▼ 見誤るな
(神無side)
「奴の具合はどうだ?」
影から現れたのは我が組々長の燈影様。
今奴良組は総大将もいらっしゃらない状態の中、刻々と大きな敵勢力がやってきていた。その勢力は四国妖怪。奴良組を地盤である土地神を襲ったのは、四国妖怪で有名な袖モギ様。地盤から奴良組を崩そうとしていたのでしょう。
襲名なされたリクオ様の護衛に私も任されていましたが、別の件にて同時にすることは出来ず燈影様にやむを得なくお願いすることになりました。
「燈影様…。えぇ、だいぶ良くなったと思われます…」
「そうか…」
私の言葉に燈影様は安心なさった表情をしており、やはり心配なさっておいでになられたのでしょう。私は小さく笑ったあと、ふと組のことが気になり燈影様に尋ねました。
「…今、現状はどのようになっておられるのですか?」
「……」
「……燈影様?」
だんまりを決めなさる燈影様。
もしかして、リクオ様の身に何かあったのでしょうか?
「…藤堂緋真が、四国の奴等に捕まったかもしれぬ」
「!?」
手にしていた包帯を落としてしまった。ありえない、予想外過ぎるそのお言葉に私の口が震える。手も、微動して定まらない。
「ご、ご冗談…ですよね…?」
「…」
「か、彼女は人の子…!彼女を襲う理由が…!」
「神無」
「!」
制止され、頭を下げた。燈影様は小さく溜息を溢してから、私の頭を撫でました。
「真かは分からぬ。だが、玉章本人が彼女だと思われる言葉を口にしていた」
「っ…」
「神無、間違えるなよ」
「…何を、でしょうか…」
燈影様は襖に手を掛けて、私に背を向けた。
そのまま去り際にこう告げた。
「藤堂緋真を、奴良緋真と見間違えるな」
「!」
その言葉は、私にとって痛嘆なものでした。
ですが、燈影様…。それは、私にとっては無理なことであります。
「…彼女を、それでも緋真様と見てしまうのです…!」
その言葉を、燈影様が襖越しに聞いていたのは私は気付かなかった。
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