▼ 弐條城へ…!!
京妖怪達の今までのやり方に怒りを覚えたものの、どうやって戦えばいいのかが分からない。心を無にして戦うことなど、リクオにはとうてい出来なかった。その時だった。
「奴良くん!!」
「ゆら!」
貪狼に乗ったゆらと秀元が遅れてやって来た。鬼一口がゆらに向かって口を開けようとしたが、サトリはそれを制す。
「あれには“直情型の意志”を感じる。何も考えずに、“人型の式を飛ばす”ぞ。よけられい」
鬼一口に命令し、空中へと逃げたサトリ。同時にゆらが式神である武曲を召喚したが、敵はすでに頭上へ逃げていた。
「なんのことはない。こういう“直情型”が一番やりやすいものだ」
声に気付き、ゆらが振り返る間もなく鬼一口が口を開けゆらを喰らおうとした。間一髪避けたものの、服は食われ貪狼から落とされる。
「ガハッ」
「ゆらちゃん!!」
「ゆら!!気をつけろ、そいつは心を読む妖怪だ!」
「?!」
「“覚”か!!無闇矢鱈に攻撃してもスキをついてくる…慎重にいかなアカン!」
リクオと秀元の言葉にゆらは動きが止まってしまう。慎重に攻撃をするといっても言われても難しいものだ。加え、ゆらは頭で考えるのは苦手である。こういうのは竜二が得意だろう。どうすればいいのか、どう攻撃したらいいのか。迷うゆらにサトリは笑う。
「惑うておるな。それもまた“意思”だ」
「いかんなー」
背後から鬼一口が口を開ける。秀元が気付き名を呼ぶが、ゆらは惑っていたことで身体が後れを取ってしまった。
「ハハハハ、今度は惑うて動けぬか。単純だな、おぬし」
食われる瞬間、ゆらを助けたのは式神だった。自分の式に礼をいい、慌てて離れたゆら。そんな彼女の心をサトリは読み取り始めた。
「ち…。ふむ、花開院ゆら…か。なるほど、その若さで陰陽師…とな。……ほう?そうかいそうかい。ワシらの仲間に、じいちゃんが殺されて激昂気味か。まぁ…あんなおいぼれではやられて当然だがなぁ」
その言葉にゆらは動きを止めた。
気付かず、サトリは続ける。
「才ある者か。多少貧相だが羽衣狐様にささげることにしようかの…」
「ゆらちゃん、おちついてな。冷静さ失ったら思うつぼやで」
冷静さを失わせる魂胆に気付き秀元がゆらを落ち着かせようと肩に手を置く。瞬間、焼かれたようにジュワ、と音がする。
「ゆら…ちゃん…?」
普段の表情とは一変。ゆらは修羅となっていた。
「好きかって言いよって…」
人式融合の式神、全て式神を召喚し、ゆらは殺気を露わにした。
「あんたらもう、絶対許さへん」
貪狼の背に乗り、構える。
「地獄に、いねや」
さきほどとは違うゆらの様子にサトリは心を読む。
「…ふむ。“全式神突進!!完全に滅したる。ちりひとつ残らずな…”。……え?」
同時だった。
ゆらに命じられた式神サトリと鬼一口に向かって掛けていく。貪狼に乗ったゆらも、黄泉送ゆらMAXを何度も放る。
「こ、これはいかん!よ…読むどころではないわー!」
慌てて門へと逃げるサトリと鬼一口。この状況下でのゆらの気持ちはただ一つ。ゆらを怒らせた事が、彼らの敗因であろう。
門より離れたところで京妖怪と戦っていた首無たちは目を丸くする。火柱なのか、水柱なのか分からないものが何度も吹き上げ、巨大な獣があばれているその光景はさながらゴ○ラ。
「あらあら…陰陽師娘ったらどうしたのかしら…」
気配を読み、この騒動の犯人にゆらと気付いた神無は敵を一掃しながらのほほんといった口調で呟いた。
サトリと鬼一口は攻撃を避けながらも逃げまどっていた。さきほどとは一変したゆらに、妖怪が畏れたのだった。情けない分、滑稽だと思ったのは妖怪の主。
「やれやれ…あいつとんでもねぇな」
「!!」
後ろには式神。そして前には、
「うかうかしてると、こっちまで消されちまいそうだ…」
刀を手にしたリクオがいた。
「ま…っ待ってくれ!!」
「お前、心が読めるんだろ…!?じゃあ、もう覚悟はできてるな…?」
一刀両断。雷の如く、リクオは鬼一口とサトリを祢々切丸で斬ったのだった。その骸は見事、門を破壊してくれた。祢々切丸を軽く振り、血を落とす。そして肩に置いて、ゆらに笑みを溢した。
「考えたな。ああすりゃ、心が読めても関係ねぇな」
「………、え?」
「すごいやんか二人とも〜」
リクオと秀元に褒めれらたゆらだが、無我夢中でしていたのか、それともサトリの言葉で怒りで我を失っていたからかあまり覚えてなかった。それを気付かれないように、ゆらは作戦のうちだと豪語した。
すると、背後から奴良組の妖怪達が遅れてやって来た。
「リクオ様!」
「何ですか今の爆発!!」
「こ…こりゃすげぇ」
「爆発でも行う妖怪でも出たのか」
「リクオ様、よくぞごぶじで」
リクオを心配する部下達にリクオは答えながらも、前へと目を向ける。暗雲が立ちめき、渦を巻いている弐條城。門番を倒した以上、進以外の道はない。
「よっしゃ行くぜ。目指すは羽衣狐が待つ鵺ヶ池だ!!」
意気込む大将に部下も続けた。
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