僕の周りから誰もいなくなる。
安藤はもうじき中学校を卒業する。僕と安藤は歳が一歳離れているんだ。こればかりはどうすることもできない。最初から詰んでいるのだもの。
サッカー部を引退する時に「これからサッカーがどうなるかはわからないが、多分今まで通りとはいかないだろうな」なんてこちらが不安になるような事を言いやがって。安藤の推測は当たったね。僕たちの知らない所でいつの間にかに革命軍の輪は広がっていたよ。もう後戻りができないくらいには、最近までの規則はぶっ壊されてる。
「喜多の言うことには従っておけ」って安藤は言ったけど、それは詰まり革命軍に荷担することになってしまうんだ。喜多はそっち側についたからさ。僕には、三年間ずっとフィフス・セクターに従って、サッカーをやってきた安藤の信念を無視するような真似はできないよ。僕は僕を裏切れない。お前が守ってきたものを破滅させることなんてしたくない。今更革命に準じたって、お前の三年間は帰ってこないんだよ。
隼総は学校に通うことができなくなった。結果を残せないシードはフィフスセクターから追放されるんだって。実際にもう隼総はシードではないらしい。だもの、別に天河原からいなくなれなんて言われてないじゃん。休んでないで学校に来いよ。二年生になれないぞ。
僕にとっては隼総がシードだろうが、僕らと変わらない中学生でしかない。それは普段の言葉遣いとか、笑顔とか、比嘉志たちとふざけてる姿を見かけた時とか、お昼を一緒に食べている時とかに思う。義務教育中は学校に通うのが仕事って言うだろう。お前にとっての仕事は、僕らを管理する事だったのかもしれないけれど、それならお前の仕事はまだ終わってないはずだ。放任なんて、隼総らしくない。
先日、教師に頼みこんで、隼総が住んでいる住所を教えてもらい、訪れたことがある。隼総は以前「寮生活をしている」と公言していたが、渡されたメモ帳の一端には、住所の下にマンションの号室と思しきものが記されていた。表札に「隼総」と書かれたマンションの個室の前に立った僕は、インターホンを押すことを躊躇い、気がついた時には螺旋階段を下りきっていた。今まで嘘をついていたのかとか、寮を追い出されたのかとか、親と一緒に住んでいるのかとか、隼総に会えば、聞きたいことがありすぎて歯止めが利かなくなりそうだった。けれど、それ以上に僕には勇気がなかった。自信がなかった。隼総に会って、いつもみたいに馬鹿にして、へらりと笑える自信がなかった。目を見てちゃんと話すことができる勇気がなかった。
僕を置いて二人とも何処へ行くつもりさ。仕方のないことだなんて考えたくないから思わないよ。独りにしないでおくれ。ようやく、見つけたって言うのに、どうしてこうもあっさりと消えてなくなっちゃうかな。この動物には必要な成分が足りないよ。



おおかみ



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