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▼ 爆豪VS蒼天

何が起きたのか理解していない観客。皆が爆豪の自滅行為に唖然としていた。
自分の顔に向けて爆破を盛大にした爆豪。
今までの戦い、アイツの性格からしてありえない事だろうよ。俺は広げていた手を降ろして、地面に落とした黒弦を手に取る。あまり使ってない事もあり損傷はそこまでないみたいでまだ使えそうだ。黒弦を一瞥し、爆豪を見る。

「爆豪ー、大丈夫かー?」
「っ、このクソ糸野郎…!!」
「おぉ、生きてた。やっぱりそんなんで倒れねぇか」
「当たり前じゃボケクソカスが!!!」
「ボキャブラリーのなさ」

黒煙が晴れて現れた爆豪はピンピンしていた。ギリギリ躱したみたい。反射神経が良いのかまさか躱されるとは思わなくて、流石の俺も驚いた。BOOM!!と、爆豪は一度大きく爆破を起こして、低く構えた。冷静さを取り戻したのか、俺のスキを狙おうとしていた。
流石、入試一位で合格しただけあるな。他の連中とは違って、ちゃんと考えている。
ま、首席なのは俺もだけど。

「何しやがったテメェ…」
「えー、何のことだよ」
「シラを切るつもりかよ」
「俺が何かしたっていうならよ」

黒弦を伸ばして、指に絡ませる。爆豪を見据えて、笑って言った。

「タネ明かししてみろよ」
「上等だクソ糸野郎がァァァ!!!」

BOOOOM!!!

もう一度爆破をして爆豪も俺に攻撃を開始した。爆豪が右手を大きく後ろへ引いて俺を爆破させようとするが、その右手首に黒弦を絡ませて地面に起動を逸らして爆破。驚く間を与えず爆豪の横腹に蹴りを食らわそうとしたが、その前に爆豪は前かがみになった体勢のまま回し蹴りをした。一瞬宙に浮いた。俺の隙を逃すわけないと言わんばかりに、体制を持ち直した爆豪が爆破する構えに。けど、そんなの許すわけねーだろ。

「!なっ…!!」
「油断」

手をついて、逆立ちをする。俺の動きに驚いた爆豪の首を両足で挟んで、脚力だけで地面に叩きつけた。三角絞めのようなもので、痛みはかなりあるはずだ。大人しくなった爆豪に、気失ったか確認するためすぐに離れようとしたが、爆豪は俺のスキを見逃さなかった。

「!!」

左足を掴まれた。
瞬間。

BOOOM!!!

「っ…」

爆破されて、左足に激痛が走った。思わず顔を歪め、さらに爆豪の爆破を防ぐために手を空を切るように動かした。ピクリ、と動いた指を見て、左足を振って爆豪の手を振りほどいた。瞬歩で爆豪と距離をあけ、ジクジクと痛む左足に目を向けた。抉れてはいねぇが、火傷していた。

≪爆豪と蒼天、一歩も譲らねぇ戦い!見ているこっちも熱くなるぜ!!≫
「……」

小さく息を吐く。爆豪を見れば、アイツはゆっくりと身体を起こしていた。フーッフーッと興奮する獣みたいな様子だったが、その目に諦めはなく、俺を倒すことだけを考えていた。
理性は捨てていない。

「さっさと倒れろクソ糸野郎!!」
「だが断る」

俺に再び爆破を与えようとする爆豪にイラッと来てクイ、と指を動かした。するとどうだろうか、一瞬だが爆豪の動きが止まったのが分かった。ワンテンポ遅れて攻撃した爆豪は、俺が居た場所に爆破をぶっ放すだけで、的の俺には当たっていなかった。

「!!(まただ…!コイツ、何しやがった…!!)」
「(…カケルの奴、使ったな…)」

まだタネを見つけていない爆豪は、何度も同じことを俺にしてきた。そのたびに、一瞬だけ止まる身体。何度も数撃ってタネを明かそうとするやり方は、自然と観客も気付くものだった。
爆豪の動きが数秒遅れているような錯覚。

