影と日の恋綴り | ナノ
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 再び転生

「お父様ぁぁぁああぁぁあぁぁぁぁああ!!!!!」

まるで昨日のように蘇ってくる、あの日の出来事。
目を閉じれば、瞼の裏であの日の光景が浮かんでくる。
助けたことに満足した。でも、もっと……。

「…あれから、もう5年も経ってるんだね…」

身に纏う衣服を見て、そのまま窓から見える何処までも続く蒼い空を眺めながら、そっと呟いた。

「元気?お父さん、お母さん、…リクオ」

あたしはまた生まれ変わったらしい。気がつけば、あたしは孤児院の子になってた。
前世の記憶を持ったまま。
名前は藤堂緋真。
苗字は院長先生の旧名を、名前はあたしが院長先生に拾われる際に衣服に書かれていた名前をつけられている。あたしにとって、あたしを捨てた親なんてどうでもいいと考えてる。
ただ、名前が変わらなかったことについては感謝している。この名前が唯一、父さんたちと繋ぐものだから。
それと、もういっこ。

「…うーん、不思議だなぁ」

身支度する際に、鏡を見ていっつも思うこと。鏡に映っている姿は、長髪の黒髪に黒い瞳。お父さんに似た目元と、お母さんに似た鼻と口元。何でか分かんないけど、前世の姿であった【奴良緋真】と寸分違わぬ同じ姿で生まれ変わっていた。

「DNAはどうなってんだろね…」

と、内心悪態をつけるけど鏡に映って見えるあたしの口元は嬉しそうに弧を描いていた。
だって、どこにいても、どんなときであっても、そこにいるのは【黒川緋真】であり、【奴良緋真】であり、【藤堂緋真】なのだから。

「緋真、院長に呼ばれてる」
「うん、今行くよ」

呼びに来てくれたのは、孤児院が一緒の親友でもある茜雫(センナ)。
ひょっこりと顔だけ出してあたしに言う姿に、いつしかの弟を思い出してつい頭を撫でてしまった。頭を撫でたら怒るかな、って思えば茜雫はふてくされたように手をはたいた。
…あれだ、巷で噂の“ツンデレ”っていう奴だ。
部屋を出れば、あたしを待っていたのか小さな子供がじっとあたしを見ていた。そんなに純粋な瞳で見ないで欲しいな。なんて思いながら、子供たち全員の頭を撫でてあたしは廊下を歩き始めた。と、同時にあたしについて行く子供たち。

「アヒルの行列か」
「そんなこと言わないの、茜雫」
「だが事実」
「おい」

その姿を、また弟と重ねてしまったのは秘密。


ハロー ハロー 
リクオ、お元気ですか?
あたしは元気です。
同じ空の下にいるのか分からないけど、あたしはあなたを見守っています
リクオ、悩まなくていいの。
あなたはあなたらしく生きていればいいんだよ。

ハロー ハロー
お父さん、お母さん。
元気に仲睦ましく過ごしていますか?
あの後、お父さんは怪我をしていませんか?
お母さん、お父さんが無理をしていないか目を光らせて下さいね。

ハロー ハロー
奴良の皆さん、元気ですか?
リクオの世話を、怠らずにやっていますか?
爺や、元気ですか?
あまりリクオを困らせないようにしてくださいよ。
神無、また会えたらあたしに色々教えて欲しいな。
あたしの姉みたいな人だから。

ハロー ハロー燈影、元気ですか?
幼い頃の約束、あたしは覚えていますよ。
けど、叶う事はないですよね。
まだ、貴方のことをお慕いしてるって言ったらどうしますか?

それでは また連絡します

ハロー ハロー


あたしは藤堂緋真ですよ


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