▼ 夜雀
「明鏡止水・桜」
妖銘酒が瞬く間に炎へと変わり、玉章に向かって襲い掛かる。そのまま玉章に怪我を負わせようと思ったリクオ。それは玉章によって阻止される。
「玉章様……!?」
「っ!?ダ…!!!」
「ギャアアアアアアア!!!!!」
あたしの声を掻き消されるようにして、犬鳳凰は玉章の身代わりとされて命を大将によって消されたのだった。そんな奴が魑魅魍魎の主になれるわけない。
それはリクオも思っていたようで。
「…………オイオイ…………。部下を身代わりにして逃げるのか。どうも…いつまでたっても小物にしか見えねぇ奴だ」
ザッ…と、リクオは玉章に近づいた。
「このまま消してしまってかまわねぇ気がしてきたぜ」
そう言って油断を作ったのは一体誰なのだろうか――――?思わずあたしは叫んだ。
「目を閉じて!!!!」
けど、すでに時遅し。
「そうだ……。この玉章の部下となるものは…玉章のために犠牲となり、玉章に…つくすのだ!!!」
「お願いだから、目を閉じて!!!リクオォ!!!」
「見せてやれ、夜雀」
瞬間、リクオの視界は真っ黒となったのだった
「リクオ!!!」
「訊こう。奴良リクオ。我が八十八鬼夜行の末尾に加わらんかね?」
「………ことわる。てめぇと盃交わすと考えるだけで、虫唾が走るぜ」
「ならば君を殺して、君の百鬼の畏れをえるとしよう!!」
「リク、!!!」
ガキィイン!
「リクオ様。やっと…見ぃつけた!」
「つら…ら……」
「氷…凍…」
「リクオ様しっかり!!」
「つららか……」
リクオを危機一髪で助けたのは氷麗だった。
「っ……」
禍々しい妖気の中、リクオが危険に晒されそうになった中、彼女は現れた。側近として、盃を交わした者として、彼女はリクオの前に現れた。あたしは安心して眺めることしか出来ない。
リクオの危機一髪で、氷麗は現れてそのまま玉章と対峙する。
しかし…、
「違う!!夜雀だ!!」
「え!?」
「!?氷麗ッ!!」
思わず声を上げた。けど、あたしの声とリクオの声は既に遅くて、氷麗が気がつく前に夜雀は氷麗にその自身の漆黒の翼を彼女に浴びたのだった。
万事休すだった。
「うう…リクオ………様…」
「残念だな奴良リクオ…。そんな女が側近だなんてな………」
「っ……」
「夜雀……。違いを見せろ。さっさとその役立たずを始末しろ!」
夜雀が羽を広げる。そして、氷麗に攻撃を仕掛ける。
何も見えない。
感じない。
どうすることも出来ない。
そんな中、彼女は、彼は奴等の攻撃を受ける。
「(逃げて)」
そう言いたいのに、言えない。
自分が弱く、そして脆いことに吐き気がする。
「ど、して…よ……」
嗚呼、どうして私はこんなにも弱いの?
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