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「#幼馴染」のBL小説を読む
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01



「…へぇ」

朝方。
雑渡昆奈門と別れた恭弥は、タソガレドキ忍者以外にも山をアジトとしていた山賊を軽く咬み殺した後に、園田村へと向かった。
日がすでに出ていて、せいぜい卯の刻くらいだろう。のんびり歩きながら村に踏み入れた恭弥は村の様子が違う事に気付いて、小さく感嘆の声を上げて笑った。

「…この村、並盛村って命名したいね」

どうやら恭弥が満足するほど良い土地だったようで、恭弥は辺りを見渡す。
視界に入る光景に、恭弥は忍の目で見た。

「ふーん、……準備はまずまずだね」

村の囲いや家の前にあるそれらに、恭弥は笑い、忍たま達の気配がある奥の屋敷へ向かった。


***


『えぇッ!?』
「?」

乱太郎の怪我を治療していた伊作は、居間から聞こえた忍たま達の驚愕した声に首を傾げた。
居間では園田村の乙名を務める手潟さんと、タソガレドキ軍とオーマガトキ軍の真相を伝え、今後のことについて話し合っているはずだ。それなのに、驚愕の声が上がるということは、何かったのだろう。
気になり、頭だけこっそり覗くと、

「戦うって…タソガレドキ軍とですか!?」

土井先生が手潟さんに聞き返したところだった。

「はい。惣の意気地を、見せてやるのです」
「そう言われましても…」

にっこり笑う手潟さんに土井先生が困惑した声を出すと、庄左エ門が挙手をした。

「あの!戦うって言っても村人の皆さんは…?」
「一人もいない……」
「みんな避難させました」

団蔵が辺りを見渡して呟くように言えば、あっさり答えた手潟さん。その様子から何やら重大なのか、伊作は居間へ座る。

「じゃあ、誰が戦うの?」

きり丸の質問に山田先生は何かに気付いて顔をしかめる。反対に手潟さんはにっこり笑い、

「と言うわけで、忍たまの皆さん、よろしくねー!」
『ええぇぇえっ?!』

思った通りの反応。山田先生、伊作以外の忍たま達はずっこけた。伊作は苦笑い、山田先生はため息を溢して様子を見ていたら、

「いいじゃないか。一匹残らず咬み殺せばいいだけの話だから」
『?!』

入り口から現れたのは恭弥だった。恭弥の登場に、皆はびっくりする。

「恭弥!」
「恭弥先輩!」
「雲雀先輩!」
「やぁ」

邪魔するよ、と一言言って恭弥は群れから少し離れた所に腰を下ろした。

「恭弥、お前今まで何処に行ってたんだ?」
「群れを咬み殺してただけだよ」
「…鉢屋」
「『暇つぶしに弱い山賊を倒していた。』とのことです」

恭弥の言葉だけではいまいち内容を教えてくれなかったため、山田先生は三郎に通訳させたのだった。三郎は慣れているのか、恭弥の言葉を当然の如く通訳したのだった。その姿はさながら図書委員会委員長の中在家長次と補佐の不破雷蔵のようだ。
その様子を見た恭弥は不機嫌そうな表情で言う。

「いちいち通訳しなくてもいいよ、三郎。…自由に咬み殺してもいいって言ってたのは山田伝蔵達だ。それに、あの時、タソガレドキの忍隊は咬み殺してたんだから、僕が何をしようと勝手だろ」
「そうといってもだなぁ…」

どう答えたらいいのか分からない土井先生。
確かに、恭弥は自分達を追いかけていたタソガレドキ忍隊を全員倒していたのだ。それに加え、伊作達の元まで言ったのは、三郎から報告されていた。
タソガレドキ忍隊を倒したというのに、咬み殺し足しなくて山賊を倒したのは分かっているが…。

「ストレス発散のような言い方で言わないでくれよな…」
「雑魚はストレス発散のようなものだよ」

きっぱりと言った恭弥に何も言えなくなった土井先生と山田先生だった。話を元に戻して、恭弥は言った。

「その乙名がタソガレドキと戦おうとしているのは、村の様子を見れば一目瞭然だ」
「流石は恭弥。やはり気付いておったか」
「当たり前だろ。…ここまでしているんだ。咬み殺し甲斐があるよ」
「恭弥は喜ばない!」

恭弥の喜び様に土井先生が叱るが、全く聞く耳持たず。
流石、我が道を行くだけある。

「雲雀先輩よくても、冗談じゃないぜ!」
「そうだよ!」

怒ったように抗議をするきり丸としんベヱだったが……、

「タダ働きなんて!」
「あらぁ?!」
「どケチにとって、タダ働きは命にかかわる行為なんだぁぁぁ!」

自分の意図と違ったらしいきり丸の抗議にズッコケるしんベヱにも構わず、きり丸は顔の器官全ての機能を緩めて右手を差し出しながら手潟さんに迫る。

「顔から出るもの全部出ておるのぅ。よしよし、バイト代を出そう」
「手潟様ぁ、命を懸けて戦いますぅ!」

バイト代の一言で態度が豹変したきり丸に、相変わらずだと全員が苦笑いする中、土井先生だけはそうはいかない。

「きり丸っ!銭と命とどっちが大事だ!」
「銭」
「!」

フリーズした土井先生に、さすがにまずいと思ったのか、きり丸もハッと慌てて口を塞ぐが時すでに遅し。
土井先生の地雷を踏んでいた。

「…時と場合によっては、素直に答えるのは自滅行為だね」

恭弥は静かにそう言った。

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