影と日の恋綴り | ナノ
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 拉致

「なに…?これ…?ゆらちゃん……」
「…妖怪変化…。昼間…説明した通りよ。こいつらは…獣の妖怪」
「…え…?」

あー、なんか言ってたね。“知性があっても理性はない”って、まさにこいつらを表していますねー。と、他人事のように言ってる場合じゃない!どうしよう、このままだと確実に皆捕まってしまう…。それだけは避けたい。けど、あたしは何が出来るっていうんだよ…!霊力があってもそれはヒーリングくらいしか使ってない。
それに、彼女たちの前では…

「おとなしくしてりゃあ…痛い目見なくてすぶぜぇー」
「っ!!!」

まずは、カナさんを守らないと。花開院さんもだけど、彼女は…!

「…ねずみふぜいが。粋がるんちゃうわ」
「何?」

挑発すんじゃねーよ、お前はぁぁぁああ!!!なんで挑発すんのかなぁ?!どんだけあんた自分の力を過信してんの?!バカ?!あんたバカなのか?!!

「後ろに下がって、家長さん、藤堂さん」
「え?!」
「カナさん、怖ければあたしの後ろに下がってて。しっかりあたしから離れないで」
「緋真ちゃ…」
「やれ、お前等」

こうなったら、結界とか守りのほうをしてあげておきますか…。そう思っていると、花開院さんは構えてそのまま変わった歩法で進んだ。いや、これは…

「禹歩天蓬天内!!天衝天輔天任!」
「ん?」
「乾坤元享利偵!出番や!!私の式紙!!貧狼」

叫ぶようにいった花開院さんの出した式紙からは一瞬で狼が現れた。それは巨大で、背後にいたあたしたちにまで恐ろしく感じた
って、そういう問題じゃない。あたしも彼女を守る為に…

「…オン ハンドマダラ アボギャジャヤニ ソロ ソロ ソワカ オン ハンドマダラ アボギャジャヤニ ソロ ソロ ソワカ…」
「緋真ちゃん…」

あたしが突然呟き始めたのを不思議に思ったのか、カナさんがあたしの名前を呟く。呼ばれたのを聞いて、あたしはカナさんのほうを見てニッコリと笑って彼女の口元に自分の手を押し当てた
静かにしててね?

「……」

あたしの言いたいことが分かったのか、カナさんはコクリと力強く頷くとそのままあたしの服をぎゅっと強くつかんだ。その仕草を見て、あたしはまた小さく真言を唱える

「オン ハンドマダラ アボギャジャヤニ ソロ ソロ ソワカ…」

霊力を微力ながらも出しながら、あたしは彼女を守る。鼠どもは彼女に任せよう、あたしはあたしが出来ることをしようではないか
無理だと思うけど

「なんだこいつぁー!?」
「翼ぁー!!優ー!!」
「こ…こいつ…式紙を使ってやがる…術者だ!陰陽師だ!!それも…生半可ねぇぞぉ!!」

うわぁ…スリル満点だわ…こりゃ…。鳥肌が立っているのを感じ、あたしはカナさんを抱き締めて目と耳を塞ぐ。彼女にはちょっと厳しい光景だ
あたしはもう自分のでなれてるから大丈夫だし

「オン ハンドマダラ アボギャジャヤニ ソロ ソロ ソワカ…(よし、もう少し…)」

花開院さんも順調に貧狼を使って窮鼠を食べ殺していて、あたし達も被害が出てこなかった。
だから、油断していた

ガッ!!!

後頭部に鈍い痛みが走った

「っ…しま、」
「窮鼠さぁーん!こいつ、変なことをぶつぶつ呟いてましたぜー!しかもオンなんたらって!」
「くっ…オン コロコロ センダリマトウギ ソワカ“破邪刃t」
「させるかァ!!!」

ゴッ!!

「っ!!!」

今度は腹を殴られた。そのまま肺の中の空気を外に出されてあたしは意識を失いかけた。

「緋真ちゃん!」
「藤堂さん?!彼女は関係ないやろ!」

カナさんと花開院さんの声が聞こえる。やばい、もう、意識…が…

「っ、逃げ…」

言えないまま、あたしは視界をフェードアウトした

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