影と日の恋綴り | ナノ
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 旧校舎探検

「旧校舎の探検、ですか?」
「そーなの!!お願い、緋真ちゃんも来てくれない?!」

あたしに神頼みのように迫って来る少女は隣のクラスの家長カナ。学校のマドンナ的存在。
そしてリクオと腐れ縁の持ち主。

「でも、どうしてあたしが…」
「だって緋真ちゃんしか頼めなくて…」

つまりあたしは都合のいい人間だってことかしら?
遠まわしにそう言われているような気がしつつも、あたしは小さく溜息を零す。リクオと会って以来、彼とは極力会わないようにしていた。あたし自身、彼自身なにかと互いを避けているような気がしていた。
まぁ、あんな可笑しい事されたらしょうがないよね。

「でも、旧校舎って…あそこは立ち入り区域では?」
「き、清継くんが無理矢理…」
「あぁ、彼ですか…」

アイツはもうゴミ以下で充分なような気がするわ。すぐに気失うは人を遣って自分は何もしないわ、金ですぐに終わらせようとするわで、ロクな人間じゃあないわ。
っと、まぁ彼の悪口はそこまでにしておいて、と…

「旧校舎…」
「緋真ちゃん、駄目かな?」
「ぅ……」

出たよヒロインのみしか使えない必殺技・上目遣い!!どーせあたしは使えないわよ!!キィーッ!!
と、発狂は終えて本格的に考える。旧校舎、といえばあの禍々しい妖気を日中問わず溢れ出している場所だよね…。しかもあそこは不浄霊も多いし、危険が多すぎる場所…。
あそこにカナさん一人にはさせられない。
それに…

「他に、誰が行くの?」
「私と、清継くんとあたしのクラスの島くんと、リクオくん」
「っ!」

やっぱり、君も行くんだね…
リクオは何気に三代目につかないって言いながら奴良組のシマを荒らしている妖怪を気に掛けているのは小さい頃から、そして“原作”で見ていた。
弟を守るのが、あたしの役目。

「…分かった。あたしも行くよ」
「ホントっ!!」
「えぇ。日時を教えてくれると有り難いわ」
「いいよ!今日の夜――…」

カナさんの声を右から左に通り越して、あたしはいつしかの彼を思い出す。
漫画でしか見たことのない、彼の覚醒。リクオの成長を見たいというのは我侭なのかな。

「じゃあ緋真ちゃん、また夜ね!」
「えぇ、また夜に」

あたしはそこまで関わらないから、安心してね…リクオ。



「よし…そろったね。メンバーは7人か…」
「楽しみですね、清継くん!」

好奇心旺盛な子供はこれだから困る。なーにが“楽しみですね!”だ!こちとらメーワクなんだよ!!マジでなんでこんなことになったんだか…。

「ん?カナちゃん?!委員長?!」

あたしとカナさんの存在に気がついたリクオは心底驚いた表情であたしたちを見た。そんなに驚かなくてもいいでしょうが…。と、傍観気味に思っているとガシリ、と両肩を誰かに掴まれた。

「いやー!!委員長は素晴らしい人だ!さすが僕のクラスの学級委員長を勤めているだけあるよ!!」
「あ、の…?清継くん…?」
「素晴らしいよ!妖怪にまで興味を持ってくれるなんて、僕は感激だよ!!」

少しはこっちの話を聞く耳を持たんかぁあぁ!!!!何なんだよあんた、マジで何様なんだよお前!!マジでむかつくな、マジでふざけるなよ、テメェェエエ!!!!

「いえ、わたしはカナさんの保護者です」
「え、そうなの?!」
「ちょ、緋真ちゃん!」
「だって、カナさんに言われなかったらあたし此処には来ませんでしたよ」

男装して此処にくるかもしれなかったけどね。そう思っていると、清継くんがあたしの背後にいた二人の存在に気がつく。

「失礼だが…名前は?」
「及川氷麗です!こーいうの…超好きなの!」
「歓迎するよ!」
「俺も好きなんだ、倉田だ」

興味を持っている及川さん。そして及川さんを守るようにそう言ってきた倉田くん。二人とも、あたしが知っている存在だった。

「よろしくね、及川さんと倉田くん」
「はい、っ!?」
「あぁ…!?」

あたしの顔を見て目を丸くする二人。ありゃりゃ…これは…。

「…?(話しかけるべきじゃなかったかな…?)」

つららと青…元気でなによりだけど…あたしのことを…まさか…。

「よし…じゃあルートはこうだ」

互いに何か思いふけっていると、清継くんはさっそく旧校舎への道をあたしたちに教えてくれ、そのままそばの細い道から行こうという作戦だった。ある意味あたしたちはいけない子です、ッていっとる場合か!

「カナさん、あたしの手を持って」
「う、うん…」

急な坂を一人で登るのはかなりきつかったから、あたしの後ろにいたカナさんの手伝いをする。あたしより彼女は力も体力ないしね。
そんなこんなであたし達は旧校舎へと向かって行った。

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