影と日の恋綴り | ナノ
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 神隠しの御業

柱離宮を後にした神無達は、次の封印場所へと向かっていた。

「神無、首無は一人で行っているのか?!」
「いいえ。毛倡妓を行かせてるわ。彼女なら、首無を止めてくれるはずだもの」

京都の中心で溢れ始める怨念の気。最後の封印が解かれたのは神無達も瞬時に分かった。

「急がなければならないわね…」

京都の各地で聞こえる甲高い悲鳴と京妖怪達の気配。自由にやりたい放題の京妖怪を前に、神無達は倒しながらも次の封印場所へと急ぎ走る。その理由はいわずもがな、仲間と大事な総大将が帰ってくる場所を守る為。

「!見ろ!二條の城が!」
「!」

誰かが叫び言った。皆が足を止め見上げれば、怨念の積柱が巻き起こる中そびえ立つ二條の城。
あの場所に羽衣狐がいる。

「最後の封印が解けてしもうたんやな」

ぽつりと秀元が呟いた。それに同意したのは神無で、苦渋の色を浮かべる。こうして花開院家陰陽師達と行動しているけれど、今の神無達は仲間の事が心配が仕方がない。
その時だった。

「!」
「?どうしたんだ、神無」

反射的に神無が京都の中心から視線を変える。彼女に気付き黒田坊がそう訊ねると、神無は心底まずいと言わんばかりの顔で呟いた。

「首無と毛倡妓の前にとても強い妖気を感じたわ」
「!」
「…きっと、いいえ、おそらく京妖怪の幹部…。まずいわ、二人が危ない…!」

神隠しである神無は空間を行き来する事が出来る妖。そして空間を自在に操ることもでき、彼女の広げた領域範囲の中では気配を察知する事も出来るのだった。
神無の言葉に黒田坊と河童は顔色を変える。

「っ急ぐぞ!」

黒田坊は我慢できずそう言って、柱離宮へと駆けていく。彼の後に続き、神無や河童も向かう。
ふと、河童が神無に言った。

「なぁ、神無」
「何?」
「お前の畏ですぐに行くこと出来るんじゃね?」

その言葉に神無は目を丸くした。そしてすぐに何かを閃いたのか、走りながら言った。

「黒!」
「なんだ」
「貴方と陰陽師達を連れて行く!それと河童も!」
「!」

神無の言葉に驚いたのは黒田坊だけではなく、陰陽師達もだった。彼女の言い方にもあったか、その方法が気になったのだ。
しかし、黒田坊はすぐに理解し神無に「頼んだ」と言う。理解せず、どういう意味だとゆらが神無に問うが、答える時間がないようで…。

「納豆小僧、貴方方は京妖怪達を倒しながら進みなさい!いいわね!」
「か、神無様ァ!?」

口早にそう告げて、神無は自身の衣服に繋げ身につけている一枚の札を手にする。そして口にくわえ、小さく息を吹きかけた。

「神隠し・遊空」

その瞬間、神無と黒田坊、河童、そして陰陽師達は姿を消したのだった。

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