影と日の恋綴り | ナノ
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 神隠しの傍観

(神無side)

彼女が、本当に緋真様だと思ってしまった。
彼女の胸元、そして背中にある痣に見覚えがあったから。

「(緋真様の刺された傷も、ほぼ同じ場所だった…)」

何の悪戯かと、泣きたくなってしまった。
けど、今はそれどころじゃなかった。

「えー、カナまでー?」
「ごめんね!」
「!」

ハッと我に返り舌打ちをしたくなった。
しくじった…!彼女ばかりを気に掛けていたからか、他の子を考えていなかった…!
緋真さんに続いて家長カナまで浴場を後にさせてしまった。
なんたる失態…!
それに、この妖気は…!

「ちょっと逆上せたので、先に上がりますね」
「えー、美詠奈さんまでですかー?」
「ゆっくり浸かって下さい」

慌ててあたしは浴場を後にして人気が居ないことを確認して妖怪化した。
捩眼山は牛鬼様率いる牛鬼組の本山…!警戒はしていたものの…爪が甘すぎた…!!
とりあえず家長カナを追いかけようと玄関まで出たと同時だった。

「「ギャアアアアァァアァアァ!!!」」
「!!」

浴場の方から悲鳴が聞こえた。たぶん、巻沙織と鳥居夏実の声。そして、感じてきた強力な妖気の数々。
まさか…

「誰かが襲ってきたのかッ…!!」

異空間を通ってあたしは浴場へと向かった。複数の妖気が感じるが、花開院家の陰陽師の霊力も感じ始めた。おそらく、彼女が戦闘に入ったのだろう。
だが、牛鬼組は奴良組の中でも相当の武闘派…!!彼女がいつまで持てるか…!
水場は好まないから、見渡せる屋根の上へと私は移動した。

「…なっ…!!」

牛鬼が四体、そして一体の上に乗っているあの子は牛鬼組若頭補佐の馬頭丸…!
たかが人の子にそこまでするのか…!!

「とりあえず、彼女達を避難させなくては…!!」
「爆!!」
「うわー!!ぐぉー足場がっ…!!」
「…けっこうやるのね」

私の出番がない、と言ってもいいほど陰陽師少女は馬頭丸に対して頑張っていた。けど、その後の馬頭丸の反撃で彼女は式神の力を失ってしまった。馬頭丸は容赦なく彼女達へ牛鬼の爪を向けた。慌てて神隠ししようとしたが、視界の端で見えたそれに私の役目はなくなった。

「ふぇ?…ゲブォォオ!!うわっ」
「…」
「若は…いないのか」
「三羽烏達…。わざわざ本家からやってきたのかしら…?」

陰陽師少女達を助けたのは鴉天狗一族で鴉天狗の息子達。馬頭丸はそのまま湯の中に落ちて、ささ美ちゃんによって拘束された。私はというと、呆然と突っ立っている彼女達に近寄って声を掛けた。

「貴方達」
「!」
「ヒィ!?ま、また妖怪…!?」
「安心して、とは言えないけど…とりあえず貴方達は着替えて来なさい。その恰好では風邪をひくわ」

そう言って私はささ美ちゃんの元へ。黒羽丸くんとトサカ丸くんはすでにリクオ様の元へ向かわれていた。

「馬頭丸、貴方達がしたこと…理解出来ているのですよね?」
「か、神無様…!!」
「本家へ報告させて頂きます」
「…はい」

しょんぼり、と沈んだ馬頭丸の頭を撫でてささ美ちゃんに後を任せて私は異空間を通って家長カナの元へと急いだ。何があってからじゃ遅すぎるもの…!!
結果、家長カナの元には氷麗のみしかおらずとりあえず二人を別荘へ連れて帰った。そして、その数十分後に緋真さんが帰ってきた。
つい、安心してしまうのは彼女が…緋真様に似ているからなのでしょうか?

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