▼ 彼女の行方
「た……玉章……!?」
「失敗したんだね。バカな犬神……」ついに、その時は来た。
「………」
「残念だよ。君は――君の能力は―、人を呪い恨み強くなる」「っ………」
「なのに―君は恨む相手を畏れてしまったようだ。恨みが畏れに変わったら、君はもはや…役立たずに…なる」「……っ、ぅ……」
「な…何言ってんだ?玉章…。そんなこと…言うなよ!!」やめろ。
言え、呼ぶんだ。
「俺を認めてくれたのはお前じゃねぇか!そうだろ!?なぁ、俺はまだやれる!!」気付いて 気付け。もう、駄目なんだ。
ねぇ気付いてよ。
「……気付いて、っ…」
「いや。もう――終わりだ」
「玉章…!」言って!!!
「…、」「!!」
「散れ カス犬」彼が、犬神があたしの名を呼ぶ前にアイツは、玉章は自分の仲間を文字通り消した。
嗚呼、また。
「…助けられなか、た……」
頬に伝ったものは、汗なのか、血なのか、それとも…―――――
***
「君の“畏”を奪い、僕の――八十八鬼夜行の後ろに並ばせてやろう――――」
「…それは、こっちのセリフだぜ…豆狸」
二人の若き妖怪が、対峙する。
「…嗚呼、そうだ」
「?」
玉章は思い出したかのように、言った。
「彼女の姿が見えないけど…、どうかしたのかい?」
「!」
玉章が言ったと同時にリクオの脳裏に浮かび上がったのは、淡い笑みを零してこちらを見る少女の姿。
リクオ幾度なく見間違えた少女。
幾度なく勘違いした少女。
幾度なく姉と慕いたくなった少女。
「気配も何も、感じない…ねぇ」
「!?テメェ、まさか…!!」
嫌な汗が、背中を伝う。
お面をつけているはずなのに、玉章が怪しく嬉しそうに、そして自分達を見下すような笑みを零しているように見えた。
「それでは」
ひらりとひらりと木の葉が舞う。
「さらばなり。また会おう」
一陣の風と共に、隠神刑部狸・玉章は消えた。
「っ…、まさか…」
「リクオ様…!」
「あの若造…!!」
リクオ達に拭いきれない胸騒ぎを残して。
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