影と日の恋綴り | ナノ
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 存在の偉大さ

(神無side)

鯉伴様が緋真様を連れ去ってから、私はこの状況をどう打破しようかと考えていた。奴良組の士気は格段に下がっている。リクオ様も燈影様も緋真様も居ないこの状況で、緋真様の側近である私が何を言えばいいのか分からない。
そもそも出しゃばるわけにはいかないだろう…。
とりあえず、黒田坊たちと話し合うことから始めようと思っていた時だった。

「はいはい。さー封印に行くでー」

十三代目陰陽師が指揮を取ろうとしているのか、奴良組の皆にそう言った。

「状況は何も変わってへんでー!!土蜘蛛に出会ったのは運が悪かったと思って!!進むでー」
「……」

十三代目陰陽師の言葉に、誰も反応しなかった。

「あれ。元気がないぞ?」

不思議そうな表情をしている十三代目陰陽師に、納豆小僧達は白けた目をして言った。

「…バカにしてんのか?」
「こんな状況で共闘できるかよ」

納豆小僧達の言葉に、表情を一切無くした十三代目陰陽師。

「なんで陰陽師だ」
「第一リクオ様がいねェ。闘う理由なんかねーんだよオレら!」

そう。
私達はリクオ様について来た。リクオ様の百鬼夜行だ。
その大将が今不在のこの状況で、何故本来敵である陰陽師と協力しなくてはならないのか。
そう考えてしまうのも無理はない。
けれど、

「ホラ!!何やってんのみんな!!」
「ぐちぐち言う余裕があるなら怪我は大丈夫だと解釈させてもらうわよ」
「お?」
「毛倡妓…?」
「姐さん!」
「神無様!」

私と毛倡妓に圧され、驚く納豆小僧達。
そう。ここでうじうじしている暇など無いのだ。

「さー行くよみんな!!リクオ様の百鬼はオレが守んだって気持ちを見せてちょーだい!!」
「毛倡妓の言う通りよ。大将が居ないからオレ達は何も出来ませんっていう、みっともない妖怪に成り下がるのはおやめなさいよ」

これ以上奴良組が崩れてはならない。ちゃんと保たなければ。
せめて、大将が帰ってくるまで。

「リクオ様が居なくてもオレ達奴良組を舐めるなって言えるでしょう?大将がいないと何も出来ない、なんて奴良組に泥を塗りたくないでしょう」
「神無の言う通りよ!ほら、さっさとする!」
「へー。あんな娘達いるんや」

私と毛倡妓に関心する十三代目陰陽師を放って、そのまま遠野勢の方へ目を向けた。

「ほら、遠野勢も……」
「……オレ達は自分で行く。悪いが別行動だ」
「分かりました。ならば、ご自由に」

彼らはリクオ様と盃を交わしたわけでもない。ならば、素直に従う理由は存在しない。遠野勢にまで言うことは出来ないと判断したのか毛倡妓は今後の指揮をとるための大将を首無に頼もうとした。
しかし、

「………首無?」

彼の姿は何処にも見当たらなかった。
一人で行ったのか、そうだとしても何処へ向かったのか。どちらにしても、

「毛倡妓」
「神無…?」
「お行きなさい。このまま首無を一人にさせてはいけない」
「!」

私の言葉に嫌な予感が走ったのか、毛倡妓は素直に首無が去って行っただろう方向へ走り去って行った。

「私達も行きましょう。此処にずっと滞在するわけにはいかないから」
「……そうだな」
「神無やるねー」
「いいから。……怪我人の状況はどうなの?」

辺りを見渡し、私は尋ねる。と、黒田坊が答えてくれた。

「重傷だと思う者は宝船に行かせるつもりだ。今は薬師一派の者達に見せてもらっているが、まだ時間はかかるだろう」
「そう…。…ここの妖気は既に晴れている。京妖怪がここに来る確率は低いはず」
「怪我をしている者は休息させる、ということか?」

察しが良いようで、黒田坊の言葉に私は頷いた。

「後で来てもらうなりしてもらう。奴良組の者ならそれくらい分かるはずよ。陰陽師と同行するのは些か不満かもしれないけど、時間が経てばなれてくるはずよ」
「…妙に神無が手綱を握ってる気がする…」
「奇遇だな、河童。拙僧も思ってしまったよ」

二人が何か言ってるけど、今は無視してあげるとしよう。

「ほらっ、いつまでも座り込んでないで行くわよ」

リクオ様、燈影様、緋真様。
大将無き奴良組には覇気が全くございません。
頼もしい味方無き奴良組は不安を抱えております。
太陽のような存在無き奴良組は明るさを無くしています。
ですが、私達も頑張ります。
貴方様方が帰ってきたとき、少しは成長しておくように私達は前に進みます。

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