▼ 心配する父と、
(リクオside)
「………」
内憂外患、とは本当に今の事だと思い知らされた。
僕が三代目を襲名するのを拒む一つ目達の内部の反勢力、外じゃあ四国の妖怪共の侵攻。
じいちゃんはいつものようにぬらりくらりとどっか行ったまま帰ってこないし、父さんは今回は手出しはしないと言ってきた。
僕一人で、大丈夫なのだろうか…?
「……玉章」
四国八十八鬼夜行の主・玉章。いとも容易く仲間であるはずの犬神を消すことから、非情だと思い知らされた男。
けど、それ以前に…
「…委員長…」
何故、あの男が委員長のことを気にかけた?
確かに、今日学校で彼女の姿は見ていない。清継くんも、鳥居さんも、巻さんも朝から見ていないと言っていた。
嫌な予感がする。
「若…」
「!何、氷麗?」
ずっと考えていたから、氷麗がいることに気がつかなかった。それに、氷麗以外にも部屋の外にはあの場にいた皆が。
「若、あの…」
「分かってるよ」
「ぇ…?」
「…あの時の、舞台での玉章が言った言葉だろ?」
「………」
僕だって、思いたくもないんだよ。信じたくないんだ。
彼女が、玉章の元にいるということを。
「委員長が、もし玉章の元にいるなら危険すぎる。玉章は委員長の何かの力に興味を持っていた。警戒してと、言ってたんだけど…」
「藤堂さんは人間です。そう簡単に妖怪の気配が分かるなんて…」
「そもそも、玉章が言うあの娘の力とは何のことですか?」
青が僕に聞いてきた。以前、それは僕が委員長に聞いた言葉だった。彼女自身、分からないと言っていたけど…。
「僕も分からない。けど、委員長自身その力は知っているようだった」
何故、あんな嘘をついたの?
自分に危険があるというのに、どうして?
「……」
「リクオ」
「!父さん…」
部屋の外で、父さんが僕の名前を呼ぶ。父さんは本当に傍観するようで、さっきの総会でも何も言わなかったし、どうこうするつもりもないらしい。
いつも何も考えてなさそうなお父さん。こういうときに限ってこうなんだから。
「何?」
「…いや、やっぱりいいわ」
僕をじっと見たかと思えば、つい、と視線を逸らしてそのまま部屋を通り過ぎて行った父さん。ただ僕はそんな父さんを見ることが出来なくて、いったいどうしたんだろうかと心底不思議に思った。
すると、
「リクオ」
「?」
今度は燈影に呼ばれた。燈影はゆっくりと、首無の影から現れてそのまま僕の前へと現れる。
「どうかしたの?」
「…鯉伴からの言伝だ」
「……父さんが?」
さっき会ったばかりだと言うのに、なんなのだろうか?言い忘れたことを燈影に頼んだのかな?それとも、僕に直接じゃいえないこと?
色々と思っていると、突然頭に重みが。
「燈、影…?」
「…“無理をするな”」
「!」
「それだけだ。ではな」
くしゃり、と僕の頭を撫でてそのまま燈影はまた影の中へと消えていった。
嗚呼、どうして父さんはすぐに分かったのかな?
そう思えば、ふと委員長の言葉を思い出す。
「…無理を、しないでね」「………」
委員長も父さんと同じように心配そうな表情でそう言っていたな…。
どうして、君はあんなことを言ったの?
「リクオ様」
「あ、牛鬼」
今度は牛鬼が部屋に寄って来た。けど、さっきまでとは違って、今から話すのは相談役の達磨と鴉天狗と牛鬼だけの会議。
これからのことについての会議。
「うん、すぐに行くよ」
「承知しました」
牛鬼に言えば、そのまま牛鬼は部屋を去って先に部屋へと向かった。
委員長のことも心配だ、けど、それよりも…
「(僕が、しなくちゃならないんだ…)」
三代目になる、僕が…!
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