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01



「あ、やっと見つけましたよ恭弥先輩」

伊作と話した後、恭弥は園田村の裏山ではない別の山の木で仮眠をとっていると誰かに呼ばれた。恭弥はすでに気配で感づいていたようで、自分を呼んだ相手を見ずに言った。

「何か用かい、三郎」
「そろそろ忍たま達が園田村に来ます。ご指示をお願いします」

三郎の言葉に恭弥は眉を寄せた。

「……わざわざ群れて居る処に行けって君は言うのかい?」
「いや、確かにそうなりますが…。学級委員長委員会委員長として来て下さいよ」
「…山田伝蔵達は」
「先生方なら手潟さんの屋敷で今後の戦力及び対抗策を立てていましたが…」

その言葉を聞いた途端、恭弥は木から飛び降りて三郎に言った。

「僕は山田伝蔵達の元へ行く。君も着いてきなよ」
「ぇ、あ、はい。…って、現場の指揮はどうするんですか?!」
「群れたくないから君に任せるよ」

そう言って恭弥はスタスタと園田村へ歩く。呆然としていた三郎だが、ハッと我に返って「待って下さいよ先輩!!」と慌てて駆け出した。


***


「やぁ、邪魔するよ」

堂々と手潟の屋敷に入って来た恭弥。今後の対タソガレドキ軍の戦略や策を立てていた教師陣は目を丸くする。

「恭弥?!どうして此処に、」
「君達が面白そうな事をしてるって聞いたからね。僕も参加しようかと思って」

教師陣の近くには寄らず、離れた場所に佇み答えた。彼の回答に教師陣は呆れるが、彼らしいとも思い、そして心強いとも思い居ることを許可した。
恭弥は自分を厄介者に扱わなかった教師陣の様子から見て、作戦に参加してもいいと判断した。一方、少し遅れて三郎も姿勢を正して教師陣の傍で話を聞く事に。

「それで?今は何を考えているんだい?」
「今は蛍火の術をドクタケ城に仕向こうかと思ってな」

【蛍火の術】
偽の密書を携えた忍を敵陣に侵入させ、その忍はわざと捕らえられるように動く。そしてその密書には敵の主要人物に「内部情報提供の礼」などをしたためておく。むろん武将は敵に情報を流した覚えなど無いが、敵の忍者が命がけで運んできた「偽の密書」という物証がある以上、他の味方全員から疑われ、そして他の者も(武将以外にも裏切り者がいるかもしれない)と疑心暗鬼に陥っていく、という術。
教師陣はそれをドクタケ城相手に仕向けるつもりのようで、恭弥は少し考えた。作戦としては無難だろう。しかし、今は一刻を争うもの。ならば、ドクタケ城と関わりのある忍たまを仕向けるのが妥当だろう。

「それ、誰が行かせるつもり?」
「今の所はまだ決めてないです…。一年生にはまだ危ないかと…」

斜堂先生が答えて再び教師陣は話し始めた中、恭弥は小さく笑い土井先生を見た。

「土井半助」
「先生をつけなさいよ、本当…」
「黒木庄左ヱ門と二郭伊助を此処に呼んで来なよ」
「…え?」

恭弥の言葉に教師陣と三郎は皆揃って首を傾げた。

「な、何で庄左ヱ門と伊助を…?」
「その子達以外に的確な人材派遣は居ないでしょ」

庄左ヱ門は一年は組の学級委員長で、伊助は庄左ヱ門の補佐的存在。二人ならドクタケとも認識があり、油断されやすく、失敗をする確率も低いだろう。
渋る様子の教師陣に恭弥は言った。

「それとも、あの三人組に任せる?」

そう言えば教師陣は「それは駄目だ」と即否定した。すぐに否定される乱太郎、きり丸、しんべヱに、三郎は心の中で同情したのだった。

「まぁ、例えドジなドクタケだけど、油断ならないから木下鉄丸と誰か上級生を連れていけばいいよ」

木下鉄丸なら非常時冷静さを失わずに判断を下せるだろう。しかし、一人だけでは相手をするのは大変だろうから、上級生を一人同行させるのが無難かもしれない。
恭弥の言葉に納得し、賛成した教師陣。こうしてドクタケ城派遣隊は決まった。
その後、園田村の地形を利用しての防衛や攻撃体制、警備や特攻隊などの話をした。

「敵の数によって作戦を変更せねばなりませんが、逆茂木はするべきでしょう」
「そうだな。それと、裏山から攻められる危険性もある。数名配置するべきだな」
「タソガレドキ軍がどのような編成を組んでくるか分からないが、もしもの場合を考えて橋を破壊しておこう」
「それと、正面の田畑を泥状態にすべきかと。万が一、砲撃隊を連れてきたとしたならば…」

用意する計画を一つだけではなく、もしもの場合を考え予備の計画を多く立てる教師陣。相手の出方を考え、こちらの状態を考えて策を練る彼らに、恭弥も時折参加した。

「だったら、其処の水をさ…──」
「あぁ、なるほどな」
「失礼します!」

慌てた様子で会議中に屋敷へ入って来たのは…、

「…ワォ、もう来たんだね」
「六年い組潮江文次郎、以下忍術学園生徒及び教師、只今園田村へ到着しました!」

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