影と日の恋綴り | ナノ
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 貴方に捧げる

クリスマス-4

「いた…」

宴を抜け出して、あたしは彼を探していた。いたるところを探しても居なかったけど、居間から離れた縁側に彼はいた。
静かに月夜を眺めていた。

「…」

凄く、幻想的な光景に見えた。
燈影は影の妖怪。光が強ければ強いほど影は濃く出来る。反対に、月光のような淡い光は影が薄くなって、蜃気楼に見えるほどに。
光によって、変わる影。
今更ながら恰好いいなぁ、なんて思い始めたら手汗を掻き始めてしまった。こんなモノを彼は受け取ってくれるのか、とても不安だ。いらない、なんて言うかもしれない。というか、そもそも燈影は使うのかな?
あ、どうしよう。なんか涙出そうになる。

「っ…」

今更怖気づいてしまい、あたしはゆっくりと後退した。燈影に拒絶されたら、もうあたしショックでまた死にそうなんだけ、

「緋真」
「!!?」

突然、声を掛けられる。どうやら燈影はあたしの気配に気付いて居たみたいだった。こちらを顔を向けた燈影。

「なにをしている?こっちへ来るなら来い」
「っ〜〜〜!!」

燈影に促され、あたしはしぶしぶといった感じで顔を真っ赤にしたまま姿を見せた。燈影はというと、すでにお風呂にも入ったのかいつも来ている着物じゃなくて、寝着だった。私と同じくらいかそれ以上に長い髪は横で軽く結っていて…。
リクオ達に負けず劣らずの色気で、なんだかもう…あたし気絶しそう……。
あたしみたいな人が許婚でいいの?なんて本当に聞きたいくらいもったいないような気がしてならない。あたしが言ったら泣けてくるけど…。

「緋真?」
「!」
「俺に、何か用か?」
「ぁ、あの…ね、」

優しい声で聞いてくれる燈影に、あたしは緊張しながら話す。手が震えて、声も次第に震え始めた。
すっごく恥ずかしいし、緊張してどうしようもない…。
でも、それでも彼には絶対にあげたい。
意を決してあたしは最後に残った紙袋の中にあるそれを取り出して燈影に渡した。

「これ、ク、クリスマス…!プレ、ゼント…!」
「!」

バッ、と彼にそれを差し出した。持っている手が震えたまま、燈影に言った。

「燈影と一緒に過ごすの、その、養子になってから初めてだし、記念に…!」
「緋真…」

受け取って、下さい…!
蚊のように小さくなっていく声で伝えた言葉は、彼に届いているだろうか。なんて不安いっぱいな気持ちで彼が受け取るのを待っていると…。

「緋真」
「!」
「しかと、受け取った」

優しくあたしの手も包み込んでくれて、あたしにあの大好きな笑みを浮かべる燈影。その笑顔が大好きで、その笑顔を浮かべているから嬉しいのかな、なんて思ってしまうとあたしもいっきに嬉しさが込み上げてきて。

「…うん!」

その一言しか言えなかった。
燈影はゆっくりと目を閉じた後、懐から何かを取り出した。

「緋真」
「?」
「…メリークリスマス」

その言葉と同時に渡されたのは、小さな小箱。何だろう、と思いながらあたしはそれを受け取ってゆっくりと緊張気味に開けた。

「…!」

中には、可愛いワンポイントのネックレスが。

「これ…!」
「俺も、緋真とまた一緒に日々を過ごせる事に嬉しさを抱いている。今日も然り…。記念に、と俺も買っていたんだ」

「ぬらりひょんのように盗んでいないからな」と少し慌てた様子で言う燈影の言葉は、右から左へとすり抜けていく。
燈影から貰ったネックレスはワンポインと割には大きな飾り。それは中に写真が入れられるものだった。

「嬉しい…」

嬉しくて涙が出そうになる。

「ありがとう、燈影…」
「緋真も、ありがとう」

「あ、開けてみて」と燈影をすすめて、プレゼントを開けさせる。

「!これは…」

燈影には青と黒のマフラーを渡した。彼の色は何かな、なんて思えばぴったりとこの色が思い浮かんだ。
暗い色かもしれない、けど、これはあたしにとっては大好きな色。

「ひ、燈影っ」
「?」
「……あの、ね。っ、あ、あたし…ひえ、のこと…っ」

今言いたい。この幸せを告げたくて、彼がとても愛しく思えて。けど、言葉にすることを慣れてないあたしは口を紡ぐだけでその先の言葉が言えない。言いたいのに、恥ずかしさがあたしの前を防いでいて。

「好きだ」
「!」

あたしが言ったわけじゃない。
けど、はっきりと聞こえた言葉。ゆっくりと燈影を見れば…

「…緋真を、世で一番愛おしく思ってる」

嗚呼、どうして彼はこんなにも素敵な方なのでしょうか?

「あたしも、燈影の事…好き!」

返した言葉を待っていたのは、彼からの優しい口づけでした。


気持ち

(だぁー!!駄目だ!!俺は絶対に反対だ!)
(お、お父さん!?)
(おい貴様ら盗み見か)
(緋真姉さん駄目だ!まだ燈影とくっつくな!)
(え、リクオまで!?ちょ、どうしたのよ!?)
((すでに恋仲なのだが…)散れ、貴様等)


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