影と日の恋綴り | ナノ
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 報告

(燈影side)

「話す力はまだあるな」
「っ…燈影、様…ッ」

リクオを気絶させてそのまま鯉伴に任せたまま、牛鬼に支えられている牛頭に向かって俺は話し掛ける。やはりリクオは無理をしすぎていた。

「お前等の任務は“戦力”と“次の手”を探ることだっただろう?」

息が絶え絶えなのは分かるが、それでも俺は言うべきことがあると思い、牛頭を無理矢理意識を保たせる。

「う……」
「報告しろ。お前が見聞きしたもの、言え」
「燈影様!?彼等は重傷ですよ!!?」
「お黙りなさい!!今回は、牛頭丸馬頭丸が命令以外の事をしたから!…彼等に、同情などいらないわ」

周りは批判の言葉を述べるが、それでも俺は牛頭に目を向ける。重傷?だからなんだ。任務は最後まで全うするのがお前達だろ?
三代目の命を受けたこいつらが一番分かっていることのはずだ。

「…深追いしすぎたな、浅はかな」
「っ…」

牛頭に冷めた目を向ける。呆れてものも言えない。これは彼らがやったことだ。自業自得なのだ。同情する余地など一切ないのだ

「何も言わぬまま床に伏せるのか?それとも言えるだけの情報を言って床に伏せるのはどちらがいいのだ?」
「っ…報告、しま…す…」

牛頭は自分のすべきことを理解したのか、口元の血を拭って荒い息で言葉が途切れながらも報告した。

「奴等、四国から勢力を集めていた…。そろそろ、襲撃してくる、はず…です…ッ」
「牛鬼の読みの通りだな。…他に何か言うことはないのか?」
「……」
「あるなら言え。全て言え」

言おうか迷っている牛頭に俺は容赦なく言った。それに影響したのか、意を決して牛頭は重たい口を開けた。

「…、…が…」
「…、はっきり言わんか」

誰かの名前を言っているのは明々白々。だからこそ、その名前を聞きたいのだ。
そう思っていたが、

「…、緋真……が、四国の妖怪に…捕まって、いる…!!」

聞いたことに後悔してしまった。
そのまま牛頭は痛みで意識を失い、そのまま彼等を鴆に任せた。俺の背後では側近たちが目を丸くして、信じられないと口々に言っていた。その中でも、神無は口を抑えて青ざめていた。

「…氷麗」
「は、はい!!」
「何ボゥッと突っ立っておるのだ。さっさとリクオを運べ」
「!!は、はいッ!!!」

氷麗にいい、そのまま俺は周りの妖怪達に言い放つ。

「貴様等も何をしておるのだ!!!この状況で最善すべきことを考えろッ!!貴様等はそれでも奴良組の妖怪か!!!」

俺の言葉に叱咤され、不安を抱えながらも妖怪たちはそれぞれ任された指定場所へと蜘蛛の子のように散っていった。神無も自分のすべき事があるのか、消えて去って行った。まぁ、その方がバレることはないからな。
広場に妖怪達が大分居なくなったくらいだった。

「燈影」
「鯉伴…」

鯉伴は“畏れ”を使って俺の傍に現れた。リクオの容態を聞けば、鴆に任せているとの事。それを聞いて俺は安心する。が、それでも胸中にある不安要素は残っている。

「…彼女のことか?」
「…それはお前もだろう。…まさか、あの娘が捕まっているとは思っていなかった」

そう鯉伴にいるが、本当はあの玉章の言葉ですでに確信していた。

「彼女の姿が見えないけど…、どうかしたのかい?」
「気配も何も、感じない…ねぇ」


あの時、何故すぐにでも奴を攻撃しなかったのだろうか?
何故あの時奴を問いたださなかったのだろうか?
何故、彼女を護衛していなかったのだろうか?
後悔の念がいっきに俺へと襲い掛かってきた

「燈影っ!!」

「………」

幼き頃の緋真と、

「名前を、教えてくれませんか…?」

別人のはずである緋真の顔が、

「っ……くそ、」

重なって見えた。

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