影と日の恋綴り | ナノ
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 盃を交わす

(燈影side)

「リクオ様!!我々と……“盃”を交わして下さい!!」
「………」

青と黒の声が廊下まで聞こえた。俺と鯉伴、そして神無は廊下で今後のことを話していたからその言葉に互いに目を見合わせて小さく笑った。
嗚呼、ここで彼の百鬼夜行が生まれるのか。

「我々がリクオ様に仕えているのは…もともとは盃を交わした総大将と二代目の任命だったからです!!」
「いわば今…リクオ様と拙僧達には何の契りもない!!」
「……お前、あいつ等にそんな事を頼んでいたのか?」
「初めて知りましたよ、鯉伴様」
「ん?それは燈影も神無も一緒だぜ?」

青の言葉に疑問を持って二代目に聞いてみれば、鯉伴はさも当たり前のように片目を閉じて言った。
その態度でさえイラつくのは何故だろう。

「……」
「…鯉伴よ」
「なんだ?」

ふと、俺は思っていたことを言った。

「俺は、面白くなければいつでもこの組を抜けると、お前やぬらりひょんと盃を交わすときに言っていた。…覚えておるか?」
「あぁ。お前みたいにそう言うのはいなかったからなぁ…」

懐かしそうに目を閉じていう鯉伴。その顔を見て、俺もまたぬらりひょんと鯉伴と盃を交わした時を思い出した。
まぁ、ぬらりひょんとの出会いが一番濃く残っているがな。

「ぬらりひょんの代も、お前の代もまた一興だった。盃を交わしたことは後悔しておらぬ」

そう、俺はぞんぶんに楽しめることが出来た。
俺は自由な妖怪。
だからこそ、この組を好きになれたのだ。
鯉伴から視線を外し、傍で俺達の様子を見ていた神無へ俺は目を向けた。

「…神無、」
「初めてお会いした時から」
「?」

神無は俺の言葉を遮って言う。神無は嬉しそうに、微笑ましいいつもの表情を浮かべて俺に言った。

「…私は燈影様に一生ついて参ります。貴方様の判断は、私めの判断でございます」
「……そうか。…鯉伴、次の代もまた、面白そうだ」

頭を下げた神無に笑い、無言のままいる鯉伴に言って、俺は闇に溶けてリクオの元へと向かった。
彼と交わすために。

「若、これからもよろしくお願いします」
「河童…、頼んだぜ」
「次は我とも交わさぬか?リクオよ」

河童の影を借りて俺はリクオの傍へ近寄った。突然の俺の登場にその場にいたリクオの側近たちは目を丸くしていた。リクオも目を丸くしていたが、すぐに不敵な笑みを零して俺に盃を渡してきた。

「そうだな。アンタと交わすのもいいな」
「お前の代の百鬼夜行になるのもまた一興よ」

リクオに言って、俺はリクオから酒を受け取る。が、一口飲む前に…

「言い忘れていたことがある」
「?なんだ?」

コトリ、と酒を置いて俺はリクオを見る。俺の言動を不思議に思いながらも、リクオは真剣な顔つきで俺を見てくれた。口布を隠していても、笑みを零しているのは分かるようで、リクオは不敵な笑みをまた一つ零したのだ。

「さっさと言えよ。気になるじゃねぇか」
「…これは、ぬらりひょんと鯉伴にも言った言葉だ」
「ジジイと親父に…?」

コクリ、と頷いて俺は手から蜃気楼のように影を現せてリクオに言った。

「俺は影だ。影から現れ、そして影へ消え溶ける…。我は“自由”な妖怪だ。面白くないと、つまらぬと思えばすぐにこの組から抜ける」
「………」

これは初代と二代目にも言った言葉だ。
さぁリクオ。

「(貴様の答え、我に教えて貰おう…)」

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