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▼ ヒーローの実務

職場体験で俺を指名した人達は、前世の記憶を持っていた人達でした。

「…で?なんでお前らが揃いも揃っているんだよ」

出鼻をくじくように笑った俺を指名したヒーロー、もといカカシ先生に腹いせに一発殴って落ち着いた俺は、三人を見てそう尋ねた。改めて三人を見れば、ヒーローコスチュームを着ている恰好で、それぞれがあの頃を思い出すような格好だった。
カカシ先生は、六代目火影だった時と同じ格好。しかし、六代目という文字は存在しないで、「火影」だけが白い布に書かれていた。
イタチは、暁に所属していた恰好だった。目立つ格好は変わりなく、黒地に赤い雲は印象深いものだ。
ヤマト隊長は、上忍の服装にヘッドギアを装着していた。一番まともに見えるのは何故だろうか…。
それぞれ派手にも思える恰好。しかし、このヒーロー事務所は、消さんが言うにはメディアに全くでないマイナーともいえるヒーローだ。

「なんでテレビに映らないの?」

そんな疑問が出てもおかしくなかった。
俺の質問に答えてくれたのは、イタチだった。

「もともと、忍は知られる存在ではないためだったからか、あまりメディアに出て素性を知られたくないもので……」
「あー…。なるほどな」

言いたい事は分かる。うん、納得する。
イタチの言葉に補足するように、カカシ先生が言った。

「ま!ヒーロー事務所が此処だし、俺やこいつらのような個性をもつヒーローなんてそういないから、知られてはいますけどネ」
「とはいっても、顔は知られていませんよ」
「へぇー……」

確かに、カカシ先生が言う通り、そもそも建ちあげられた事務所は東京の池袋という繁華街。犯罪が多いところはそれだけヒーロー事務所も多いし、人口密度が高ければそれだけトラブルもある。そんな場所で、メディアに出てはいないとはいえ、その地域に住む人達は知っているだろう。
それでも顔は晒してないって、ある意味徹底してるんだな。
そこで、俺は此処に来ているのは職場体験だということを思い出す。偶然なのか分からないが、こうして前世一緒に同じ忍者として過ごした人達がいたことに喜んでいたが、違う。

「…改めて言わせてもらいます。今回職場体験をさせて頂く、雄英高校の蒼天カケルです。一週間、よろしくお願いします」

消さんに言われたこともあり、挨拶はちゃんとする。突然ともいえる、挨拶に三人は驚いたけど、すぐに順応してくれた。

「うん、こちらこそよろしくね。木ノ葉ヒーロー事務所へようこそ。俺が事務所の社長でもある、はたけカカシだよ」
「俺はうちはイタチです。…よろしくお願いしますね」
「僕はヤマト。一週間だけど、よろしくね」

三人は笑って挨拶をしてくれた。形だけとはいえ、律儀に挨拶した三人はあの頃と変わらない。つい、俺も笑ってしまった。
まさか、会えるなんて思わなかった。
とりあえず、と俺は一週間泊まらせてくれる部屋へ案内された。合理的主義のヤマト隊長が進言して、事務所兼三人の家にもなっているそうだ。一階はヤマト隊長が経営するバー、二階は事務所、三階と四階が住居スペースだそうで、ケンカとかしないのか?なんて思ってしまった。が、大人の三人だから問題ないか。
荷物だけ置こうとすると、思い出したかのようにカカシ先生が俺に言った。

「ヒーローコスチューム、着て降りてください」
「ぁ、うん。分かった。……つか、いい加減敬語外せよ」
「無理です」
「即答すんな」

それだけ言ってカカシ先生は降りて行った。俺は荷物を部屋の隅において、コスチュームを収めている鞄を開けた。俺のヒーローコスチュームも、あの頃を思い出させるもの。

「誰の悪戯やら……」

呆れた口調だが、口元はゆるく笑っていた。
着替えた俺を見た三人は、あぁやっぱり。なんて顔をしていて分かりやすかった。準備はそこそこに、カカシ先生は「それじゃ!まずはヒーローの実務について改めて説明しておこうか」と、変わらない様子で俺に説明してくれた。

「基本は犯罪の取り締まりだね。事件が発生した際、地区ごとに一括して警察から応援要請が入る。逮捕、人命救助などの貢献度を申告し、専門機関で調査されてからお給料が振り込まれるってワケ」
「基本的は歩合ってわけなんだな…」
「ま!そーいうことだ」
「給料は国から頂いているから公務員ってなるけど、僕たちヒーローは公務員であって公務員じゃない。成り立ちも何もかもが、著しく異なるよ」
「そうなんすね…」

活躍の程度に応じて給料が違うという事は知らなかった。消さんの場合もそうなのだろう。
でも、なんか歩合というのはアレだよな。

「早い者勝ちって感じだな…」
「そう捉えてしまうのは無理もないです。ですが、民間に被害を与えるよりかは、より迅速な対応が必要となります」
「あぁ。まぁ、それは言えてるわな」

イタチの言葉に否定はしなかった。カカシ先生は一つ頷いて、話を続けた。

「地区関係なく警察から召集されるし、市に出張届を出せば別の場所での活動も可能になる。あぁ、あとは副業も認められてるネ」
「あ、だからヤマト隊長が一階で……」
「そーいうこと」

副業していいっていうのは、歩合が少ないヒーローに向けての救済という考えだろうか。でも、雄英で働かれている先生たちもある意味副業になるとしたら、そういうわけでもなさそうだ。
ヒーローの実務を教えてもらって、一つ納得したことがあった。

「カカシ先生達が迅速過ぎる対応をするから、お給料も高いってことなんだな」

俺の言葉に、三人は否定しなかった。

「まぁ、俺達は隠密奇襲が得意ですからネ。気付かないうちに、っていうのが多いよ」
「だから、メディア連中がお前らを映像に収める事もできないって事なんだな」
「うん、正解」

ニコリとカカシ先生は笑って肯定した。話は続くようで「それに、」とカカシ先生はイタチを見た。

「特に、イタチの個性は最強といってもいいほどですよ」
「……」

イタチの個性。
その言葉に、俺は思っていたことを尋ねたくなった。

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