影と日の恋綴り | ナノ
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 清継の別荘

「うおお〜。テンション上がる〜」
「成金趣味〜」

玄関を開けた瞬間から見える、キンキラキンの内装に、巻さん達はそれぞれ感嘆の声を上げた。つか、なんなんだよこのシャンデリア。眩しくてサングラスしてしまいそうなんだけど。

「父親の山好きがこうじて建てた別荘でね。この山の妖怪研究用に建てかえさせたものだ」
「はぁー」
「……」

清継の説明に呆気にとられて部屋を見渡すあたしたち。つか、さっさと部屋を案内しろや。
そう思っていると、まさかの清継くんは温泉のほうにあたし達を案内してきやがった。
すみません、あたしは部屋でのんびりしたいんですけど?

「さぁ、おまちかね。この奥が特製の温泉だよ。女の子たち…先に思う存分入るがいい」
「うあああーすごーい!!」
「豪華すぎる〜!!」

キラキラと輝く日本古来の温泉。湯気が立っていて入りたくなる気分が一層増してきた。おかげで巻さんと鳥居さんのテンションも上がり始めた。

「さっそく入ろー!!」
「行こーぜ、カナ〜つらら〜」

巻さん達はカナさんとゆらさんを連れて温泉に向かっていった。神無は氷麗とリクオと真剣な顔つきで話をしていた。たぶん、これからの事についてなんだろう。
あたしはというと、まず荷物を置いてそのあと遅れてリクオ達についていこうと思い、巻さん達とは逆の方向に向かった、は、ず…。

ガシッ

「へ…?」
「委員長?なーに、一人何処行こうとしてんの?」
「皆で温泉入ろうよ!」
「へ、あ、あの…?」

ガシリ、と巻さんと鳥居さんに腕を捕まり現行犯逮捕されたようなカタチになったあたし。え、ちょいとお待ちよそこのお二人さん?

「こんな豪華な温泉なんて滅多に入れないんだから、損だよ損!」
「っ…分かりました!分かったから離してくださいー!!」

巻さんと鳥居さんの力は予想以上に強くて、あたしの腕が悲鳴を上げてる。ヤバい、これ結構痛いんだけど?!
マジで痛い痛い痛い痛い!!!!!
あぁ、リクオそんなかわいそうな目でお姉ちゃんを見ないでくれ!!そんな目で見るならあたしを助けてくれよ!そんでもって神無!!微笑ましそうにこっちを見ないで!!

「はーなーしーてーくーだーさいー!!一人で歩きますからー!!!」

あたしの叫びは届かなかった。

***

(リクオside)

「若を危ない目にあわせられません!」

妖怪探しに行こうとする清継くん達を止めようとしても全く言うことを聞かないから仕方なく僕もついて行くと言うと、何処からもなくつららが現れた。僕が大事だからってつららまで来なくていいのに…。
ふと、僕は温泉の方へと見た。露天風呂ではカナちゃん達が楽しそうに入っている声が聞こえた。その中には委員長の声も交じっていた。
あっちは大丈夫だろう。神無がついているんだから心配はないはずだ。

「若?」
「え?なに、つらら?」
「い、いえ…」

ボーっとなさっていたので。というつららに僕は意識を飛ばしていたことに気付く。いけない、いけない、僕とした事が…。
けど、どうしても委員長の声が耳に入ってくる。
そして、今朝の父さんの言葉にも。

「リクオ」
「何?父さん?」
「……お前の友達の、」
「?」
「お前の友達に、緋真ちゃんっつー子がいるだろ?」
「いるよ?委員長がどうかしたの?」
「…彼女を気にかけておきな」
「?どうして?」
「…ま、俺の勘だよ」
「………」
「あぁ、それとリクオ」
「燈影まで僕に用?どうしたの、いったい…」
「捩目山に着いたら、気をつけろ。それと、緋真という娘にも言ってくれ」


どういう意味があって、父さんや燈影はあんなことを言ったのだろうか?
どうして父さんと燈影は委員長顔見知りなの?
どうして父さんと燈影は委員長を気にかけるの?

「ハァ…(駄目だ、全然分かんないや…)」

そもそも、やっぱり自然と彼女を姉と重ねて見てしまう。外見も性格も緋真姉ちゃんとそっくりで。
もう、姉ちゃんはいないというのに。
それに、彼女は窮鼠の時僕の事を下の名前で呼んでいた。彼女とは中学校で知り合った関係なのに…。
初めて会った時だって、僕の名前を呼んだ。

「リクオ」
「…奴良リクオ、でしょ?」
「いいから逃げなさい!リクオ!!!」


委員長に名前を呼ばれると同時に心の中に生まれるあの安心感。
勘違い、ですむようなものじゃなかった。

「……」

けど、今は委員長より清継くん達を守らないと。つららがいるとしても、いつ攻撃されるか分からない。
夜なのかな、血が熱い。

「リクオは、あたしが守るよ!」

僕、頑張るよ。だから、見守っててね。
緋真姉さん。

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