≪爆豪の動き、一瞬止まる時あるのは、俺の見間違いだろうか…?≫
≪見間違いじゃねーよ。一瞬だが、止まってるよ≫
≪マジかよ!え、でも何で!?≫
≪知らねーよ≫

マイクさんも戸惑う様子で言っていて、観客もその原因を探そうとしていた。爆豪も何度も爆破を放っているが、その原因を掴めていないようだった。俺を射殺す目で見る爆豪。

「おっかない顔だなぁ。ほれ、リラックス」
「うっせぇ黙れ…!」
「……おー、怖い」

地を這うような低い声に、俺は顔から笑みを消した。そろそろ真剣にやらねぇと、爆豪が怒りそうだ。いや、もう怒っているだろうけど。

「ほら、それじゃあ行くぜ」
「死ねや、カスが…!」
「ヒーロー志望らしからぬ発言」

爆豪は俺を本気で戦うことを望んでいる。それを俺がのらりくらりと躱して戦っていないから、フラストレーションが溜まりつつある。そんな中、身体が一瞬だが動かない時がある。原因が分からないから余計に苛立つ。

≪爆豪、諦めず何度も爆破を繰り返す!!けど、やっぱり一瞬止まってるな!≫

他人からの指摘にさらに苛立つ爆豪。そんな彼を見て俺はほくそ笑む。
さてさて。

「(いつ、このタネが分かるかな…?)」

手に入れる力を少し緩めた。



(爆豪side)

どうなってやがる。

≪爆豪の奴どうしたァ!?動きが固まってるぜぇ!!≫

うっせぇ、黙ってろ声がデカイ奴が…!
耳障りの実況がさらに俺をイラつかせる。さっきから一瞬だが言うことを聞かない俺の身体。あのクソ糸野郎に爆破を与えようとする時に必ずピタリ、と動きが止まる。だから、アイツがすでに避けている場所に爆破で攻撃するようになる。
なにが起きてやがる…!なんでアイツに当たらねぇんだ…!

「クッソがァ!!!」
「おーおー、怖いねえ」

アイツの顔に向ける勢いで振り下ろした手が、途中で一度止まる。その時、何かに引っ張られるような、何かに邪魔をされる感覚に益々苛立った。ワンテンポ遅れて攻撃すれば、すでにアイツは避けている。まるで俺の攻撃が分かっているみてぇに。
どういう事だ。俺の攻撃がそう易々と分かるはずがねェ…。何かあったってなら、アイツが何か俺にしたに決まってやがる…!
俺の動きを一番最初に躱してからイラつく奴だとは思ってたが、何しやがったアイツ…!

≪爆豪の猛攻ー!!だがしかし、やっぱり何か邪魔しているかのように爆豪の動きが一瞬だが止まる!!≫

実況に言う通りだ。何か邪魔するかのように俺の動きが制限される。
思い出せ。アイツが俺の攻撃を食らう前の動作を。
何か仕掛けたってなら、いつ仕掛けやがった…。アイツは自分の髪を紐みてぇな糸を作る。他に何か個性があるのか?だがアイツはずっとあの個性しかみせねぇ。瞬間移動みてーなのがあるが、あれは個性じゃねぇみてぇなのは分かっている。
つーか、ムカつくんだよ…!アイツの戦い方が!!
今までの試合といい、コイツは本気を出してなんざいねぇ。出す必要すら思ってもねぇ、手を抜いた戦い方。
あの半分野郎といいムカつくんだよ…!!

「少しは肩の力を抜いてくれよ」

うっせぇ、何が肩の力を抜けだ。リラックスなんざできるわけねーだろが。
…あ?肩?
片手で爆破を繰り返して空中に。そして上に向けて爆破したそのスピードのまま糸野郎に向けて爆破の構えをした。

「何度もやるとか、学習してないな」
「ウッセェんだよ、黙れや!!!」

試しにやってみるか。
俺の爆破に構えた糸野郎。アイツの手から逸らさないまま、俺は自分の腕を思い切り引いてみた。
つられて反動するアイツの手が見えた。

「!!」

思った通りだ。

「テメェの攻撃のタネ明かし、してやるぜ!!」

笑いが止まらねぇ。口角が上がったまま、テメェに向かって振り下ろそうとした爆破を止めた。俺の動きに周りが驚いたが、さらに驚く光景。
俺は、自分の左肩の服を掴みそこだけを爆破した。

「っ」

瞬間に見えた、アイツの顔。
今まで崩されなかった余裕の表情が、崩れた瞬間だった。

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