影と日の恋綴り | ナノ
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 もしもの話を

(鯉伴side)

「ただいま」
「おう、遅かったなリクオ」
「まったく…鯉伴の息子だな。もうその歳で遊び人になったのか?」
「!親父、燈影…」

深夜頃、息子のリクオが帰ってきて、俺と燈影は出迎えた。服からは煙管や酒や香水の香りがして、随分と遊び人になっちまったなぁ、なんて思ってしまった反面、燈影の言葉が俺の教育が悪いように聞こえた。
まぁ、今回は理由があったわけだから見逃してやるけどな。

「どうしたんだよ、親父。いつもならこの時間帯は部屋にいるだろ?燈影も、この時間帯は寝てるか散策しているはずだろ…」
「まぁな…」
「たまには、行きたくない日があるというわけだ」

リクオの言葉に相槌を打ちながら、俺はリクオを隣に座れと促す。燈影はすでに俺の隣に座っていて、燈影の様子と、やっぱり意思疎通できるみてぇですぐにリクオは座ってくれた。
昔はあんなに小さかったのに、いつの間に成長したんだか…。

「で、俺になんか用でもあるのか?」
「んー?そうだなぁ…」
「………」

もし、これを聞いたらお前はどう答えるだろうか。父を馬鹿にするだろうか、それとも真剣に考えてくれるだろうか…。
そう思いながら、俺はリクオに聞いた。

「なぁ、リクオ」
「なんだよ?」
「…もし、緋真が生きているって知ったらお前はどうする?」
「……は?」

俺の言葉に、リクオは目を丸くして素っ頓狂な声を上げた。ま、これが妥当だろうよ。普通はこんな事を聞く奴なんざいねぇからな。
今だに目を丸くしているリクオに、小さく喉で笑っていると、リクオが小さく溜息を零して月を見つめて答えてくれた。

「…そりゃ、会いてぇよ」
「……」
「もう一回会って、姉さんと話をして、一緒に暮らして楽しく過ごしてぇよ」

そういうリクオは、本当に嬉しそうな顔をしていた。その言葉を聞いて、俺も嬉しく思えた、

「やっぱり思うよな。…ちなみに、燈影はどう思ってんだ?」
「…緋真が覚えているなら、あの約束を叶えてやりたいものだ…」
「…お前、まだあの約束を覚えているのか?」

驚いた。
燈影は未だに女を作らないのはその理由があったのだ。昔、緋真が燈影と幼い頃に冗談で約束した婚約。
それを燈影は未だに信じているのだった。
驚く以外に思うことは、彼は一途であるということだった。

「…まァ、緋真はもう覚えてないかもしれないけどな。…鯉伴、貴様はどうなんだ?」
「まぁ、俺はまず怒るかもしれないけどな」
「…んでだ?」

今まで会話に入ることが出来なかったリクオはようやく入れて、俺に聞いてきた。本来なら、会いたかったから抱きしめたりしたいところだが……。

「そりゃオメェ、親より先に死んじまうなんて親不孝者にもほどがあるだろうよ」

そう言えば、リクオは何故か納得した顔に。親より先に死ぬなんざ、本当にいい度胸してるよな…緋真。

「で、なんでそんな事を聞いたんだよ」
「いや、ちょいと思っただけだよ」
「……変な親父」
「そらお前もだ、リクオ」

妖怪の世界に人間を連れてってよォ、とリクオに言って俺は腰を上げた。燈影は、リクオに言った言葉はどうやら燈影のツボにはまったらしく、小さく喉で笑っていやがった
その声を遠くで聞きながら、俺は自室へと入った

「………」

静かに襖を閉めて、俺は考える。目を閉じれば、幼い緋真とあの子が映った

「お父さん!!」
「ありがとうございます、奴良くんのお父さん」


本当に、瓜二つの顔と性格の持ち主。

「…もうちょっと、様子見とするか」

彼女が本当に緋真だって確信するまで、な。
その頃、リクオと燈影はというと…。

「どうしたんだよ、親父の奴…」
「さあな…」
「それより、神無は何処行ったんだ?見当たらねーけど」
「あぁ。神無は俺の命でちょっと別の所にな」

(鯉伴side終)



「はぁ、はぁ…!!」

急げ。早く彼の元へ。
間に合わなければ、間に合わせねば…!!

ガサッ ザッ

「っ…見えた…!」
「ガグゥウゥウ!!」
「!?」

ようやく見えた屋敷から聞こえた声。嫌な予感がしてたまらない。

「ッ!!」
「う…う…ワ…ワシを誰だと思うとる…。大妖怪…狒々様じゃぞ…」
「フッ…」
「天下の奴良組幹部の一人じゃぞー!!」
「ザコはザコじゃ」

バンッ

「!?」
「狒々様ァー!!!!」

それは、悲しい出来事から始まった幕引き。新たな幕が開け放たれた。



影と日の恋綴り 日常編 終

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