「息子さん、韓国に選手として来ないかって言われたの」
第一報は母からの電話だった。
アフロディは約十年前まで、韓国と日本を行き来する生活をしていた。両親の仕事の都合により、忙しない幼少期を送っていた彼だったが、知らぬ間に日本に滞在することになる。無論、両親は日本人だ。父の方はこちらに来てから数年後、韓国への長期出張が入り、未だに帰郷には至らない。アフロディもまた世宇子の寮に入っており、母とは別個に暮らす形となっている。
母の第一報があってから数日後、今度は手紙が届いた。封を切ればFFIについて、現地のチームについて、アフロディを招待する内容が記されている。直接世宇子寮になんて届いたものだから、その招待とも勧誘とも取れるドラフトは、瞬く間にチームメイトを中心として学校中に広まっていった。噂は形を変えるもので、「韓国」という文字がうやむやになってしまったのか、世宇子内ではあまり好かれない彼が初めてちやほやされたものだ。
アフロディに幼い頃の記憶はほとんど残っていない。ただ、自分が韓国で生まれたということは親を通じて知っている。その証拠としてかほんの少しだけアフロディは韓国語を覚えていた。
「母さん、僕はその話を受け入れることにするよ」
その後は実にスムーズで、母は勿論、父からも承諾の連絡を受ける。「資金のことなんだけど…」とアフロディが躊躇いがちに口にするのに対し、「任せとけ」と威勢の良い声が返ってきたから驚く。「お前が気負いするな。頑張れよ」そう言うのだ。受話器を下げて息を吐いた。
(久々に父さんの声聞いた。嬉しそうにしちゃってさ…)
父がこちらにいた頃を懐かしみ、寮で一人ほくそ笑む。家族が恋しかった。

灼熱が呼び覚ます意識

Thanks:maria


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テーマ「人外ファンタジー」
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