影と日の恋綴り | ナノ
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 姉の面影

(リクオside)

「リクオ様」
「何?雪女」

委員長とカナちゃんが去った後、雪女は僕に声を掛けてきた。
振り向いて雪女の顔を見れば、何故か嬉しそうな、でも悲しそうな顔をしていた。なんで、そんな表情をしているのか分からない。

「ど、どうかしたの…?」
「失礼ながら……緋真様は、本当にお亡くなれらになりましたよね?」
「!……うん」

雪女は何故か姉ちゃんの話をしてきた。
どうして、今更…。
すると、今度は青田坊が言ってきた。

「あの女…藤堂緋真って言ってましたよね」
「え、あぁ…委員長?それがどうしたの?」

青田坊に言われて、僕は初めて委員長と出会ったときのことを思い出した。

「…………」

委員長が、堂々とした態度で僕から離れていった。清継くんのクラスに頼れる委員長って聞いたことがあって、僕もその噂を聞いて一目見たこともあった。
始めはどんな子なんだろうって、いう好奇心からだった。だから、カナちゃんに聞いてどんな人なのかを教えてもらった。
見間違えだと、錯覚したかった。
似ているんだ、君は。

「リクオ」

いつしかの、あの朗らかな微笑を浮かべた彼女と。
彼女がもしこの世に生きてて、僕の傍で笑っているときっと委員長のようになっていたんだろうって思ってしまった。
それくらい、似てたんだ。

「…(緋真、姉さん…)」

僕の、今は亡き姉・奴良緋真に。
幼い頃だから姉さんとの記憶はあまりない。でも、いつも僕を優しい声で呼んで、嬉しそうに笑っていた事だけは覚えてる。

「似ているんです」
「!」

僕の思いをあらわすように、雪女ははっきりとそう言った。聞き間違い、ではなさそうだった。

「藤堂緋真は、似ています。緋真様と…」
「そ、そんなわけないだろー?だいたい、なんで委員長がお姉ちゃんと…」
「“あたしより、もっと守るべき人がいるでしょ?”」
「っ!」

雪女の言葉に、何故か背筋が凍った。
な、に…その言葉…、誰が…。

「…藤堂緋真が、私にそう言いました」
「で、でも…それだけで彼女が…!!」
「それに、彼女は違うんです!」

雪女は力強く言った。
何が違うの?委員長は、お姉ちゃんじゃない。
彼女は、僕の…

「リクオ様」
「!ぁ、…鴉天狗」
「そろそろまた若い妖怪が貴方様を襲うおそれがあります。一刻も早く此処から出ましょう」
「…うん」

雪女の言葉は忘れることにしよう。
だって、今更お姉ちゃんの話が出たとしても意味ないじゃんか。

「………」

お姉ちゃんは、死んだんだ。僕を守るって、そう言ったまま。

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