影と日の恋綴り | ナノ
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 厳重な警備

「………」

いつものように混雑している電車に乗っていたはずのあたし。この時間帯は、通勤ラッシュが多いからホームはきつきつなのは当たり前。いやね、いつもあたしはホームでリクオとつららと青を見掛けるよ、見掛けますとも。仲睦まじい様子で登校しているのを見掛けますよ。
…ですがっ!!!

「……」

いつにも増して、リクオの周りにいる人達が怪しく見えるんですけど?
着物姿で新聞見ている人はサングラス掛けてて見えなくね?しかも、風で首がふよふよと浮いていますけど!?
もう片方はイマドキの中学生に見えるけど、雑誌を読んでる手が水掻きだよ?え、なに?手に水掻きの手袋するのって流行ってるの?!
ちなみに気付いてますか!?なんか、あたしの傍で立って電車を待っているそこのイケメンさん!周りの女性が目をギラギラと光っていることに気がついていますか!?

「っと、わっ!」

いつの間にやら電車は来ていて、後ろから押されながらあたしは電車内に入った。
いったー…、つーか我先にと押してんじゃねぇよ、ふざけるなよ。これだから都会の奴等は情もないって言われるんだよ!!

「はぁ……」

周りの奴等に睨みつつ、つり革を掴んでそのまま時間を過ごそうとした。だけど…

「ムリよ…。この状況じゃしょうがないでしょー」
「リクオ様もいつまではさまっておられるのでしょーかぁ!?」
「違うんだよつらら!!」
「おい、貴様等。少しは黙ることを知らんのか」
「……」

なんで本家共があたしのすぐ傍に居んだよ!なにこれ?え、あたしに対しての虐め?苛めですか?!あたしがなんか悪いことでもしたとでも言うのか。

「…」

でも、少しだけ羨ましかった。
周りの目を気にしないで、本家の皆と仲良く話しているリクオ達。
もし…もし、あたしが“奴良緋真”として生きていたなら、あたしはあの場所に居たのだろうか…?

「リクオ、窮屈じゃない?」
「大丈夫だよ!それより、緋真姉さんこそ苦しくない?」
「えぇ。大丈夫」
「リクオ様!緋真様!何かありましたら氷麗めに言ってください!」
「僕はいいけど、姉さんは痴漢にあったらすぐに言ってよ!!」
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。それに、ちゃんと言うから」


って、これはただの妄想みたいなものか。
勝手にあたしの中で会話が生まれていた事に呆れ、嘲笑してしまう。リクオがいて、氷麗や青田坊が護衛で一緒に居て。
嗚呼…。

「(あたしも、あの場所に立ちたい…)」

一生叶う事のない願い。そして絶望を伴う願いでもあった。
と、その時だった。

「わっ!!」

ガタン、と大きな揺れ。つり革に掴んでいたあたしはそのまま大きく左右に揺れてしまい強い衝撃で誰かにぶつかってしまった。
なんなんだよ、今日は厄日ですか。
そう思いながら、ぶつかってしまった相手に謝罪する。

「ごめんなさい、揺れでぶつかってしまって…」
「あぁ、気にしなくていいんだよ。突然だったから仕方がな…」

互いに目があって、数秒停止。あたしにぶつかったのはさきほどホームで見た着物の人。サングラスは上に上げているようで、素顔を見てしまった。
言わずとも首無だった。

「あ…と…」

何か言わなきゃ。ごめんなさいって謝らないと。
早く此処から離れないと…。

「……お嬢?」
「っ!!」

その言葉を聞いた瞬間、あたしは人込みを掻き分けるようにしてその場から離れた。あたしを掴もうとした首無が見えたのは分かった。けど、それよりも早くに逃げたからなのか捕まる事もなくそのまま違う車両に移った。

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