影と日の恋綴り | ナノ
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 彼らのイメージカラー

クリスマス-1

しんしんと雪がちらほらと降り始めた冬。朝起きるのが辛くなっていく中、町の人々は浮き足立っていく。買い物で見かける緑の置物、綺麗に装飾されたイルミネーション。時折店の宣伝で見る赤い恰好の人。
暦は12月。
世間はクリスマスシーズンとなっていた。

「クリスマス…かぁ…」

学校の帰り道、あたしは商店街の賑わっている様子を見てポツリと呟いた。奴良組はとにかくド派出なことが大好き。出入りも何もかも。それは今まで知っていることで、今更ながらなれたようなもの。それは行事でも一緒。昔から生きていた爺や達は南蛮渡来で知った異国の行事にも興味津々で、日本や南蛮関係ねぇ!って、感じでとにかく何か目出度いことがあったら宴だと騒ぐ。
つまり、それはクリスマスでも一緒。
あたしの世界の時でも、漫画の四コマで何か行事か世間でめでたいことがあったら宴をしていたような覚えがある。
つまりは…

「この季節は宴ばっかり…なんだよね…」

部屋は片付けてもすぐに汚くなる始末。ダラけているのか、雑魚寝状態で邪魔だったらありゃしない。思わず今まで見てきた宴を思い出してしまい、あたしは溜息を零した。クリスマスは、あたしも今まで何度もパーティーとかして経験してきた。孤児院の子供たち開いたり、イブは茜雫と一緒に出かけたりして。
けど、今年は違う。

「父さん達と、初めてのクリスマス…」

そう。今年は父さん達と再会して、また「奴良」の姓を貰って、また“奴良緋真”として生きていけることが出来た年。
全てが奴良家に戻って初めてのことばかりで、このクリスマスも同じ。

「記念に、何かあげたい…なぁ…」

今まで出来なかった分、今しないといつするのか分からない。
もしかしたらこれが最初で最後かもしれない。
そう思ってしまい、あたしはその考えを無くして皆に何をあげようか考える。食べ物…は、母さんやつらら達が用意しているし、高級食材ばっか使うからあたしはたぶんいらない。服…は、高いしあたしの所持金的に考えて無理。物…は、皆使わないしもし欲しいの何?って聞いたら絶対に武器やら闘えるものとかいいそうだから却下。

「…駄目だ、全く浮かばない」

嫌なほど家には何かは絶対に揃ってるし、絶対に何かと被ると思う。とはいっても、ほかに何をすればいいのか分からない。

「どうしよう…」

そう思って、再度商店街にある店を見た。靴屋、服屋、雑貨店、本屋その他諸々。
うん、あまりいいのないね。

「あまり費用がかからないで、手軽にできるものないのかなぁ…」

別の場所を探そう、と落胆しつつその場を後にしようとしたその時だった。

「…?」

視界の端で、こじんまりとした店が目に入った。家に帰ろうとしたけど、その店が気になって立ち寄ると…。

「…手芸、店…」

毛糸やビーズで可愛く飾りつけられた手芸店がそこにあった。窓際に吊るされているサンタクロースやトナカイの毛糸で編みこまれた人形。ビーズで作られ、降っているように見える雪結晶。
一瞬でこれらの虜になってしまった。

「編物…」

窓の見える店内には、鮮やかに並べられた毛糸や布生地。季節限定、なんて言葉もかかれているものから、手芸方法の雑誌も置かれていて…。
ふと、秋から冬に移り行く日々を思い出す。

「最近、妙に寒くなって来たのう…」
「そうですねぇ、もう冬に入っちゃいますからねー」
「親父、頭寒くねぇの?」
「黙らんか鯉伴!!親に向かってなんじゃ!お前もこんなんになるんじゃからな!!」
「というか、寒いに関しては何も言わないのか?」
「黙らんか、燈影!!」
「おじいちゃん、お父さん…。でも、本当に寒くなって来たね」
「そうですね…。若、風邪引かないようお気をつけてください!」
「ありがとう、つらら…。今、ちょっと寒いけど」
「…リクオの手、白くなってる…」
「…はぁ、雪女…」
「雪女。リクオ様の手、白くなっていってるぞ」
「え、えぇぇ!!?若ぁ、大丈夫ですか!?」
「これだから雪女って…」
「なんですって、毛娼妓!!」
「…雪女。まず、お前はリクオ様の手を離してから言わぬと意味ないんだが…」
「雪女はリクオ様大好きだからな…。っと、若。そろそろお時間ですぜ」
「え、あ、ホントだ!行ってきます!!」
「あ、待ってリクオ!」
「若ー、きゅうりはー?」
「あ、そうだった!はい、河童」
「ありがとうございます」
「気を付けてね、リクオ、緋真」
「気ィ付けろよー」
「うん、行ってきます!!」
「行ってきます!」


最後らへんはいつもの会話になったけど、冬が近づいていると皆寒そうにしてたなぁ…。それに、毛糸は安いし色んな色もあって綺麗だし…。

「そうだ、編物にしよう!」

頭の中でみんなが編物のマフラーや手袋とかしている光景が浮かんできて、あたしは一人陽気な気分で手芸店の中へと入った。



手芸店で買いたい物を買ったあたしは、そのまま家へと直行した。屋敷では皆居て口々に「おかえり」って言ってくれて、あたしはクリスマスのプレゼントが決まったからとっても嬉しくて満面の笑みで「ただいま」って返した。みんながあたしの表情に驚いたことは知らない。あたしは玄関から自室に駆けつけて、そのまま閉じ篭もった。

「善は急げっていうし♪今日からやっておこう!」

かなり買ったから、紙袋に入れられた毛糸は多色あってどれを誰にするかで迷ってしまう。けど、まずは配色を考えようと思った。

「まずは、爺やから考えよう…」

爺やのイメージカラーといえば、何故だろう一色しか思い浮かばない。若かりし頃のぬらりひょんと、あたしの祖母である珱姫のイメージカラー。

「…これと、これにしよ」

そう呟いて手にとったのが二色の毛糸。どうしよう、爺やの配色は五秒足らずで決まっちゃったよ…。てか、ふつーに決まっちゃったよ…。あっさり決まって嬉しいのやら悲しいのやら…。けど結局はそれを爺やにあげると考えたらうれしいことで…。

「次はお父さん、と…」

爺やにあげる編物と色をメモして、次はお父さんに移る。お父さんのイメージカラーはハイ決定ー。

「これとこれ」

爺やよりもあっという間に決まったその二色。嬉しいけど、これもまた悲しいな、なんて思いながらあたしはリクオ、雪女、青、黒…と、順に、皆にはごめんけど、親と側近達にあげる編物と色を決めていった。

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