影と日の恋綴り | ナノ
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 一番街での出来事

「よし、これで夕飯の材料が揃った…」

奴良家の家にお邪魔した後、あたし達は解散した。あの後会議って感じではなかったけど、まぁ色々と話して皆家路についてあたしは夕飯の買い物をしていた。今日スーパーのタイムセールだったことを忘れるところだった。此処、一番街は華やかで香水や酒、煙草の臭いで気持ち悪いけど家に帰る近道にはもってこいの場所だった。
だから、油断していたのかもしれない。

「?あれ、カナさん!それに花開院さんも!」
「え?あ、緋真ちゃん!」
「藤堂さん…」

ふと前方を見れば、先ほど別れたばかりのカナさんと花開院さんが一緒に歩いていて、あたしはつい声を掛けてしまった。つか、なんであんたたち此処にい、て…。
ふと思い出す。
やべぇ、今、窮鼠の話だ。

「緋真ちゃん、どうしてこんな所に?危ないよ?」
「え、あ、いや…買い物の帰りで…近道を…」
「買い物…。あー!!しまったー、スーパーのタイムセールのことをすっかり忘れてもうとったー!!」

あたしの言葉に花開院さんはショックを受けていて、あぁ悪い事をしてしまったな、と内心謝罪した。しかし、あたしは今それどころではなかった。
早く此処を去らないと巻き込まれてしまう…!!自分の命が第一ですからあたしは!!

「そ、それじゃあ…あたしは此処で…」
「でも一人じゃ危ないよ!一緒に行こう?」

今での上目遣いはやめてくれー!!!
あたしの服の裾を引っ張って言うカナさんに、あたしは冷や汗を掻きながら言葉を濁す。ヤバいヤバいヤバいヤバい…!!気配!なんかこっちに近付いてくるけはいがするよ?!妖気が滅茶苦茶こっちに向かってきていますよ?!ゆらさん気がついてくださいよ!!あんた陰陽師なんだろぉぉぉお!!!

「わっ、女の子が落ちこんでるよ〜。ひーろった!オレの店まで持って帰っちゃおーっと」

来たぁぁぁああ!!!滅茶苦茶撫で声でなんか変なことを言ってるー!!!あたし達を囲い込むように手を広げる窮鼠。
やばい無理、生理的に受けつれない…!!

「それともどっか行く?いーねそれも!!ボクと一緒に遊ぼうよ〜」
「大人として子供を一番街で夜遅くまで誘おうとするその精神は如何なものでしょうか?大人として、社会人としてみっともなくて?」
「そ、それは〜…。いーじゃん!ちょっとだけでもさぁー!!」
「(マズい、これは…)…行きますよ、カナさん、花開院さん」

丁寧に断ったのに窮鼠は諦めない。あたしは窮鼠から離れて、彼女たちの手を握ってその場から逃げようとする。
無駄だと百も承知でね。
無理だと思ってもしてしまうのは誰でも同じで、しかし結局は無駄な抵抗であたしたちの周りには窮鼠の部下が群がっていた。

「つれなくすんなよ仔猫ちゃん。アンタら…三代目の知り合いだろ」

そう言って、髪を掻きあげる窮鼠。その顔は…、

「夜は長いぜ。骨になるまでしゃぶらせてくれよォォ!」

気持ち悪いクソ鼠の顔だった。
あーもー…夕飯の材料どうすればいいんだよ。

「か…顔が…化物ッ……」

カナさんは怖がっていた。やばい、これだと奴等の畏れに…。そのままあたし達は路地裏に追い込まれた。いや、花開院さんがあたし達を守るように立ってくれていますが、背後からも来てますよー。

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