影と日の恋綴り | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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 問われた言葉に

とある一室に、あたしは連れて行かれた。あたしの前にはリクオが歩いていて、あたしの背後にはつららが歩いていた。どうやっても、逃げる事が不可能だった。
ふと、あたしは聞いてみた。

「…カナさんは、どちらに…」
「カナちゃんは別の部屋で待っているよ。カナちゃん、僕に話したいことがあるって」
「……そうですか」

全く嫌な日だ。四国篇が終わったかと思えばこのような出来事。いや、まぁ、あたし自身からボロ出したような感じかもしれないけど、それでもこんなことまでするほど重要なことじゃないでしょ。
ワケ、分からない…。
小さく溜息を零すと、リクオがピタリと止まった。そして、すぐに横を向いて目の前にある障子を開けた。そこには…、

「っ……」
「リクオ様!」
「若!」

懐かしい人々…否、妖怪達が勢揃いしていた。リクオの側近達から、小妖怪達、そして牛鬼おじ様など幹部の人まで…。なんで、そんなに…。

「お父さん、連れてきたよ」
「おう、ありがとなリクオ」

ふと、横を見ればリクオとお父さんが話していてその二人の向こうには木魚達磨さんと爺やが。そして、その向こうには…、

「……」

幼い頃、好きだと豪語して慕っていた燈影が。
どうして、こんなにみんなして…。そう思って俯いていると、リクオがあたしにそこに座ってと促した。抵抗したいけど、どう考えてもあたしは不利な状態だから黙って従う
と、同時に場の雰囲気は静かになった。
―――もう、逃げられない。

「…体調は、いいのか?」
「っ…おかげ、さまで…」
「そうか……」

あたしの体調を心配するのはちょっとした前口上でしかない。そう思っていれば、どうやら当たりのようでお父さんは真剣な顔つきであたしを見てきた。
逸らしたら負けだと感じられるような目で。

「俺は濁して言うのは嫌いなんだ。だから、はっきりと聞くぜ」
「……」
「…あんた、何者だ?」

お父さんの目はあたしを敵として見てるような、そんな目だった。
やめて、見ないで…そんな目で見ないで…!
あたしを、あたしの存在を、否定しないで…!!

「あ、あたし…は…」

どう答えていいのか分からない。
あなたの娘です?
それとも【奴良緋真】です?
リクオの姉です?
なんていえばいいの?
口の中が乾いていて、上手く話すことが出来ない。何も言えれないし、この雰囲気が怖い。自然と、手が震えてる。
怖くて、恐ろしくて、今すぐ逃げ出したい。

「あたし、は…」

「―――奴良緋真」

あたしが言ったんじゃない。

「!」

あたしじゃなくて、すぐ横のほうから聞こえた。声がした方を見れば、そこには牛鬼組若頭の…

「牛頭丸!?」
「っ…」

障子にもたれかかって、冷めた目つきであたしを見ている牛頭の姿が。
首回りに包帯を巻いているって事は、まだ怪我が治ってないというのに…。なんで歩き回ってるのよ。なんで、此処に居るのよ。
何で、牛頭が勝手に明かしてるのよ。

「なん、で…ど、し…て……」
「いい加減認めろよ。気付いているんだろ?分かってんだろ?憶えているんだろ?自分の魂が、血が、体が」

あたしに近付きながら言う牛頭。

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