影と日の恋綴り | ナノ
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 感謝の気持ちを込めて

クリスマス-3

広場に戻ると丁度お父さんと母さん、リクオ、爺やが集まっていて談話していた。皆が同じ場所に居て少し安心して、そのまま四人の下に近寄った。

「お父さん、お母さん、爺や、リクオ」

声を掻けると同時にこっちを向いた四人。皆してこっちを向いたからある意味ドキドキした。でも、これを渡すのにもすごくドキドキする。

「どうしたの、緋真」
「緋真、おめえさっきはよくも騙したな…」
「鯉伴がまだ未熟なだけじゃい。緋真はなーんも悪いことしてないぞ」
「緋真姉さん、どうかしたのか?」

十人十色の反応で小さく笑みを溢して、腰掛けて言った。

「メリークリスマス、今日すっごく幸せだよ」
「私もよ。また、こうして緋真と一緒にクリスマスを過ごせることが出来て嬉しいわ」
「…また家族として過ごせることに、不満なんてねーよ」
「孫娘が帰ってきたんじゃ。わしも嬉しいわい!」
「姉さんとまた一緒に過ごせる…。嬉しい以外何もねーよ」

母さんも父さんもみんな嬉しい言葉を言ってくれ、あたしはみんなに渡す前に涙腺が緩みそうで怖いんだけど。でも、それでもこれは絶対渡すし、これをみて喜んで貰いたい。
あたしは恐る恐る紙袋に手をかけた。

「それでね、あの、お礼…っていうか、なんていうか…家族となって初めてのクリスマスだから…、記念に…」

これ…、と最後らへんは小さい声で言いながらおずおずと母さんから順にプレゼントを渡した。

「緋真、これ…」
「母さんのは、手袋…。父さんのは、マフラー。爺やは腹巻で…、リクオはセーター…」

皆が開けてプレゼントを見たのを確認して言った。
母さんはピンクと橙のクロス柄の手袋。
父さんは黒と緑のマフラー。
爺やは黄色とピンクの腹巻。
リクオはどっちもが着れるサイズくらいの赤と黒のセーター。
あたしが勝手にチョイスしたけど、それぞれ色が合ってて良いかな、なんて他人事のように考えてた。
すると…。

「緋真!!」
「わっぷ!?」

突然母さんに抱きしめられた。驚きながらも「母さん!?」と声をあげると、母さんは目に涙を溜めて嬉しそうな表情を浮かべて笑っていた。

「ありがとう!こんな素敵なプレゼント、見たことないわ!」
「そ、そんなこと…!」
「緋真ー」
「?」

母さんと話している最中に父さんに呼ばれ、父さんを見れば…。

「どうだ?似合ってるか?」
「っ!!」
「緋真や」
「は、はい、っ!?」
「ねーさん」
「な、なに…!?」

もう嫌だ。なんなの、この人達…!
父さんも爺やもリクオもさっそく身に纏っていて、色気が半端ないんですけど…!?
皆さん、ご想像してください…!目の前に色気が半端ない人が三人居てみてください。そして自分が編んだものを纏ってドヤ顔しているのを想像してみてください!

「「「似合ってるか?」」」
「…っ!!?」

な、ななななんなんだよ、こいつ等…!!
逃げたくなってあたしはそのまま側近達の下へ。皆集まっていて、少し休憩している様子だった。これで青や黒が酔ってて絡み酒だったマジで滅しようとか思っていたりしてたのは無視の方向で。

「雪女、青、黒、首無、河童、毛倡妓、神無!」
「ど、どうなさいました緋真様!?」
「あ、あのね…!メリークリスマス…!」
「!メリークリスマスでございます、緋真嬢」
「メリクリでーす」
「緋真様、メリークリスマスです」
「緋真様、飲みますか〜?」

若干酔っている人が居ますがここはスルーしましょう。あたしはそのまま紙袋からそれぞれに渡す。

「みんなと過ごす初めてのクリスマスだから、その…記念に編んでみたの!」
「こ、これは…!!」
「まぁ…」
「!」
「お、おぉぉおぉぉおお嬢!!!!」
「かたじけのう御座います…!!」
「ひひひひ緋真様ぁあぁあ!!!!」

みんな嬉しい様子で酔いも冷めて感動してくれていた。つららには水色と白の手袋。
首無は赤と黄色のニット帽。
黒は青と紫のマフラー。
青は青と赤のマフラー。
河童は青と黄色の手袋。
毛倡妓はピンクと白のポンチョ。
神無には、オレンジと黄緑のカーディガン。
彼らにもまた似合っているようで嬉しかった。

「あ、ああぁあぁあありがとうございますうぅう!!この雪女、大事に致しますぅぅうぅ!!!」
「か、感動しすぎだ雪女…。…ですが、ありがとうございます。私も、お嬢から頂いた編物、大事に使わせていただきます」

首無の言葉に思わず笑顔をこぼしていると、突然影が出来た。上を見れば…。

「っ!?」
「おう、なんでぇおめーらも貰ったのか?」
「なんじゃ、自慢しようと思ったのにのう」
「雪女、いい加減泣きやめよ…」

出たよ色気が半端ない三人が…!!
側近の皆は驚きの声をあげて、互いに自分のが素敵だとか自慢してるし…。

「皆お似合いだから…」

ぽつり、と呟いた言葉は乱闘によって掻き消された。

「さて、と…」

紙袋の中を見れば、ポツリと残っている一つの編物。渡す相手はただ一人。

「…喜んで、くれるかなぁ」

喜んで欲しい。嬉しいと言って貰いたい。
ずっと使って欲しい。
楽しみだ、なんて緊張気味なままあたしは愛しい彼を探しにまた広場を後にした。

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