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02



とある廃寺にタソガレドキ側の一年は組の子が集まって来た。皆、引率者の山田伝蔵に帰還した旨を告げ、休憩していた。
そろそろ庄左エ門も帰ってくるだろうと思っていた山田が辺りをキョロキョロ見ていた時だった。

「山田伝蔵」

音もなく現れた少年に山田先生は驚く素振りをせず、笑みを浮かべた。

「おぉ、恭弥か。お前、別の任務ではなかったのか?」
「僕の任務が終わったら、君たちと合流しろってたぬき爺に言われてね」
「学園長先生と呼ばんか、お前は…」
「一生無理だね」
「全く…」

恭弥の言い分に山田先生は溜め息を溢す。そんな彼を軽く無視して、恭弥は尋ねた。

「君たちの任務はどう?順調かい?」
「タソガレドキの印を取りに行った子供はあと庄左ヱ門だけだ」
「…そう。オーマガドキの方はまだ分からないみたいだね」

恭弥は納得したように言った。山田先生は恭弥に「自分の任務は終わったのか?」と尋ねれば、ただ頷く。

「時間を割くものでもなかったよ」
「印もとったということか」
「まぁね。あと、山村喜三太の事もね」
「!」

恭弥の言葉に山田先生は反応を示す。恭弥は山田先生の反応を分かっていたのか、続けて「選抜チームも探ってるから安心しなよ」と言った。

「恭弥、お前も中に入っていなさい。庄左ヱ門も直に戻ってくる」
「…群れたくないから屋根に居るよ」
「少しは慣れなさい」
「無理」

即答し背を向けた恭弥に山田先生は溜め息を吐くしかなかった。すると、恭弥は寺に向かって歩いたはずなのに、ピタリと足を止めた。山田先生も気付き、恭弥にどうかしたのか尋ねようとする前に彼は開口した。

「いつまでそこにいるの?さっさと出てきなよ」
「!」
「…流石だね、雲雀恭弥くん」
「利吉!」

山田先生は現れた青年──自分の息子、山田利吉を見て驚きの声を上げた。
傍には庄左ヱ門も一緒だった。
恭弥は庄左ヱ門の姿を見て、小さく口元を緩ませる。

「久しぶりだね、庄左ヱ門」
「お久しぶりです、恭弥先輩!」
「大方、山田利吉とは印を取る途中で会った、そうでしょ」
「はい!」
「利害が一致したので、ついてきました」

そう言った利吉はニコニコ笑顔。その笑顔が気になった山田先生は利吉にその理由を聞いたら…、

「いやぁ、父上と一緒に仕事が出来ると思うとつい」
「…何を言うか…!」

と、言いつつも少しは嬉し様子を見せていた山田先生。もちろん一年は組の子供たちは、彼の心情を理解していた。
利吉は山田先生から恭弥に視線を変えて、笑みを浮かべる。

「暫くの間だけどよろしくね、恭弥くん」
「…群れていたら咬み殺す」
「ハハ、気を付けるよ」

利吉は以前から山田先生や一年は組から恭弥の事を聞かされていたから、すんなりと答えた。利吉の返事に恭弥は納得したのか、背を向けて廃寺へ足を進めた。それに着いて行くように、山田先生達も御堂の中へ入った。

「では、各々調べた事を言いなさい」

恭弥は山田先生達から少し離れた隅の壁にすがり、一年は組の子供たちの情報を聞いた。
子供達の話はタソガレドキ軍はやはり優勢の位置に立っていて、かばいの制札を貰う為、オーマガトキの土地からも金品が送られているとか。
さらに、勝利を確信しているのかのんびりムードでいるらしい。
色んな物売りが居て、戦の最中にすら見えている。
という、内容であった。

「(やっぱりそうか…)」

自分の情報と照らし合わせながら考える恭弥は、この騒動の裏を確信し始めた。
すると、

「それはオーマガトキも同じでした。負け戦なのに、実にのんびりしている」

と、御堂に入って来たのは選抜チームの引率者の日向先生と五年の不破雷蔵、鉢屋三郎だった。

「ワォ、また群れるの?」

恭弥は呆れるように呟いた。

「恭弥先輩、お久しぶりです!」
「やぁ、三郎」

恭弥にすぐさま声を掛けた三郎に小さく笑う。夏休み中は特に三郎との交流も無かったからか、三郎は嬉しそうな表情をしていた。

「君も大概だね。課題を放棄するとは」
「あはは…、いやぁ、すみません」
「君らしいといえば、そうなるかもしれないけど。風紀を乱してる事に変わりはないからね」
「はは…」
「不破雷蔵もだよ。疑う事は忍の基本だけど、決断は早めに下す事だね」
「はい、以後気を付けます…」

注意を受けられ、三郎と雷蔵は困ったように笑った。

「(ま、全ては小松田秀作が原因ではあるけどね…)」

また吉野作造が顔を大きくして小松田を叱っているだろう光景が目に浮かぶ。
その後、日向先生も恭弥に声を掛けた後、利吉に気付く。

「おや、利吉君。」

その存在に気付いた日向先生が言うと、利吉はどこからだしたのか、シカと角行のパペットを手にはめた。

「実は、かくかくしかじかで!!!」

ウケを狙ったのだろう、だが誰も笑うことなく綺麗にスルーされた。

「……バカ?」

恭弥の嘲笑うような言葉だけ残し。

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