影と日の恋綴り | ナノ
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 昔と同じように

自分達の前に現れた陰陽師である花開院ゆらと式神である秀元に、首無は今起きている出来事が頭の中で整理することが出来ずにいた。秀元の言い方に、首無は自分達は封印するために利用されたように思えたのもあったからだ。

「黄泉送水鉄砲ー!」

式神融合し鬼道丸へ攻撃を放ったゆら。しかし、あっけなく術は鬼道丸の剣術により防がれた。

「お前が“術者”か」
「くっ…ゆらMAX!!ゆらMAX!!」

鬼道丸に畏れながらも怯まず術を放つゆらだったが、鬼道丸の前では通じるはずがなかった。

神速剣戟“梅木”

梅の如く目にもとまらぬ速さで剣を振り連続で攻撃を放つ剣技に、ゆらの攻撃は次第と追いつかなくなって、

「フン!!」
「アグエッ」

片手で両頬を掴まれ足を離されたのだった。

「なるほど…お前がな…」
「ぐ…は…はなしぇ…」

暴れるゆらを何とも思わない鬼道丸。

「ウム…、羽衣狐様への生き胆としてささげてやる。さぞや珍妙な味がしよう!!」

それどころかゆらを羽衣狐のもとへ連れて行こうとしていたのだった。それには流石のゆらも目を見張る。自分の生き胆が京の大妖怪に喰われるなど言語道断。それだけは絶対に嫌だった。
逃げようとも逃げないこの状況。
その時だった。

「走れ言言」

呟くように聞こえた言葉。その言葉の命に従い、鬼道丸の背後にあった封印の木の杭のそのまた後ろから何かが鬼道丸を襲った。瞬時に反応し、ゆらを手放して刀で防ごうとしたが触れた瞬間に弾け飛んだ。

「ムッ…(なんだ…これは…“水”か?)」

ビショビショになった自分の身体。ただの水にも思える液体に、鬼道丸は不審に思うだけ。
一方、ゆらをギリギリのところで助けたのは彼女の兄である竜二だった。

「うーん…もうちょっと早いタイミングでもよかったかな。どうも骨折がヒビいてな…。しかしゆら、演技が下手すぎてドキドキしたぞ」
「ゲフガフ…わざとやろ!」

塀の上で佇む竜二に、ゆらは咳き込みつつもそうツッコミを入れた。ゆらのツッコミに反応を示さずまま、竜二は次の命を告げた。

「やれ、魔魅流」

その言葉に即座に反応し、鬼道丸の背後で待機していた魔魅流は飛び出した。水に気を取られていながらも、鬼道丸は魔魅流に反応し刀で防ぐ。しかし、魔魅流の手から刀に伝わる電気に、何かがあると警戒を強めた。

「よしよし。よーく学んだな…………。“水”と“電気”だ。魔魅流…、えんりょはいらん…。ヤレ」

水と電気。本来より、電気、つまりは雷は水に強いとされ、相性は抜群のもの。
水を被った鬼道丸の身体に電気を通せばどうなるのかは、目に見えて分かった。

「これぞ三兄妹。式神融合・滅」

魔魅流の手から放たれた雷が鬼道丸を襲った。
その光景を横目に見ていた茨木童子は、馬鹿にするような挑発する口調で言った。

「おいおい。やられてんじゃーねぇカァァ鬼道丸ゥゥゥ」

その背後から放たれた無数の武器。二刀で防いだ茨木童子に声を掛ける者。

「お前はこの黒田坊がお相手しよう。人のことを心配できる立場ではないぞ」
「ああん?」

茨木童子の相手をするのは黒田坊だった。各々で戦いを繰り広げる中、首無と毛倡妓のもとに寄ってきたのは河童だった。

「オイラここキライだ。砂地は苦手だよっ」

無理やりに近い行いで首無と毛倡妓を連れ去る河童。懐に忍ばせていた竹の筒を取り出し、技を出す。

「河童忍法・通り抜け忍び池」

ばれずに忍んで逃げようとした河童たちに、茨木童子の部下の鬼たちが追いかける。

「おおい!!」
「こら待てぇ」

しかしそう簡単に捕まるような妖怪ではない。

「ミ☆ズ☆チ☆玉☆」

小型の水球を連続で放つ技を繰り広げた河童はそのまま自身も水の中へと入って行ったのだった。

「待ちやがれェ!!」

それでも追いかけようとする一人の鬼。別の鬼が制止しようと声をかける際、瞬きを一回したその瞬間、河童たちを追いかけようとした鬼が消えたのだった。

「な…!?」
「消え…!?」
「神隠し・天朧黄泉送」

ふわりと風に靡いて揺れる朧が、鬼たちに触れる。その瞬間、瞬く間に鬼たちの姿は消えたのだった。

「…さあ、あの世とこの世の境へ誘ってさしあげましょう」

ふわり、と何処からと現れたのは神無。
今ここに、奴良組と花開院が京妖怪の前に立つ。

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