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「#寸止め」のBL小説を読む
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04



「ワォ。また増えた」

廃寺へ入って行ったオーマガトキ側へ向かったは組と土井先生の気配を感じ、恭弥は呟く。

「…面白くなったね」

これから起きるであろう事態に恭弥は小さく笑った。傍にはヒバードも待機し、恭弥はのんびりと過ごしていた。

「……」

しかし、警護は怠らなかった。
ひっそりと影を潜めるその者達に、恭弥は容赦なく殺気を放ったのだった。


***


「実は、かくかくしかじかで!」

将棋の駒と鹿のパペットで説明する利吉。
しかし、たった今廃寺に到着した乱太郎、きり丸、しんべヱ、団蔵、金吾は不思議なものを見ているような目で利吉を見た。

「……何ですか利吉さん」
「全然わかんない」
「うん……」
「だ、だよねぇ!?」

今までずっとこのギャグをやり続けて、スルーされていたからだろうか、乱太郎、きり丸、しんべヱの反応に、妙に嬉しそうに利吉は食いついた。

「……利吉くん、利害が一致したんだね?」

苦笑いの土井先生に優しく言われ、利吉は肩を落とす。

「はい……土井先生」

そんな利吉の姿に山田先生が照れ隠しか、ごほんと咳ばらいをし、2人は慌てて姿勢を正す。

「で?お前達は何を見たんだ?」

話を振られた乱太郎達は真剣な眼差しで説明、

「はい、それが……かくかく!」
「しかじかでして!」

出来るはずもなかった。
利吉と同じように、しかし乱太郎達の場合は着ぐるみで話を省略した。おかげで利吉はパペットを投げて倒れたのだった。

「…で、お前達はタソガレドキ忍者につけられたんだな」

土井先生がため息をつく。

「しんべヱに似た怪しい男が包帯だらけの忍者と森の中で?」

話を聞いた山田先生が、隣に座っていた日向先生とアイコンタクトをした。日向先生のアイコンタクトはそのまま雷蔵へ行き、

「三郎!」
「心得た!」

雷蔵が合図をすると、三郎が立ち上がり、後ろを向いて頭をゴソゴソとする。得意の変装で、彼らが報告した人相になろうという算段だった。

「それって、こんな顔だった?」

振り返った顔はまさに乱太郎達が見たしんべヱそっくりの怪しい男。

「あー!」
「そんな顔してました!」
「これはオーマガトキ城主の大間賀時曲時の顔だぞ」
「えぇ!?」

土井先生の言葉に、は組の生徒は驚くばかり。さらに利吉が続けた。

「包帯だらけの男は、タソガレドキ軍の忍組頭、雑渡昆奈門でしょう。恐るべき実力者と言われています」
「オーマガトキ城主と、その敵であるタソガレドキの忍組頭が密会?」

山田先生が日向先生を見ると、同じことを考えていたらしい日向先生が頷いた。

「ピースが揃いましたな」
「うん。……事態の本質が見えてきたようだ」

満足げに笑った山田先生だったが…、

『……』

気が付けば、目の前にはとっくに脳内で処理できるキャパを越えて限界を迎えたは組の生徒達が。そんな子供たちに導くように、土井先生は優しい声を掛けた。

「始めから全部まとめてよーく考えてごらん?」

そういえば、乱太郎達は…

「シュクダイヲヤレナクテ……」
「ガッコウニコラレナイコノキモチガ……」
「ワカッテナイ!」
「いや、そこではなく!」

片言になり、物語の最初からまとめようとした乱太郎達に呆れ、土井先生が説明しようとした時だった。

「……大前提として」

は組の学級委員である庄左ヱ門が口を開いた。庄左エ門は自分達や先生達から貰った情報をもとに、必死に事態をまとめようとした。

「手潟さんの様子から考えると、オーマガトキ城主、大間賀時曲時は、人望が無く、領地から税金が取れない。まして、園田村のような村々は、惣という自治組織を作って領主に対抗するようになってきている……」
「あぁ!わかったぁ!」

庄左ヱ門の話を聞いていたきり丸がハッとして勢いよく立ちあがった。

「どっちもやる気のないこの戦、オーマガとタソガレは実はグルだったんだ!」
「え?どういうこと?」
「タソガレドキが攻めこんでくるぞー!と噂を広めれば、自分達の安全を保障してほしいオーマガ領の村々は庇いの制札欲しさになりふり構わず銭や兵糧をタソガレ軍に差し出す!」

気づいたのはきり丸だけではなかった。だんだんと理解し始め、金吾と兵太夫も立ち上がる。

「そうか!それがグルだったとしたら!」
「タソガレは、どっさり受け取った金品の一部をオーマガに渡すに違いない!」
「おれがもらいたかったぁぁぁ!」

目を小銭にしながら涙を流すきり丸に、一同脱力。

「せっかくきり丸は銭の問題になると頭の回転が早いって感心したのに」
「ひと月前の合戦で、本当の勝敗は決まってたんだね」

考察続行不可能になったしんべヱを我に返らせながら、乱太郎と三治郎がため息をつくが、山田先生は満足げに笑う。

「大変よくできました」
「よくできましたぁぁぁ!!」

そして土井先生はそれ以上の感動を受けたのだった。

「……そんなに?」
「泣くほど?」

は組のツッコミを放置するほどに。

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