影と日の恋綴り | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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 会えた喜びを

その瞬間だった。

パシーンッ!!

「!?」
「あ!」
「……ぁ…」

勢いよく障子が開け放たれた。そこには…、

「つ、らら…?首無…、青、黒…、っ…神無…!」

奴良組の面々が存在していたのだった。
ん?ということは、ずっとそこに居たってわけ!?ぇ、ちょっと待て。どういうこと、

「緋真様ッ!!!」

お腹に衝撃がきた。

「う゛!!」

なんとか倒れそうになるのを堪えて、あたしはそのままお腹に突進してきた氷麗に目を向ける。

「つ、氷麗…?」
「ぉ…、」
「お?」
「…お会い、したかったですぅ…!!」

ぼろぼろと、氷麗は顔から出るもの全てを流しながら言った。

「つら、」
「うぉぉおぉおおおぉ!!!!緋真様!!お会いしとうございましたぁあぁぁあぁ!!!」
「この黒田坊、歓喜のあまり涙が止まりませぬ!!お嬢と再び会えたことに嬉しく想っております!!!」
「あ、青…黒…」
「緋真様。また貴方様と会えたことにこの首無、嬉しく存じ上げます」
「緋真様に再び会えて、涙が止まりませんわ…」
「首無…、毛倡妓…」
「わー!!!やっぱりお嬢だったんだ!!屋敷にきたときから俺思ってたんだってー!!俺の勘はあってたぜー!!」
「緋真お嬢とまた遊べるぜ〜!!!」
「納豆小僧…、小鬼…」

わいわいがやがやとあたしを囲んでやってくる奴良組の皆。あたしに会えたことに、あたしが存在することに喜びを感じ涙を流すヒトもいれば、お父さん達と良かったと喜びあっているヒトたちもいた。
そして…

「緋真様…」
「っ、かんな……!」

ゆっくりと、神無はあたしに近づいてきた。彼女の頬には涙が流れていて、そのまま強くあたしを抱き締めた。

「かん、」
「お会いしとう…ございました…!!」
「っ…!」

嗚呼、やっぱりあたしの居場所は…、

「!?きゃっ!」
「わっ!!」
「あら、」
「うぉ!?」
「ぬぉッ!!?」

感動に打ちひしがれていると、皆に抱きしめられていたから皆の体重に負けて倒れそうになった瞬間だった。

「貴様等、相手は怪我人であることを忘れるでない」
「っ!!」

背後から声が聞こえた。空耳でもない、ちゃんと彼はそこにいて…ゆっくりと、振り返った。
そこには…、

「ただでさえ女子(おなご) であるというのに、貴様等は緋真を潰すつもりか?」
「ひ、え……」

ちゃっかり、であるかどうか分からないけど(だってお父さんが視界の端で言ってたから)燈影は、あたしの片思いのヒトはあたしをちゃんと抱きとめてくれていて…。
まじまじと見ていると、彼と目が合った。

「ぁ……」
「………」

何を言えばいいの?久し振り?元気だった?
どうしよう。
顔が見れない。
体温がいっきに上昇した。

「……ふっ」
「!」

強く抱き締められ、そのまま燈影は耳元で言った。

「やっと逢えた。待ちくたびれたぞ、緋真」
「ッ!!」

その言葉で、あたしは燈影を抱き締めた。
嬉しくて涙が出た。
皆が見ている中、その涙を俺は拭いた。
零れる前に、彼は涙を拭いてくれた。
愛しくて仕方がなかった。

「ボクも入るー!」
「わ!?リクオっ!?」
「リ、リクオ様!!?」
「あらあら…」
「……(謀りおったな)」



影と日の恋綴り 四国編 終

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