影と日の恋綴り | ナノ
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 迷子になったのは

夏祭り-1


「あれ?」

父さん?母さん?



今日は地元の夏祭りが開催されていた。その夏祭りに家族で行くことになって、母さんに浴衣を着せて貰って、父さんと母さんとリクオや皆で会場に来た。皆でわいわい騒いで、花火を見る場所を探して、カキ氷や綿菓子食べたいとか言って、出店の方に向かったのはついさっき。
え?あたしって迷子?

「えー……」

この歳(精神年齢××歳)のクセに迷子ってどうなんだ。自分の阿呆さに呆れてしまいつい溜息を零す。周りから見れば子供のクセに溜息を零すのは驚き以上のことだと思う。でも、このままのわけにはいかない。

「うー…」

まずはこの人込みから出なければ。
130cmにも満たない子供がこんな所に居れば、そりゃ子供にとっては大人は怪物のように見えるから泣いてしまうのが当たり前だ。けど私の場合は人込みが嫌いだから早く出たい。
キョロキョロと四方を見渡して、人込みから抜けれるところを探す。すると東の方に店と店の間に通路があって、その周りには誰も歩いていないからそこに行こうと判断して即行動する。流れる人込みを避けて通るのは、けっこう上手いほうだからすいすい抜けられて、そのまま人があまり居ないほうへと着く。

「ふぅ……」
「あっれ〜?こんな所に子供が居るぜ〜?」
「!」

酸素が薄い場所から抜けられて、小さく深呼吸をしていると、頭上から男の声が。どう聞こえてもチャラい人の声で、思い切り顔を上げた。
そこには…、

「っ、」

大当たり、一等賞を上げたいくらいです。と、言いたいくらい見事当たった。でも、不良は一人じゃなくて、四、五人の人たちで。うん、嫌な予感がかなりした。

「ぁ、あの……」
「ひゅ〜♪餓鬼な割に結構可愛いじゃん?」
「おいおい、それロリコン発言だぜ〜」
「変な性癖じゃねぇんだから、そんな事言うんじゃねぇよバーカ」
「っ…!」

そんな事を言っているお前等は既にロリコンだよ!!とつい突っ込みたくなったけど、あえて我慢。じゃないと、キレられて暴力を振るわれる。それだけはマジで勘弁。

「ご、ごめんなさ…!」
「おっと!そう逃げなくてもいいよ〜。お嬢ちゃん、迷子だろう?お兄ちゃん達がお父さん達を探してあげるよ」
「っ!や!だいじょーぶだから!ありがとーございます!」

くるり、と方向転換してさっさと逃げようとする前に不良さんに抱っこされました。
やだ!!煙草臭い!!酒臭い!!気持ち悪い!!
生理的な涙が出そうになって本当に嫌だ。じたばた暴れても、不良さんには効果なくてただ「はいはい、安心しなって〜」って、嘘丸見えのセリフを言った。じわり、と涙が目に溜まってきた。

「おいおい、泣きそうになってんじゃねぇか!お前、顔がキモいから嫌がられてんだって!!」
「んなワケねーよ!つーか、この餓鬼からなんかイイ匂いがすんだけど…」
「っ!!ぃや!!」
「ギャハハハッ!!お前マジでロリコンだよ!!つーか、変態にいってんじゃねぇの!?」

香水も何もつけてないよ私は!?拒絶したのに、頭を押しているのに、やっぱり大人と子供の力じゃ不良の方が圧倒的でだんだん顔が近づいてきた。

「お嬢ちゃん、安心しなって。何も怖いことなんてないからさ」
「ゃ…やぁ…」
「あ、やべ。マジで今のキた」
「うわッ!!こいつマジで変態だー!!!」

周りの不良はギャハハハ笑って、仲間を止めることなくただ傍観していた、あたしがどうすることも出来ないのを面白がっていて…。涙が目尻に溜まってきた。
もぅ…いやだぁ…。

「ぅう…。と、さ…ひ、え…」

助けて、助けて…怖い、恐い…。此処に居るはずもない人たちの名前を言った。
その時だった。

「よぉ、テメーら。ずいぶんと、面白ぇことしてんじゃねぇの」
「あ?げふっ!!」
「おい貴様、今すぐその娘から離れろ」
「ンだとぉ…?ぐぼぉう!!!」

気持ち悪い顔が一気に遠ざかった気配が分かった。そのままあたしは何か温かいものに包まれたのが分かった。
そこから分かった気配が…。

「おと、さ……」

会いたくて会いたくてたまらなかった自分の父親。
ツゥ、と安心して涙が一筋流れた。

「…、…てめーら、後は頼むぜ」
「任せろ、鯉伴。お前は緋真を頼むぞ」
「任せて下せぇ、二代目!!」
「この黒田坊の名において」
「命に代えても」
「おいおい、それは言い過ぎだ」

父さんだけじゃなかった。燈影や青、黒に首無まで。どうしてここに。何が起きているのか分からないまま、あたしは父さんに抱っこされたままその場を後にした。でも、

「っ…」

彼らがあたしのヒーローになってくれたのは分かった。

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