影と日の恋綴り | ナノ
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 奴良家訪問

日曜日。本日晴天。
なのに私の心は雨模様。

「…なぜ、此処に来なくならないと行けないの」

目の前にそびえるのは大きな年代モノの屋敷。
かつてあたしが住んでいた場所。

「来させないでよ…」

涙が出てしまうのは、悲しみか、嬉しさからか。



そもそもの出来事は土曜日の夜だった。
いつものように週末課題を終わらせ、さぁ就寝しようと思った矢先だった。

トゥルルル トゥルルル…

何処からもなくあたしの家の電話が鳴った。あたしの家の電話番号を知っているのは極僅か。その中から電話する人はある程度予想できた。たぶんあの子だろうな、なんて思いながら受話器を取る。

「もしもし?」
“あ、緋真ちゃん?わたし、カナ”
「やっぱりカナさんだ。どうかしたの?」
“明日、暇?”

カナさんに言われ、あたしはカレンダーを見る。明日は日曜日…、確か何もなかったはず…。

「何もなかったはず…」
“明日、あたしと一緒に出かけない?”
「カナさんと、ですか…?」

あれ、ちょっとまて。何かあったはずだよ、明日…。

「用もないからいいですよ」
“じゃあ、明日リクオくんの家に集合ね!”
「…………はい?」

電話の相手の子はなんと言いました?

“明日、リクオくんの家で妖怪会議するって!”
「奴良、くんの…家で…?」
“うん。それで、あした……――”

その後の記憶は全くない。ただ、もう明日仮病を使って休もうかと思ったのは憶えていた。



「あぁ、胃が痛い…」

おまけに胸焼けもしてて最悪…。だいたい、なんであたしまで巻き添えを食らわないといけないんだか…。そう思って腕時計を見ればすでに10時を過ぎていた。日時を教えてくれててもいいだろうに…。
すると、遠くのほうから賑やかな声が聞こえた。清継くんたちだった。

「妖怪クイ〜ズ、第17問。次のうち鳥をしたがえてとぶ火の妖怪は何?a.釣瓶火b.ふらり火c.姥火」
「うーん、cですか清継君!」

元気でなによりだよテメェ等。殺気を零しながらあたしは彼等を待つ。するとあたしの存在に気付いた清継くんはあたしにそのクイズを聞いてきた。

「委員長はどう思うんだい?」
「…bじゃないですか」

話し掛けるんじゃねぇよ、あたしは今虫の居所が悪いんだよ。そうとも知らず、清継くんは「正解だよ!やはり流石だね!」とか訳の分からないことをほざいていた。

「妖怪屋敷で妖怪会議だ!」
「ちょっと清継くん!奴良くんに対して失礼だよ!」
「かまわんよ」

それはリクオを三下として見ているという事かテメェ…。なにふざけた事を抜かしてやがるんだ…。
腸煮え繰り返りそうなのを我慢して、あたしは最後尾を歩く。自分が金持ちだからと偉そうな態度をとりやがって…。

ザワ…

「!」

バッと、あたしは傍の草木を見た。視線があたしにきていたからついそっちを見てしまったけど…。
そこには誰も存在してなく、ただ風が待っていただけだった。

「(気のせい…)…元気そう、だけどね」
「緋真ちゃーん、早く行くよー!」
「…はーい」

カナさんに呼ばれ、あたしは走って向かった。色んな場所から、あたし達に視線を注ぐ彼等。慌てて隠れたり逃げたり大変そうにしている彼等。
一緒にまざりたい、遊びたい、笑いたい。
でも…、

「おい緋真っ!!」

ツキン、と胸が痛んだ。
誰にも言えない秘密をあたしは山ほど持っている。
その中の一つに、あたしの身体に一つ秘密がある。服によって見えないけど、胸元には生まれたときからある刀傷のような痣があった。
そこは、ちょうど私が刺された場所だった。

「…必然、なのかなぁ。これも」

あたしと彼等は赤の他人。
たとえあたしが【奴良緋真】であっても、今は【藤堂緋真】。
本当は関わらない方が身のためなのだろう。でも、やっぱりリクオの姉だったからには、見守りたい。そして、

「お邪魔します」

できれば、影から支えたい。

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