影と日の恋綴り | ナノ
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 残虐

「なんで…玉章様…。カハッ…」

血が噴出す。バタリ、ゴトリ、と動かなくなった妖怪。
何が起きたのかさえも、分からない。

「ワシら…仲間じゃ…ねーのかい…。なんで…ワシらも一緒に…斬るんですかい…」

玉章の前にあるのは、骸と化した妖怪たち。それをただ冷めた目で、興味がないように見る玉章。ゆっくりと刀を鞘の中に収めた。

「かわりの者などいくらでもいる…。強い奴しかいらない…。君らはコマなんだから」

その玉章の姿に牛頭は目を丸くし、そして彼を“畏れ”た。

「オヤ…まだ生きているのか…」

ふと、牛頭の気配に気付いて玉章は牛頭の方へ目を向けた。傍には気失っている馬頭もいて、牛頭はどうすればいいのか必死に頭を動かしていた。

「それもそうか。なんせ君たちは…」

そう言って玉章はちらり、と縛られている緋真の方へ目を向けた。その瞳には怒りが孕んでいた。

「まぁいい。それよりも、君たちはそんなにも知りたいのか…?言っとくがボクは…痛めつけるのが好きだ。あと一撃で死ぬなら0.9の力で斬る。次は0.09の力で。さらに0.009の力で」

魔王の小槌を口角の上がった口元へと運ぶ。フフフ、とまさに殺戮者のような笑みを浮かべて…。

「何度でもこの刀。味わわせてやろうな…?」

ゆっくりと再び刀を鞘から抜く。そして、そのまま牛頭と馬頭に向かって刀を向ける。小さな声で緋真が「早く…て、」と呟いていた。緋真の呟きに気付かないまま、玉章は牛頭に向かって言った。

「とどめはささぬ。ホンの少しの命だけ…。心が折れれば消えてしまう程の命を残していたぶろう」

そう言った瞬間だった―――――――

ガシャアァァン!!!

突然窓が破壊された。そしてその者達は容赦ない一撃を玉章にむけた。

「…く、ろ…」

緋真は小さく呟いた。だが、その声は窓ガラスが割れる音と金属音がぶつかり合って掻き消されたのだった。突然の出来事に誰もが緋真の呟きを聞く事はなく、ただその者の名を心の中で呼んだ。
天狗―――!!
玉章は奴良組の者達の登場に防御が遅くなったが、魔王の小槌で何とか防いだのだった。

「………お前達―――奴良リクオの命令か…?」
「言う必要はない。ここは奴良組のシマだ―――」
「(単独行動?フン…いい部下を持ってるな)うちに欲しいな」

刀を下ろしながら、玉章は彼等から目を放すことはしなかった。そんな玉章の言葉を無視して、黒羽丸達は牛頭丸と馬頭丸を抱えて再び漆黒の翼を広げて敵のアジトから去っていった。
緋真の存在に気がつかないまま。

「なんて奴だ!!おい、しっかりしろ牛頭丸!」
「っ…う…、…緋真……」
「喋るな牛頭丸!!」
「ありえないアイツ!!」
「味方も関係なく切り捨てていたぞ!」
「しかし…おそろしい奴だ…」

黒羽丸、トサカ丸、ササミの言葉を遠くに牛頭丸はただただ心の中で緋真を心配していたのだった。
なぜなら、彼女は…。

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