影と日の恋綴り | ナノ
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 蠱毒

「玉章様……おやめ下さい!! 仲間になにをな…」

ザシュッ

「!!」
「ぁ……、」

追い詰められ、突然下僕たちを手にした刀で斬り裂きはじめるという凶行に出た玉章を諌めた針女。だが、玉章に容赦なく斬り捨てられただけだった。

「は、り…おん……な…」
「っ……」

倒れ間際に、目が合った。

「ぁ、あぁぁあぁぁ…!!!」

血が、舞う。肉片と化した妖怪達が宙を舞う。
その行為を見て、仲間を大事にするリクオの目に怒りが燻る。こんな奴が、百鬼夜行の主になれるわけない、と。

「ふはは…見ていろリクオ!!下僕の血肉で、ボクは魔王となるのだー!!」

狂喜に染まった笑い声を上げる玉章を中心に、歪んだ禍々しい妖気が渦を巻いていく。吐き気が出そうなほどの渦巻く妖気。傍で傍観しているあたしにはゲテモノ扱いできるほどだった。

「なっ…なんで、自分の百鬼夜行を斬りつけているのだっ!?」
「わからねェ…とち狂ったんじゃねぇか玉章のヤロー」
「下がりなさい!!刀の餌食になるわ!!」
「あんなものが大将と名乗るべき者ではない…!!」

首無と青田坊の混乱に同意するように、神無の避難させる声に、燈影の言葉に同意するように、黒田坊が「拙僧には理解不能」と呟いた。だからって、そんな処でぼうっとしないで。
さっさと逃げてよ、…避けてよ…!!

「リクオ様危険です!!お下がり下さい!!」

叫ぶつららの前で祢々切丸を構えながら、リクオは「チッ」と舌打ちをする。笑いを零し、髪を振り回すその様は、まさに歌舞伎の演劇。狂気と化した妖気を増幅させて、玉章は髪を、刀を振り回し下僕達を切刻む。
しかし本来ならば勇猛で迫力ある動作であるはずが、笑いながら髪を巻き付けた刀を振るい死を撒き散らす玉章の姿は、おぞましいとしか言いようがなかった。
恐怖が全身を駆け巡る。

「っ……」

嗚呼、気分が悪い。

「……」

“蠱毒”という呪いを生み出す呪術がこの世には存在している。
巫蠱、蠱道、蠱術などと言われるその呪術は、読んで字の如く皿などの器に沢山の虫を入れて殺し合わせ最後に生き残った生命力の強い一匹――蠱毒と呼ばれるそれを用いる、人が生み出した最古の呪いのひとつ

「そんな…」

聞きなれた声が、あたしの線対称側に居た
ゆらさんだった

「っ…!!(そうだ、彼女は…!!)」

幼い頃、祖父に教えられた蠱毒が、妖気をたどってやってきたゆらさんの目の前で完成されようとしていた

「…(いやや…見えてまう。あの妖怪…)

一人で百鬼夜行を背負ってるかのようや――

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