影と日の恋綴り | ナノ
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 影法師の帰還

リクオ達が先へ行き、あたしとお父さんはその後を追う。リクオの百鬼夜行がどんなものか、この目で見ることが出来る。
それが嬉しくて嬉しくてたまらない。
弐條城の玄関を堂々と通り中へ入ろうとするけれど、そこでも京妖怪達が待ち受ける。斬っては倒すという繰り返しの中、リクオは前へと進む。立派に成長した弟に姉は誇りに思う。
その時だった。

「どうやら、あれから成長したようだな」
「!」

懐かしいと感じてしまうその声に、皆が驚く。瞬間、辺り一面真っ暗になった。かと思えば、それは数秒程度だった。けど景色が変わっていた。さっきまで弐條城の外だったのに、今は弐條城の中へ入っていたから。
どういうことだと、驚く遠野達とは違い奴良組の皆は安堵の息を吐く。リクオは祢々切丸を肩に置き、何処にいるのか分からない彼に向かって笑い言う。

「オメーには失望させちまって悪かったな」
「フン。ならば今後一切、無様な姿を晒すなよ」
「分ぁーってるって。…待たせちまって悪かった」

燈影。
リクオが名を呼べば、ゆらりと影が踊る。リクオの影は二つできていたけど、その一つは違った。姿を現し見せたのは、影法師の、

「っ、燈影っ…!」

あたしの最愛の人。
燈影はあたしを一瞥し、リクオに目を向ける。リクオも燈影から目を逸らさずにいて、なんだか剣呑な雰囲気だった。まるで今から刃を交えそうな二人にあたし達はただ見る事しか出来なかった。
数秒、数分経って先に笑ったのは燈影だった。

「ふっ…まだまだだが、牛鬼の修行を済ませ土蜘蛛に怪我を負わせたのは確かなのだな」
「…もう百鬼を壊させやしねぇ」
「その言葉、嘘偽りでないことを願おう」

そう言って燈影はリクオから視線を外し、今度は、

「緋真」

あたしを見た。

「っ…ひ、え…」

ゆっくりと歩み寄る彼になんだか涙が出そうになる。土蜘蛛の時に、あたしを庇った。怒りで土蜘蛛に攻撃した。負けて、奴良組に失望し去った。
リクオにあれだけ信じてるだの言ってたクセに、泣きそうになるなんてなんなんだろう。それでも我慢出来なくて、あたしも歩を進めて燈影の胸へ飛び込んだ。

「ひえ、燈影…!!」
「緋真…」

会いたかった。顔が見たかった。無事で良かった。
戻ってきてくれて嬉しい。

「不甲斐ない姿を見せて、すまなかった…」
「ううんっ、あたしこそ…!あたしなんか庇って、燈影はっ…!」
「…愛しい者を守らない男など、下衆だ。俺は、当然のことをしただけだ」
「っ…」

それ以上言わないで。カッコよすぎて顔みたいのに直視できない。きっと顔赤いや、今。
すると、

「テメェ、燈影…なに姉さんを抱きしめてやがる!」
「!」
「…なんだ、ヤキモチか?リクオ」

ガバ、と間に入ってきた弟によって燈影と離される。驚くあたしとは違い、燈影は余裕の笑みを浮かべてリクオを挑発する。そんな燈影にカチンときたリクオは米神をピクピクさせながら燈影の挑発に買っちゃった。
あらら…リクオってばもう…。

「上等だ。たたっ斬ってやる!!」
「ふっ、してみろ若頭よ」
「このっ…許さねぇ!」

完璧に遊ばれてるよリクオ…。微笑ましく見てる皆もきっとそう思ってるはずだろう。お父さんも笑って「燈影にからかわれてらァ」て言ってるもの。リクオが祢々切丸を振り回してるのに燈影は影に逃げたりして、まるでもぐら叩きだった。

「…さてリクオ」
「?」
「ここからが、死闘の始まりだ」
「……」
「生きろ。緋真を悲しませるな」
「…言われなくても。姉さんは、俺の百鬼は、俺が守る」

あ、けどお前らの力も俺に貸せよ。
そう言ったリクオはたしかに成長してて。燈影は一瞬目を丸くしたけどすぐに笑ったのだった。

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