影と日の恋綴り | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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 聞きたい事

(リクオside)

間一髪だった。黒田坊を鬼纏ったまま竜二を助けることに安堵したのも束の間、ようやく会えた羽衣狐の顔を拝めた瞬間、形容しがてぇ気持ちがこみ上げてきた。
羽衣狐の顔をオレは知っている。
あの日、桜が舞う中に出会った一人の少女。

「お姉ちゃん誰?」

頬に血をつけ、静かに嗤う少女が重なる。

「そこにいるのは…」

お前だったのかよ。

「お前が、姉さんの敵だ羽衣狐!!」

あの日、一緒に遊んでくれた少女だった奴が姉さんを殺した。本当だったら、親父を殺そうとしたっていうのは分かっている。
それを、姉さんが身を捨ててまで阻止した。
姉さんが何の因果があってか分からねぇが転生して、俺達と巡り合えた事は喜ばしいことかもしれねぇ。けど、本当だったら、姉さんは死なずに俺や親父や母さん、奴良組の奴等と一緒に過ごすことが出来たかもしれないんだ。
それをこの女が、羽衣狐が壊した。

「その顔…ぬらりひょん!!また妾の邪魔をするのか!!」

羽衣狐の攻撃がきた。竜二を捕えていた尾も全てが俺に向けられたが、それを難なく防ぎ、距離を置いた。それによって、ちゃんと羽衣狐を見る事が出来た。
どう見ても、あの日俺と姉さんと遊んでくれた少女で、姉さんを刺した奴。
けど、あの時コイツは一人だけじゃなかったはずだ。
どういうことだ。と疑惑の念が渦巻く中、俺を見た羽衣狐が眉間に皺を寄せる。
羽衣狐の中では、ある言葉が浮かんでいた。

「緋真のケジメ…、てめぇの野望ごと、ワシの若頭が取りにくるからな」

「うり二つじゃな…。憎たらしい“顔”。なぜ貴様らの血は妖上位の世界を造るのを邪魔をする…!!妾は…それが理解できん」

その言葉はつまり、邪魔するものは殺すって言っていたように思えた。
てめぇの宿願をジジイの時に邪魔され、それからも邪魔され続けていた。親父もきっと邪魔してきたんだろう。
だから、親父を殺そうとした。けど、それは出来なかった。

「だから…親父を殺そうとして、姉さんを殺したのか。あの時、桜の散るあの場所で…」

餓鬼の頃は忘れていたが、だんだんと思い出すあの日の事。
親父の腕の中でぐたり、と力なく抱かれている姉さん。

「…!?何を言うておる…?」

その言葉に羽衣狐があの日の事を覚えていないってのが分かった。やっぱり、羽衣狐じゃねぇ誰かが親父を殺そうとしたのか?
けど、姉さんも親父も、あの日羽衣狐と会ったんだ。覚えてない理由は知らねぇ。けど、姉さんを殺したのはコイツなんだ。

「よぉ。お互い因縁がある者同士だろ?ちゃっちゃとやりゃいいだろう。いいぜぇ…。鵺のおもりはオレがやってやるよ…。だからぞんぶんにやりあえや。四百年前、あのときと違ってな…」
「…言われんでも、わかっておる」

楽しそうな声色の土蜘蛛を横目に、俺も羽衣狐も構えた。いつの間に撮り出したのか分からねぇでっけぇ鉄扇で足場を崩される。ゆらもいたが、大丈夫か。ちらりと一瞥すりゃあ、なんとか生きているようだった。
アイツ体力つけとけよ。

「…これは、妾が平家にいた頃のもの。“二尾の鉄扇”。にっくきぬらりひょんの血、根だやしにしてくれようぞ」

鋭い眼光に怖気ずくわけもなく、俺も睨みつける。すると、竜二も同じ足場に来たのか、俺に声をかける。

「助けられたカッコになっちまったな。一応礼は言っとくぞ」
「竜二。それに、神無まで…!」
「リクオ様、ご無事で何よりです」

竜二の傍にいたのは奴良組の神無だった。思わず素で目を丸くした。神無は姉さんの側近だ。なのに、なんで此処に居るんだ?
思わず訝し気に見た俺に神無はにこり、と笑って言った。

「緋真様から、自分がしたいように動けと言われたので」
「!…そうかよ」

つまり、姉さんの命令で自由に動いているのか。それが、陰陽師達の護衛で、神無がしたい事だってワケか。
ったく、姉さんも粋なことをするじゃねぇか。

「ハ…鵺だけ封印すりゃーあとは高みの見物の予定だったんだがな…。妖怪同士相打ちになってバンバンザイってつもりだったんだが…」
「相変わらず、…お前喰えねぇ奴だな」
「どーやって倒す気でいる、奴良リクオ。四百年前より奴は強くなっているぞ…」

俺の嫌味を無視した挙句聞いた竜二。
どうやってだ?なに言ってやがる。

「なんとしても祢々切丸を届かせるさ」

そうもしねぇと、話にならないだろ。

「…どのみち倒せるかどうかやってみなきゃわからねぇ。やりあうしかねぇだろ…」

知りたい事が山ほどあって、それを全部アイツに聞きてぇんだからな。
竜二にそう言って、俺は羽衣狐に向かって刃を降ろす。

「千本の刃か…、鬼童丸を倒したのもうなずける…」

自分の尾や鉄扇で防ぎ言う羽衣狐。一閃、羽衣狐の尾が大きく振り、黒田坊との鬼纏の武器を破壊された。

「だが自慢の刃も妾には届かん」
「…く…」

刃が容易く壊される。これじゃ駄目って事ァ、どうすりゃあいい…!
悩む俺の頭の中に声が響いた。

“リクオ様”
「!!黒…」

それは俺が今鬼纏っている黒田坊の声だった。

“リクオ様、これでは埒が明きません。なんとか隙を作って懐に入らねば…”
「隙を…作るって、どうやって……」
“畏砲を……、拙僧を畏砲として放つのです”
「!!」
“私がやつの九尾全てにぶつかってゆく。そのスキに祢々切丸をやつの本体に届けて下さい”

そう言った黒田坊の目はやる気だった。
オイオイ、ンな強い目で言われて断る奴なんかいねぇだろ。

「わかった。やってみるか……」

刃を届かせるにはこれしかなかった。

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