▼ 帰還
(リクオside)
「鴆殿は来ているか!!牛鬼殿も…呼べー!!」
それは突然起きたことだった。
三羽鴉の長男である黒羽丸が慌てた声で父親である鴉天狗に叫ぶように鴆くんと牛鬼を呼び出した。枝垂桜の下にいた僕は何が起きたのか分からない。
だから、周りの妖怪たちの言葉に目を丸くした。
「何ィ!?」
「一体なぜ?あいつらが…」
「牛頭馬頭の奴ら…どこほっつき歩いていたんだよ!?」
「!?」
その言葉を聞いて、妖怪たちを分け入って僕は彼等の傍に近寄る。
皆の中心にいたのは、ボロボロの状態で立つこともままならなかった牛頭丸と馬頭丸。
「牛頭丸!!馬頭丸!!」
彼等は重傷を負って帰ってきたのだった。
「牛頭…しっかりしろ!!」
「おい馬頭の奴危険だぞ!!」
「つれてけ!!」
あまりの衝撃さで僕は言葉を失う。
荒い息をして苦しそうに呼吸をしている牛頭丸。馬頭丸はすでに気失っていてあまりにも危険な状態だった。
一体何が…!そう思っていると、周りの声が一際耳に入ってくる。
「敵の本拠地へ潜入したそうだ」
「なんだ…。やつらのアジトはわかっているのか」
「幹部に黙ってなぁ〜に勝手なことしてんだ!?」
「下手に刺激したらまた傷口を広げることになるだろうーがぁ〜。バカか」
「誰の策だ?」
「牛鬼だろう…。しかし、愚かなことを…」
牛鬼のせいにするのは違う。思った瞬間、僕は口に出していた。
「牛頭丸…。ゴメン…ボクのせいだ」
その言葉に周りは静かになった。
「君は…ボクの命令で動いたのに…。こんな…こんなことになるなんて…!」
「リクオ様の命令…だったんですか!?」
周りがボクの命令だと知って驚愕の声を上げる。そんな声を消すように、牛頭丸は声を上げてボクを睨む。
「うるせぇっ…テメェの傷を…ゴホッ、人のせいにするとか思ってんのかオレがっ!!」
牛頭丸は額に手をやって悔しそうに眉を潜めて呟くようにしていった。
「………オレの…力不足だっ…」
「それなら分かっているのだろう?」
牛頭丸の言葉に当たり前だとでも言うようにして彼は影の中から現れた。瞬間、僕の意識は遠ざかっていった。
最後に見たのは…、
「ひ、え…」
ボクを心配そうに見ている父さんと燈影、そして神無の姿だった。
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