影と日の恋綴り | ナノ
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 始まりの予兆

「うぅ〜、まだ夜は寒いなぁー…」

カナさんを送った後、あたしは家路へと着いていた。カナさんかなり怖がっていたなぁ…、大丈夫かな…。と、そんな事を思いながらあたしは家に向かって足を進めていた。

「真夜中に帰宅とか…、委員長失格だな…」

とりあえず家に帰ったらどうしよ…。課題は終わっているから大丈夫だし、夕飯は旧校舎行く前に食べたし…。今日はシャワー浴びて寝るだけしよう。
え、女じゃないって?
すみませんでしたー。あたし生活リズム狂っている女ですのでー。
というか、バリバリのキャリアウーマン時代はこんな生活を送ってたっての。

「…ま、委員長がこんなの誰にもいえないよね」

勝手にイメージ像を作った奴等が悪いんだから、と言いかけたそのときだった。

「っ!!」

悪寒が走った。
とっさにそいつと距離を取る。振り返ってみれば、禍々しい妖気を持っているバケモノがいた。

「…低級霊…?!」

にしては禍々しすぎる。近くで事故や自殺した霊が集まったのだろうか。怨念が大きすぎる。
これは、ヤバい…!

「オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ“破邪刃闘(ハジャジントウ)!!」

襲い掛かってきた低級霊に、慌てて印を結んで、あたしは霊力で創った刀をそのまま縦一閃に妖怪を切った。
いやもう、何を言えばいいのかわかりません…。
うめき声と共に消えていった低級霊を横目に、どうして突然襲ってきたのか考える。普段通る道だけど、こんな霊に会ったことは無い。
どうして今日会ったのか。偶然じゃないとすれば、さっき行った場所に行った帰りだからか。

「妖気に当てまくってたから…、それとも…」

霊力は常日頃抑えている。霊力を漏らしていたらそれこそ夜の世界の者の格好な餌食。
それだけは避けたい。

「……」

考えたって仕方がない、よね?
今はこれからのことを考えないと。今後、絶対に清継くんはあたしをあのわけの分からん団体に強制的に入れようとするだろう。
それだけは避けたい。
けど、なぁ…

「カナさんに言われたら、……はぁ」

ヒロインのみが使える上目遣いをさせられればあたしは一溜まりもない。
そのときは腹を括るしかないよね?

「ま、今度何かあったらそのときに考えればいっか」

人生気楽が一番!
ポジティブシンキングにまとめて、あたしはスキップ並のテンションで家に帰った。
だから気付かなかった。

「おいおい……」

まさか、あたしが妖怪を倒しているのを誰かに見られていたなんて。

「ありゃ何者だ、一体ぇ…」

しかもそれが、

「…あいつに…似てる、なんてな」

あたしが守った人だなんて。

「?」

視線を感じて振り返るとそこには誰も居なかった。気のせいかな、と判断してあたしは家路についた。

「明日は清継くん達は休むから楽だわーっ」

と、何気に酷い事を言って。

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