、二人共」
「勘右衛門がいるし、先生もついている」
「そ、そうですね…」

しかし、まだ緊張しているのかまだ緊張がほぐれていない二人。そんな二人に、恭弥は言った。

「そう緊張するだけ無駄だよ。相手は君たちよりも馬鹿なんだから」
「いや、先輩。それはそれで失礼ですよ…」
「事実を言っただけ。…否定は出来ないでしょ」

そう言えば何も言えなかった皆だった。山田先生は咳払いをして二人を見る。

「では、頼んだぞ」
『はい!』
「よし、行くぞ」

木下先生に言われ二人を立つ。後ろで三郎と彦四郎と一緒に座っていた勘右衛門も立ち、三郎に「じゃ」と言って出て行く。

「それでは恭弥先輩、行ってきます!」
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」

一年生二人に小さく笑い言い、その後続いてきた五年生が来たら目を閉じた。

「それでは、恭弥先輩。行ってきま、」

ヒュンッ

「ッ!?」

勘右衛門の喉元に当てられるソレ。
様子を見ていた三郎たちはただ目を丸くして見ていた。当の本人である恭弥はすました表情で勘右衛門の喉元にトンファーを当てていた。

「せ、せんぱ…?」
「尾浜勘右衛門」
「は、はい」

恭弥は真っ直ぐな瞳で勘右衛門を見る。突然の出来事で冷や汗を掻いている勘右衛門は何を言われるのか、されるのか、次に来る言動を待ち構えた。

「学級委員長委員会の名に泥を塗ったら…咬み殺すから」
「…、き、肝に銘じます…」

殺気と共に告げた恭弥。勘右衛門はあまり見ない彼の様子にびっくりしつつも答えた。勘右衛門の返答に納得したのか、恭弥はトンファーを下ろして「行きなよ」と言い、勘右衛門たちは屋敷をあとにした。
そして恭弥ももう滞在する理由が無くなった為かその場を去って行った。

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