この感情は複雑すぎる。好きとか、嫌いとか、それすらもわからない。恋なのか?それともただの恋しいなのか?愛おしいかと言えば、違う。かと言って敬愛でさえない。先輩として好き?友人として好き?どれもこれも違う。薄ぼんやりとする意識に南沢さんが浮かぶけれど、やはり惚れた腫れたの感情とは別物だ。どちらかと言えば好きよりの感情は、輪郭がなく、触ることができない。そのくせ、自分が気持ち悪いと思った。吐き気がして首を掴む。頸動脈を押して息ができない。
自分でも、酷く馬鹿馬鹿しいと思う。首を掴む指を解いて強く咳き込んだ。透明の液体が頬を伝って顎に到達した。
「みなみ、さわさん」
焼け付く喉が名を呼ぶが、あの人はもう雷門にはいない。触れる機会はあるが、触れたくはない。南沢さんを目にしたら、気づいてしまいそうだったから。
(この理解し難い感情を)

『俺とお前が兄弟だったら良かったのにな』
南沢さんと、同じ血が流れていたら良かったのに。
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テーマ「人外ファンタジー」
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