影と日の恋綴り | ナノ
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 秘められたもの

「“操影”」
「ぎゃああああ!!」
「やめろォォ!!」
「貴様らは俺の操り人形となり、仲間を殺せばよい」
「っ燈影!!」
「!緋真…!?」

上の方で闘っていた燈影の元までたどり着く事が出来た。影を操り殺す燈影は今最強とも言っていいんじゃないのかなって思うくらい、敵なしだった。
あたしが声を掛けたことに驚いた燈影は、京妖怪を相打ちにさせていた技をやめて、一瞬で葬った。その素早さにすごいと思いつつ歩み寄れば、目の前に一瞬できた燈影。
ごめん、かなりびっくりした。

「何故お前が此処に…!?」
「俺が連れてきたんだわ」
「!…鯉伴、お前…!」
「違うの、燈影!あたしが行きたいって言ったの!!」

お父さんが傍に立っているのに気付いて燈影の怒りの矛先がお父さんに向いたのが分かった。慌てて弁解するけれど、納得いかない表情。しかしそれは一瞬。

「“斬影”」
「グワァ!!」
「ヒュー…流石だねぇ」
「戯言を」

あたしとお父さんの背後から襲い掛かってきた京妖怪を一瞬で影で作った大鎌で倒す。その際、当たり前のようにあたしを腕の中に閉じ込めて守る姿はなんなのだろうか。
カッコ良すぎだってば。

「緋真、大丈夫か?」
「…燈影ずるい」
「?」

絶対に顔が赤くて、見られたくなくて自分から抱きついてしまった。その理由に気付かない、少し鈍感な燈影はあたしが怖い思いをしてしまったのだと勘違いして、背中を優しく撫でてくれた。

「緋真、本当にリクオのもとへ向かうのか?」
「うん。なにができるか分からない。足手纏いかもしれないけど、あの子の傍に行かなくちゃだめ」

辛くて悲しい真実が待っていたとしても。

「それに、あそこの近くには神無もいるぜ」
「!?神無がだと!」
「あ、それはあたしが命令したから…!自分がすべきことを優先してって…!」

自分の部下である神無が側近としての役目を果たしていないと思った燈影が声を荒げたから、慌てて理由を話す。それでも自分がすべきことはあたしを護る事だろう、と燈影は怒っているけど、あたしは自分の身は自分で守れる。だから、神無に行かせたんだ。

「神無はきっと、自分が何をしたらいいのか悩んでいるから…」
「…」

あたしの言葉に燈影は考えるが、すぐにやめてあたしをそっと横抱きする。
うん、待って、当たり前のようにするのやめよ。

「ひえ…!?」
「鯉伴、上に行くのだろう?急ぐぞ」
「おま、さも当然のようにそれをするのやめろよ…」
「ふん」

お父さんにそう言って、燈影はあたしをそのまま上へと向かったのだった。京妖怪が行かせないようにとあたし達を阻むけれど、お父さんや燈影は雑魚に用はないと言わんばかりに瞬殺。

「緋真、しっかりつかまっていろ」
「…うん!」

結局貴方に守られる。謝りたい気持ちが大きい。
でも、貴方はそれが当然だと思っている。

「…燈影」
「なんだ?」
「…ありがとう」

周りが騒々しい中、消えそうな声で言ったあたしの言葉。燈影は目を丸くしたかと思えば、優しい眼差しであたしを見てくれた。

「…当然の事をしているだけだ」

ほら、貴方はそう言うんだ。

「だから、ずるい…」

また貴方を好きになる。



(神無side)

「リクオ様…」

緋真様の命令で動いた私が向かったのは、花開院達のもとだった。別に助けを求められたわけじゃない。けれど、身体がこちらへ行けというのだ。
自分のすべきことを優先しろ。
全く、私の主はお見通しのようで。

「オレ達はどうしたらいい?」

リクオ様と羽衣狐の戦いに巻き込まれないような場所で、戦いを見届けている十三代目秀元に降りた竜二さん。それに付き添うようにして私も歩み寄る。
ゆらさんは魔魅流さんと共に、リクオのもとへ向かわせた。魔魅流さんの様子だと、ゆらさんを絶対に守る事が使命となっているのだろう。
陰陽師の中でも中々に酷な事をしているように思った。

「裏技とかねーのかい。十三代目ェ、あんたの封印だろ」
「そんなもんなーいどすえよ」
「ハ…、…破られたあとはその時代の人間任せか。そりゃそうか。まぁ死人に任せっきりじゃな」
「竜二さん…」
「あとはオレたちの仕事だ…」

自分に背を向けた竜二さんに十三代目は言った。

「結局、羽衣狐の動きを止めて、退魔の祢々切丸を届かせんかったら何にもならん闘いや。だからこのままリクオ君を一人で闘わせていたらアカンよ。必ず陰陽師が協力せなアカン」
「…わかってるよ」
「ならええんや」

その言葉に少しだけ安心したのは事実。
話し込んでいる二人をよそに、衝撃波が届かないように結界を二重に貼っておく。そしてリクオ様と闘っている羽衣狐へと目を向ける。

「……」

この目で見た羽衣狐の容姿。
間違えるはずがなかった。見間違える事などしなかった。

「神無、一緒に寺子屋へ行きましょ?」

油断すれば、眼から零れ落ちそうになる。

「どうして、なの…?」

ねぇ、どうして貴方がいるのかしら…?

「…乙女…」

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