02
「それじゃあ、そろそろ…」
「分かりました」
利吉は頃合いを見兼ね、皆に告げる。皆も一瞬で纏う空気を変えて、忍の表情になる。
「今だ!」
利吉と仙蔵が建物の扉をぶち破って外へ飛び出していき、瞬く間に閃光弾が放たれた。タソガレドキ軍を彼らが揺導している間に、一行はそれぞれの任務のため外へ飛び出した。
「それじゃあ伊作、任せたよ」
「うん!」
先へ向かわせる伊作に恭弥はそう言い、その後続くは組達を警護する。
自分達がお堂から離れた後、自分達の背後から追いかける複数の気配。
「恭弥先輩!」
「三郎、君は雷蔵と一緒には組を守りな。僕は僕の仕事をするからね」
「はい!」
「分かりました。…少しは手加減してくださいね」
「無理」
三郎の言葉に即答し、恭弥はトンファーを手に大きく飛躍して後方へと向かった。そんな恭弥に苦笑いを浮かべ、三郎は庄左ヱ門達を見る。
「さ、園田村へ向かおう!」
「はい!」
タソガレドキの忍は先生方や恭弥に任せて、三郎と雷蔵はは組達を園田村へと誘導した。
***
一匹、また一匹。
「弱い奴には興味ないよ」
「ぐあッ!!」
「ガハッ!!」
「ぐっ…がはっ!!」
確実に咬み殺していく恭弥。
相手は子供であると安直な考えで恭弥に挑んだのが運のつき。タソガレドキ忍隊は次々と恭弥に倒されていった。
「貴様、本当に忍たまか!?」
「答える義理はないよ」
「ッ!?ガッ!!」
また一匹仕留める。
「…今まで咬み殺してきた奴等に比べたら、骨はあったけど…」
僕が望むような強さじゃなかったね。
一撃目、二撃目を躱し攻撃したタソガレドキ忍隊は、ドクタケ城などに比べたらマシではあった。しかし、恭弥のお目には掛からなかったようだった。
「僕の前に立ちはだかるなら、容赦しない」
「ぐぁ!!」
「(だいぶ咬み殺した…。気配がない…)」
だいぶ咬み殺した恭弥は自分の周りに敵が居ないことを気配で確認し、は組達の元へと向かった。
その時だった。
「!」
ふと頭上に感じた気配。
恭弥が見上げると、微かに見えた人影。
「…」
その人影に、見たことのあるような気がした恭弥は、風よりも速いスピードで森を駆け抜ける。
「(彼なら簡単に見抜くはず。となれば、狙うのは…)」
一躍し、木々を飛び越える。
「不運を発揮してないことを祈るよ」
そう呟いて、恭弥は遥か先方にいる者達のもとへ向かった。
***
「(やはり、先生方はお強い…)」
自分たちを守りながらタソガレドキ忍者隊と戦う土井先生と山田先生に、三郎は畏敬の念を抱く。
自分たちは子供たちと共に走る事で精一杯である。反対に、先生方は自分たちに危害が起きないよう戦っていた。
「(私もまだまだだな)」
潮江先輩ではないが、今度鍛錬でもするか。
一人そう思っていた時だった。
≪三郎≫
「!」
矢羽音。
それは自分と勘右衛門と委員会委員長のみのもの。
驚き、動揺したもののすぐに三郎は矢羽音で応答した。
≪なんでしょうか、委員長≫
≪用が出来たから僕は先に行く。追っ手は咬み殺したから来ない。安心しなよ≫
≪分かりました。…お気をつけて≫
たった数秒の出来事。三郎の言葉を最後に、矢羽音は途切れた。そして三郎は、風の如く速く先へ向かった気配を感じた。
おそらく恭弥だ。
「(伊作先輩と乱太郎に何かあったのか…?)」
≪韋駄天≫乱太郎とその護衛の伊作を心配した三郎だが、自分達にも仕事はあるから、とすぐに切り換えて走る事に専念した。
***
乱太郎が足を捻ってしまい、時間をロスしていた伊作。応急処置をし、園田村へ向かおうと気持ちを切り換えた瞬間だった。
「危ない!」
一瞬の殺気と気配に気付いた伊作は、慌てて乱太郎を突き飛ばす。咄嗟の判断で行った上、何の前触れもなくされたからか乱太郎は木に直撃。
しかし、必死に意識を保とうとした。
「乱太郎、先に行け!」
伊作は苦無を出して襲いかかってきた大柄の忍者に応戦していた。
全くの隙もない、手練れの忍。
伊作はせめて乱太郎だけでも先に行くように告げた。が、
「先輩、危ない!」
乱太郎が伊作の手助けをしようと石を投げた。しかし、ここで忘れてはならならい忍たまのお約束。
乱太郎が投げた石は、乱太郎の思いと反して伊作の後頭部に直撃。
「ぐぁっ!?…っ、先に行けってばぁ!!」
「あ、ごめんなさい!」
逃げるように走り去る乱太郎。それを確認して一瞬気を緩めた伊作。
だがしかし、それがいけなかった。
「よそ見!」
「?!ぐぁぁっ!」
大柄の忍者の蹴りが伊作の鳩尾に綺麗にヒットしたのだ。軽々と飛ばされた伊作は、構え直すことも出来ず大柄の忍者に首筋にクナイを宛がわれた。
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