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▼ ヒーロー名

雄英体育祭が終わって二日後。体育祭での疲労も癒え、今日から再び学校が始まる。
なのに、天気は雨。

「(かったるい……)」

二日間、消さんは俺たちのドラフト指名の受理や整理するためを出勤した。俺はトレーニングでもしようか悩んだが、結局睡魔に勝てず、二日間ゴロゴロして過ごした。一年の体育祭があった夜、消さんはミイラ男ではなく、包帯がほぼ取れた状態だった。翌日には、リカバリーガール先生に最後の診察をしたのか、完治していた。
後遺症は、残っているそうだ。

「使用可能時間が短く、インターバルが長くなっちまったそうだ」
「…それが、後遺症なのか…?」
「…お前が気にする事じゃねーだろ」
「っでも!」
「今回力不足だったのは俺だ。…別にお前の、カケルのせいじゃない」
「っ……」


「……」

USJ襲撃事件の事を思い出し、傘の柄を持つ手に力が入った。

「あ、蒼天!」
「!……おはよ、尾白」

名前を呼ばれて振り返ると、控え気味に手を振ってこちらへ駆け寄る尾白が。足を止め、彼が隣に来るのを待って一緒に登校することに。体育祭の事や休日は何をして過ごしたのかを話しながら俺たちが学校に着いた。教室にはすでに何人か人がいて、挨拶を交わしながら席へ座った。

「超声かけられたよ、来る途中!!」
「私もジロジロ見られて何か恥ずかしかった!」
「俺も!」
「俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ」
「ドンマイ」

雄英体育祭の影響は大きく、注目された選手はすれ違う人達に声を掛けられたみたいだった。
という俺も、その日の夜に声掛けられそうになったけど。

「蒼天くんはやっぱり声掛けられた?」
「ぇ、あー…。体育祭の帰りに、帰宅途中のOLさんに声掛けられそうになった」
「ハァ!?」
「なんだそれ!羨ましい!!」

傍を通った時に葉隠に聞かれてつい言えば、何故か真逆にいた峰田と上鳴が反応した。うん、まぁ予想はしてた。そんな二人を無視して机に座ると、予鈴が鳴った。鳴り終わる寸前までざわめいていた生徒達だったが、鳴り終わった瞬間全員席についた。
それもそうだよ。

「おはよう」

時間は有限だと言い、無駄な時間を一切作らせない消さん、相澤先生が時間ぴったりが教室に入ってくるから。相変わらず小汚い恰好のまま教壇に立った相澤先生に蛙水が嬉しそうに言った。

「相澤先生包帯取れたのね、良かったわ」
「婆さんの処置が大ゲサなんだよ。んなもんより、今日の“ヒーロー情報学”、ちょっと特別だぞ」
「(うわ、消さん照れてる)くくっ…」

相澤先生は目元を掻きながら蛙水にそう返して、本題にすぐ入った。ヒーロー情報学といえば、ヒーロー関係の法律など、ヒーローになる上で大切な知識を学んでいる。しかし、固い話ばかりに加えて小テストもあるから苦手に思う生徒が数人いた。
が、俺たちの予想をはるかに上回るものだった。

「“コードネーム”、ヒーロー名の考案だ」
『胸ふくらむヤツきたああああ!!』
「(はしゃぎすぎだろ)」

クラスの大半が立ち上がったり両手を上げたりして喜びの声を上げた。が、相澤先生が個性を一瞬だけ発揮させた瞬間、歓喜の空気は消え、教室は静まり返った。

「というのも、先日話した“プロからのドラフト指名”に関係してくる」

相澤先生曰く、指名が本格化するのは即戦力として判断される二、三年から。一年の時の“指名”は将来性に対する“興味”に近いだそうだ。卒業までのプロからの興味が削がれたら一方的にキャンセルなんてことはよくあると。
なるほど、自分自信のハードルにもなるということか。

「その指名の集計結果がこうだ」

そう言って、リモコンのスイッチを作動させると、ホログラムが黒板に現れた。指名された生徒の名前とその隣に棒グラフと数値が一緒に映し出された。

「例年はもっとバラけるんだが、三人に注目が偏った」

そう言って相澤先生が指差す上位には、轟、爆豪、そして俺が順に並んでいた。
俺には3233件の指名が入っていた。

「一位、二位逆転してんじゃん」
「表彰台で拘束された奴とかビビるもんな…」
「ビビってんじゃねーよプロが!!」

切島と瀬呂の声が聞こえていたのか、目を吊り上げる爆豪を余所に、俺はその数値をじっと見ていた。

「(爆豪との試合で、嫌がられるとか思ったけど…そうでもないみてーだな…)」

各々思うことはあるようで、騒めき始めた教室内。そんな彼らを無視し、ホログラムをそのままに相澤先生は話を続けた。

「これを踏まえ…。指名の有無関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう」
「!!」

また新たな行事に俺達は聞く姿勢になった。

「おまえらは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験して、より実りある訓練をしようってこった」
「それでヒーロー名か!」
「俄然楽しみになってきたァ!」
「まァ、仮ではあるが適当なもんは…」
「付けたら地獄を見ちゃうわよ!!」

相澤先生の言葉を遮り教室に入ってきたのは、先日の一年ステージの主審を務めたミッドナイト先生だった。

「この時の名が!世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!!」

カッカッとヒールの音を立てながら教壇に立つミッドナイト先生。
おお、相変わらずのセクシーなことで。見惚れる事はないが、堂々とされていることは尊敬する。
ミッドナイト先生を横目にゴソゴソと教卓から何か漁ったまま相澤先生は話を続けた。

「まァそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのできん」
「(消さん、面倒臭がってマイクさんに付けてもらったんだよな……たしか)」

マイクさんから聞いた話だけど。

「将来自分がどうなるのか、名を付けることでイメージが固まり、そこに近付いてく。それが“名は体を表す”ってことだ。“オールマイト”とかな」

そう言って、相澤先生はゴソゴソと寝袋を取り出した。おいあの人、自分が教鞭を振るわないからって寝始めたぞ。しかもミッドナイト先生は見慣れたことなのか、それに何も言わないまま俺たちにボードを配布したのだった。
さて、どんなヒーロー名にしようかな。

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