影と日の恋綴り | ナノ
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 学級委員長

浮世絵中学校に入学して、数週間が経った。あたしも二度目の中学校生活にだいぶ慣れた頃、あたしの身の回りの変化を報告したいと思います。

「委員長ー、おはよー!」
「おはよう」
「委員長!聞きたいことがー!!」
「力になれるか分からないけど、何?」

あたし、いつの間にやらクラスの学級委員長になっていました。いや、あたし別に立候補でも推薦でもなく何故か強制的にさせられました。だいたい、あたしはあの妖怪マニアと同じクラスだし近い未来あいつ生徒会長に立候補するんだからアイツがしとけばいい話なのに…なのにさぁ!!

「委員長、おはよう!」
「おはようございます、清継くん。朝から元気ね」

ムカつく。なに清々しい挨拶してんだ、あぁ?!つぅかなんでアンタまであたしのことを“委員長”っていうんだよ、ざけんな!!
と、内心思いながらあたしは清々しいほどの笑みを送って挨拶する。マジでむかつくよなぁ…。

「ふぅ……」

あたらしく同じ世界に生を宿したあたしの身体。外見も、中身も変わらずそのまま生き写し、ではないけど生まれたあたし。天の啓示でもさしているのかしら、なんて思いながら日々を過ごした。

「にしても、健気に頑張ってるね…あんたは」

朝、教室に荷物を置いて学校の様子を廊下から眺めているのがあたしの日課。元気に登校している人から、朝から遅刻や寝坊やと慌てながら走っている人、多種多様な様子。
その中でものんびりと歩いているあたしの弟だった子が。

「…奴良、リクオ…」

前世を持ったあたしの中に存在している唯一の弟のリクオ。
祖父は妖怪、父は半妖、そして彼はクォーターとしてれっきとした妖怪の血を受け継いでいる彼。前世だったらあたしも妖怪の血を受け継いでいた。
まぁ、今はそれが霊力となっているだろうけど。

「ぁっと…そろそと予鈴がなる…。戻ろ」

物心ついたときから伸ばしている髪を優雅に翻して、あたしは教室へと戻っていった。



キーンコーンカーンコー…

「ぁ、そうだった。おーい、委員長ー!」
「なんでしょうか、先生」

HRも終了して一時間目の準備をしている時に、あたしは呼ばれた。なんだよ、さっさと用事を言え、なんて口では言えない言葉を心の中で吐いて。

「五時間目、俺の教科の社会だから社会資料室から地図を取ってきてくれないか?」

こいつは何様のつもりだ?
自分はいかずに生徒に行かせ、しかもあの重たい地図をか弱いあたしに運ばせるだァ?え、何戯言を吐いちゃってんの?そんなにあなたってえらいほうでしたっけ?んなわけないよな、だって就任したのって今年じゃん。わっけわかんない、何様のつもりだテメェ。

「はい、分かりました」
「そうか、すまねぇな!」

そう言って嬉しそうに去っていく頼りないヘタレの教師。やばい、猫被るのも疲れてきた。

「っと、今からは数学だったんだ!さっさと準備しないと」

ふと自分の腕に飾ってある時計を見れば授業開始三分前。教科書とかまだ出してなかったのに!
内心慌てながらあたしは自分の席へと着いた。



「あれ?緋真ちゃん、どっかいくの?」
「えぇ、今から社会資料室に」

あっという間に時間は経ってただいま昼休憩。あたしはお腹が空いてもいないから授業が終わったらすぐに教室へと出ようとした。けど、あたしの行動に驚いたのかクラスで一番仲がいい冬青(そよご)に声を掛けられた。
彼女――冬青はとっても可愛らしい子なの。

「えー?また先生になんか言われたのー?」
「えぇ。地図を取りに来いって…」
「先生の仕事だから別にいいじゃんかー!」
「は、はは…」

自分との時間を先生に取られたのか、冬青はぶーぶーとはぶててしまった。その姿でも可愛いと思うのはあたしが変態だから?!
あ、すみません冗談です。

「すぐに帰ってきますよ。その間、ご飯を食べててくださいね」
「…ん」

せめて、というようにあたしは冬青の頭を撫でた。あぁもう、どうしてこんなに可愛らしいのですかね…!!
内心鼻血が出そうで不安になりながら、あたしは資料室へと向かって足を進めた。

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