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▼ トーナメント決勝戦

雄英高校体育祭、第一学年の部。
第三種目・トーナメント決勝戦。
開始早々、彼らの個性のぶつかり合いとなった。

「轟の個性の威力、すげーな」
「今更!?」

言葉にしていたみたいで、葉隠にツッコミを入れられた。
轟の氷結が爆豪を襲った。爆豪との接戦を嫌がっての戦法か、一瞬でケリを狙ったかのように思う轟の攻撃。しかし、そうとは思えない。
たぶんアレは、爆豪の次の攻撃を警戒したんだろう。
その拍子に、氷壁の向こうで聞こえた何発もの爆発音。そして静かになったかと思えば、彼は大きく爆破をして氷壁に穴をあけて現れた。
まるでモグラみたいだな、なんて内心思いながら冷静に彼らの戦い方を分析する。
爆豪は爆発で試合早々の氷結を防いだのは、予想していたようだった。そのまま爆豪に向けて手のひらを見せようと構える。それに轟は再び氷結で防ごうとするが、爆豪の目的はそれではない。氷結が出た瞬間、自分を宙に浮かせるために地面に向けて爆破し、轟の頭上へ移動した。

「ナメ……ってんのかバァアアカ!!」

そのまま轟の髪と肩を鷲掴みにし、場外へ向けて思い切り投げ飛ばした。そのまま場外アウトか、と思ったが、轟は自分の背後に氷壁を生成させ、場外アウトを免れた。そのまま氷壁で滑るが、そんな受け身状態の彼を爆豪が狙わないはずがなかった。
右手を大きく振りかざす爆豪。それに気付いた轟は、左手で爆豪の腕を掴んで、爆破を回避した。そのまま左腕の個性を使うと思ったが…。

「てめェ、虚仮にすんんおも大概にしろよ!ブッ殺すぞ!!!」

左側を全く使わない轟。情報じゃあ、緑谷の時は使っていたという。吹っ切れた様子だと思ったんだが、そうでもないのだろうか。どちらにせよ、爆豪は今までの戦いを自分のものにしているというのに、轟はそうじゃあない。調子が崩れつつあった。
爆豪が怒るのも仕方ない事だろう。

「俺が取んのは完膚なきまでの一位なんだよ!」

自分をわざと追いつめた選手宣誓。今まで自分より格下であり無個性だと虐げていた存在の緑谷。
爆豪は、自分の存在意義が見失いそうになっていた。
心では感じている敗者への恐怖を自らの手で消そうと、自分自身に自信を取り戻そうとしているのに、相手は自分すら見ていない。
それが腹立たしくて仕方がないようだ。

「何でここに立っとんだクソが!!!」

爆豪の気持ちも分かる。
けれど、轟にだって悩んでいる事だってあるのだろう。
それが他者に共感するようなものではない。自分の事を知ってどうしてもらいかなんて思ってもいない。
ただ、アイツ等はそれぞれが悩んでいる。
二人の違うのは、前に進もうとしているのかどうか。

「(悩め少年たち……)」

お前らはまだこれからがあるんだから。

「榴弾砲着弾!!」

地面へ爆破を当て、その威力で飛んだ自分の身体をひねらせ、さらに爆破を繰り返して回転を加えた。
爆豪の必殺技でもあった。
特大火力に勢いと回転を加えたのはまさに人間榴弾ともいえよう。凄まじい衝撃と爆風がステージで止まるはずもなく、観客席まで突風が押し寄せてきた。周りの連中はとっさに顔の前に腕を起き防いだけれど、俺はただじっと二人の戦いを最後まで見届けた。
威力がでかくて氷壁が崩れ落ちる。さらに爆豪の最後の特大の爆破で煙が立ちこむ。再び何も見えないステージの様子に、俺達はただ煙が晴れるのを待つだけ。

「……お」

数分かけて次第に晴れたステージ。
倒れ込んでいるけれど、意識があったのは爆豪だった。
一方、轟の姿はステージ上にはなく、少し視線を横に向けると、崩れ落ちた氷壁の上で気失っていた。
彼は場外になったのだ。

「オイっ…ふっふざけんなよ!!」

結果的に爆豪の勝利。
しかし、爆豪が納得するような終わり方ではなかったのだった。
力なく倒れている轟を目の当たりにした爆豪は、怒りの眼差しを向ける。痛む身体を酷使させ、轟に近寄ると意識のない彼の胸倉を強く掴んだ。納得してないまま抗議しようとする爆豪だったが、それは突然終わった。
ミッドナイト先生の個性によって。

「…爆豪、なんであんなに……」
「納得のいかない終わり方だったからだよ」
「え?」

尾白の独り言を拾って、俺は淡々とした口調で説明した。

「爆豪は完膚なきまでの一位を狙っていた。相手が自分だけを見て、自分を倒す気でいることを当たり前としていた。けど、轟は爆豪を見ていないままに戦っていた。試合中でもあんな態度をとられていちゃあ、爆豪のストレスは溜まっていくばかり。さらに、自分の必殺技を使って轟を本気にさせようとしたのにも関わらず、轟は本気を最後まで出さなかった。何もしないまま、自分の攻撃を受けて、場外アウト。……爆豪が考えてすらいなかった、自分の中での最悪な勝ち方だったみたいだな」
「……そういう事だったのか」

納得したような、なんともいえない表情をする尾白を一瞥し、俺は頭の後ろで手を組んだ。
眼下のステージで、眉間に深く皺を刻み眠るのは…。

「轟くん場外!!よって爆豪くんの勝ち!!」
≪以上で全ての競技が終了!!今年度雄英体育祭一年優勝は―――…A組、爆豪勝己!!!!≫

今年の優勝者。
響き渡る歓声。地響きでも起きそうな観客の一番の盛り上がりに、俺は小さくため息を溢した。
さて、と。少し落ち着いたら表彰式になる。俺も表彰台に上がるように言われているから、後で向かわないとな。
なんて、のんきに思っていた時だった。

「……それにしても蒼天」
「んぁ?」
「お前めっちゃ冷静に試合見てるな。なんなんだよお前ホントに」
「え、最後まで辛辣な扱い?」

上鳴の言葉が地味に俺の胸に突き刺さった。

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